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彼方からの手紙(前編)

誤解も解けて、差し入れの大皿を囲んでの食事。

疲れきった表情のアルゴさんに小さな火の魔法で温め直したパンを手渡す。

「すまねぇな」

パンを受け取ると小さく笑って返してくれる。

「僕のせいで……ごめんなさい」

肩を落として謝罪の言葉を口にする。

僕が頭を撫でたりしなければ、アルゴさんはまだゆっくり寝られたはずで、二人に問いつめられることも無かったのにね……。

「間が悪かっただけだ……気にするな。 俺の事を想って撫でてくれたんだろう?」

アルゴさんはパンを食べながら、空いている片手でポンポンと僕の頭を叩く。

「うん……僕がして貰ったようにしたら、心地良い夢に変わるかなと思ったから……」

小さく頷いて、その時の状況を思い出しながら考えていた事を伝える。

「その言葉だけでも十分嬉しいぜ」

アルゴさんはニッと笑い、頭を叩いていた手でそのまま撫で始める。

そのおかげでしょんぼりとしていた気持ちも少しずつ薄れていった。


「そこの二人が早合点したからのう……」

レリックさんは温め直したパンを受け取りつつ横目でちらりと見る。

「だ、たって……怒るような声が聞こえて目覚めたら泣いているリーラちゃんが見えたから……」

「居ないと思って戻ってみたら、アルゴの後ろ姿の先に泣き顔のリーラが居たから……」

レリックさんに言葉に反応するように二人とも小さく俯いて、アルゴさんを問いつめた理由を述べる。

「二人とも反省をしているみたいですが……状況を理解できてない状態で問いつめられたアルゴ殿は少々気の毒です」

レリックさんに続いてガーラントさんも二人へとチクリ。

間が悪かっただけで誰も悪くないはずなんだけど……。

僕の事を想っての行動だと思うので申し訳なく感じてしまう。

「もうこの話は終わりにしようぜ。俺はもう気にしてないし、リーラちゃんを大事に想ってるからこその行動だからな」

アルゴさんがパンパンと手を叩いて話の終わりの宣言すると、シェリーさんとフィリエルさんは安堵したように表情を緩めた。


「リーラちゃんどうした?」

視線に気づいたアルゴさんが僕へ視線を返す。

「え、えっと……」

きっかけが欲しかったのに戸惑ったような返事をしてしまう。

夢の内容を聞きたいけど……話を蒸し返す事になるし……尋ねて良いのかな?

少しの間迷ったけど、気になるにで聞いてみる事にする。

「ゆ、夢の中でアルゴさんは誰に怒ってたの?」

ためらいがちに質問を投げかける。

確かちび共って怒ってたから……僕の頭の中に最後に泣きながら逃げていった双子の顔が思い浮かぶ。

「リーラちゃんを慕ってたあの双子の悪戯坊主だ」

夢の中身を思い出したのか苦笑いで僕に答えてくれる。

それは僕の思っていた通りの解答で、少しホッとする。

これで僕の知りたい質問をしやすくなった。

「二人は元気にしてるかな?」

おずおずと知りたいことを尋ねる。

ミーナさんとディンさんの事を聞いて満足して、聞き損ねてしまってた。

正直聞くのは怖いけど、僕と別れた後の二人の様子も気になっていたしね。

「……ああ、リーラちゃんの無事を知ってから『今度は僕たちが守るんだ』ってディンに稽古をつけて貰ってるぞ」

少し間を空けてアルゴさんが現状を教えてくれる。

多分、アルゴさんは僕の知りたがっていた内容に気づいてるはず……でも僕が傷つくような内容が含まれちゃうからはしょったのかも。

教えてくれるまで空いた間がそれを物語っている気がした。

「よかったわね、向こうの村に着いたら二人の騎士様に守って貰えるみたいよ」

「うん……」

微笑みながら僕に語りかけるフィリエルさんに、僕は少しだけぎこちなく頷く。

以前、フィリエルさんに僕が死んでしまっていたら、リックとルックは生涯傷ついたまま生きていくことになると諭された。

今は元気でやってるみたいだけど……僕の無事を知るまでの二人はどんな状況だったのかな……。

ナナさんが亡くなって、寂しそうにしてたらしいし、僕に良かれと思って案内した為に魔物に出会ってしまったもんね……。

深く考えて落ち込むパターンに入り込みそうになり、強く首を振って頭から追い出す。

「何を考えていたの?」

気がつくと、正面に僕を見据えるフィリエルさんの顔があり、その表情は少し固くて、僕を心配しているみたいだった。

考え込んでいたことが顔にでていたのかな……。

「多分……僕が考えても仕方ないことだと思うんだけど……」

苦笑いになりながら一言前置きをして、

「僕の無事を知るまで……二人はどうしてたのかなって考えてた」

自分の考えていたことを素直に話した。

隠しても良いことにはならないし、自分の中で詳しく聞いてみたいと思う部分があったのかも。

「そっか……」

目を細めて僕の頭を撫で始めるフィリエルさんはその後に続く言葉を飲み込んだように見えた。

「必要なら本人が言うだろうさ。 リーラちゃんはその時に教えてもらいな」

言葉自体はぶっきらぼうだけど、アルゴさんの表情と口振りはすごく優しいもので『気に病むな』と言ってるみたいだった。


食事も終わり、飲み物を片手に一息。

持ってきたぶどう酒の入った水差しでお酌すると、レリックさんもアルゴさんも競争みたいにすぐに飲み干して、僕に次を急かす。

それに目を丸くしながら何度か注ぐとすぐに空になってしまった。

その様子をフィリエルさんは苦笑いで、シェリーさんは少し苦々しげに、ガーラントさんは微笑んで見ていた。

アルゴさんは早く飲むことが好きなのかなと思ったけど、いつもはゆっくり飲んでいるレリックさんが、急いで飲み干す事が少し不思議に思えた。


「そういえば、仕上げをすると母上に聞いたのだが……もう出来上がったのか?」

「……ええ、明け方には完成したわ」

思い出したように尋ねるシェリーさんの疑問に、フィリエルさんが少しの間、思案顔になってから答える。

完成したときの事を思い出していたのかな?

「それなら、戻って来てから休まれた方が良かったのではないですか? 少なくともこの場で休むよりは疲れが取れると思いますが」

その答えに疑問を持ったのか、ガーラントさんが質問を投げかける。

確かに、床や壁に背中を預けて眠るより、戻ってきてベッドで寝た方が眠りやすいはずだし……工房まで長い距離がある訳でもないしね。


「物音を立てて起こしたくなかったんじゃよ、二人とも昨日着いたばかりで疲れておるじゃろうからの」

「仮眠が終わったらすぐに帰る予定だったのだけど……差し入れを持ってきて貰えたのは嬉しい誤算だったわ」

質問にレリックさんが答え、続いてフィリエルさんが良い方向に予定が変わったことを伝える。

徹夜での作業で疲れているはずなのに、到着したばかりの二人の事を気遣える事をすごいなと感じた。


「恐縮です。 そしてレリック殿とフィリエル殿へ報告があります」

ガーラントさんは一礼し、真剣な表情へ変えると、

「シェリー殿へ長年の想いを伝え、夫婦として生きていく事への同意を頂きました。 両親である二人へ夫婦となる事を認めて頂きたく思います」

報告内容を伝えて深く頭を下げる。

その言葉より、ガーラントさんの真面目で誠実な人柄が現れているようだった。

「ふむ……それではわしの質問に答えて貰おうかの」

レリックさんは腕を組み、軽く目を閉じて考え込むような素振りで答える。

「ち、父上?」

シェリーさんは驚きの声を上げる。

即答で祝福の声をかけると思っていただけに、僕も動揺してしまう。

「わかりました。なんなりとお答えします」

ガーラントさんはそれを予想していたかのように落ち着いた様子で返す。

「寿命の違いについてはどう考えておる?」

「私の余生に付き合って欲しいと伝えました。 シェリー殿には快諾を頂いています」

質問に対して立て板に水のごとく答え、

「私の亡き後は新たな出会いを求めて貰えればとも思うのですが……」

自分の手の届かない所の内容に入ったところでつまる。

ガーラントさんの視線の先は天井を向いてたけど、もっと先を見ている気がした。

「それは無理だと思うわ……そのあたりは私に似て不器用だから」

「母上……」

フィリエルさんは肩を抱いて目を細めて優しく語りかけ、シェリーさんは少し寂しそうに視線を返す。

こう言うのを一途っていうのかな? 伴侶は生涯で一人だけって事だよね。

でも……言ってみればフィリエルさんもシェリーさんも僕の未来の姿なのかもしれない……相思相愛の関係になれる人が居ればの話だけど。


「その点で納得しているならばわしの言うことはない。 シェリーの事は頼むぞ」

「はい、生涯をかけて幸せにする事を誓います」

レリックさんの言葉にガーラントさんは深く頭を下げて答えた。

「レリック……」

「父上……」

その光景をフィリエルさんとシェリーさんは安堵したような表情で見つめていた。


「急かす訳ではないが、わしの生きているうちに孫の顔をみせるように」

真剣な面持ちのまま二人へ言葉をかける。

「ご期待に添えれるよう、頑張ります」

「父上も孫を見るまで壮健で居て欲しい」

二人も思い思いの言葉を返すと、

「わしはリーラの子供も見る気でおるからの」

レリックさんはホッホと笑いながら『それぐらい余裕じゃ』と言わんばかりに答える。


「え? 僕?」

思いがけない言葉が飛んできた事に自分を指さして目をぱちくりしてしまう。

「リーラちゃんはどんな人を捕まえるのかしら」

「良い人に巡り会えると良いですね」

「父上以上の人物を頼むぞ」

「俺がもう少し若ければ立候補したいところだ」

その場にいる皆から暖かい眼差しと思い思いの言葉をかけられて、

「う、うにゃ~~」

どう返していいのかわからなくて、半ば混乱状態で悲鳴をあげる羽目になった。


自分がからかわれたことに気づいて、

「……知らないっ」

行き場のない気持ちを吐き出すようにそっぽを向いてしまう。

「それぐらい長く生きる気持ちだと言う事じゃ、わしの都合でリーラの婚期を早めてもいかんしのう」

レリックさんの言葉と頭を撫でられる感覚に、不意に昔の記憶が呼び起こされる。

前世で祖父が「曾孫を見るまで生きていたいのう」と何気なく言った一言に、「爺ちゃんが長生きすればきっと見えるよ」無邪気に笑って答えたっけ……。

それもよくわからない不慮の事故によって、出来なくなってしまった。

行き場のない気持ちは吐き出すことなく消えていき、

「レリックさんの生きているうちに見せれるように頑張るね」

沈み込む気持ちを振り払うように笑顔を向ける。

「そうかそうか、それならリーラに会う者を探さねばならんのう」

レリックさんが微笑み返すのが見えた直後に強い力で抱き寄せられ、頭を固い胸板へと押しつけられる。

それは驚く暇もないぐらいの出来事に思えた。

肌を通して伝わる温もりが僕の心を温めてくれる。

「すまんのう……前世が男であったリーラには無神経な言葉じゃった」

レリックさんは耳元で僕に聞こえるぐらいの声で囁く。

それは固い声でどこか申し訳なさそうに聞こえる。

「ううん……それは多分大丈夫」

見当違いの謝罪を訂正する為に小さな声で否定する。

今はまだ無理かもしれないけど……僕が大人になる頃には大丈夫だと思う。

フィリエルさんも男性を異性としてしっかり意識してるっていってたしね。

「それならば、どうして心配してくれと言わんばかりの笑顔をするんじゃ?」

不思議そうに言うレリックさんの言葉に、心配をかけまいと返した笑顔が良いものでなかったことに気がつく。

だから……他の人に僕の顔を見られないようにしたんだね。

「……僕の祖父がレリックさんと同じような事を言ってた時に、長生きすれば見えるよって言ったのを思い出したから……」

ぽつぽつと言葉を紡ぎながら、健全で居てくれた祖父よりも自分が早く逝ってしまった事を悲しく感じる。

「フィリエルから聞いておる、わしの見てない場所でも色々な事を思い出しながら悲しむ事があるとな」

優しい口調で僕への理解を示す言葉を落とす。

「しかしのう、それはリーラの心に余裕があるからこそ出来ることだと思うんじゃよ」

「心の……余裕?」

続けて聞こえる言葉に思いがけず、がばっとレリックさんを見上げてしまう。

「うむ、泣いて笑って恥ずかしがって……楽しそうに過ごしておる。 逆に余裕もない状態はじゃな……ここからこっそり出て行こうとしたときの事を思い出すとよい」

視線の先には優しく微笑むレリックさんが見え、アドバイスを贈ってくれた。

言われて見れば、ここ二週間の間に前世の出来事を思い出す事が増えた気がするし、あの時の事を思い出すと、ピンと張りつめた僕の心に余裕なんて全くなかった。

しばらくの間、優しく抱きしめて貰ってから振り返ると、

「リーラが落ち込んでいるのは、後ろから見てもわかるからな」

皆の視線は僕に注がれていて、シェリーさんの言葉に皆頷いていた。

つまり僕の耳が垂れ下がっていたってことだよね……でもそれを理解の上でレリックさんが行動したって事は……僕の笑顔そんなにひどかったのかな……。

「レリックさんとの内緒話のおかげでもう大丈夫だよ」

心配かけたお返しにと、自分なりの今出来る最高の笑顔を見せる。

返ってくる皆の表情に曇りが無いことから、うまく笑えたみたい。


「落ち着いたところで、出来上がった物をお披露目するか」

「そうじゃな、わし達の仕事の成果を見て貰わんとのう」

少しの間続いていた静寂を破るアルゴさんの一言にレリックさんも頷いて同意を示す。

「それじゃ、フィリエルさん打ち合わせ通り頼むぜ」

その言葉にフィリエルさんは頷いて、隅っこに置いてある天井の無い木箱から、他の人には見えないように何かを取り出して僕へと近付いてくる。

「私が良いと言うまで目を瞑ってて欲しいな」

悪戯っぽく笑うフィリエルさんの言葉に従い、目を閉じて次の指示を待つ。

その間に、首の後ろ側あたりに固い何かが触れる感触が伝わり、続いて肩から胸のあたりに同じ感触が伝わり、触れた部分からほんのりと心を落ち着けるような温かさを感じる。

「開けても良いわよ」

待っていた言葉に従って目を開くと、触れた感触のある胸元へ視線を落とす。

肌色を少し黒くしたような色をした手の平サイズの十字架が見え、頂点のあたりから数珠繋ぎに同じ色をした玉が連なっている。

これって全部木製? よく見ると十字架にも繋がっている玉にも木目みたいな模様が見え、試しに十字架を持ってみると、手触りは木そのものだけど、僕が魔力を込めた物と同じ温かさを感じる。

でも、僕が魔力を込めた物は全部宝石で、木に魔力を込めた覚えは全くない。

温かさを感じる十字架を片手に首を傾げてしまった。

「ふふ、思った通りの反応ね」

フィリエルさんが僕の様子を見てクスリと笑みをこぼす。

「リーラに魔力を入れて貰った宝石は全部使っておるからの」

レリックさんは僕の疑問を見抜いたように答えを口にする。

「魔力は感じるけど……手触りも見た目も木に見えるよ?」

十字架を小さく掲げて宝石の色を探してみるけど、全部肌色に近い色で綺麗な宝石の色はどこにも見えなかった。

「目立たないように作ったからな」

満足そうな笑顔でアルゴさんが胸を張り、説明を始める。

魔力を入れた宝石は数珠繋ぎの玉の中に入ってて、銀の糸で全部繋がってるみたい。

十字架は薄い木箱で、半分ずつぴったりはめあうようになっているらしい。

教えられた通り十字架と玉のつなぎ目を回すと、前後に箱が開いて、中から銀の十字架が出てくる。

それには前と同じ配置でダイヤモンドが埋め込まれていて、アルゴさんが言うには小さくなっても宝石を増やした分同じような効果が期待できるらしい。

ちなみに、箱に覆われたままでも効果はあるらしいけど直接触って使うのが一番との事。

アルゴさんの説明に感心するばかりで、最後に「普通に頼まれたら大金を請求するとこだが、それに見合わない前金もらっちまったからな」と苦笑いで締めくくった。


「魔法を試すのは明日にしましょう」

「そうじゃな、前回の事もあるしの」

フィリエルさんの提案にレリックさんは頷いて同意する。

二人のやりとりに事情を知らない三人は首を傾げ、

「父上は前回の事と言っているが、なにかあったのか?」

代表してシェリーさんが質問を投げかける。

「シェリー達には話しておいた方がよさそうね」

フィリエルさんは困ったような笑顔で、レリックさんが作った十字架の試していて、その日に魔力を込めた僕が魔法の範囲と魔力の消耗具合を見誤って、魔力切れを起こしたことを語った。


「そのようなことがあったのですね」

ガーラントさんが目を見張り、淡々と答えると、

「魔法を使える者がときにやってしまう事ではあるが……」

「どんな魔法を使ったのか想像できねぇな」

シェリーさんが考え込むように言って、アルゴさんが肩をすくめながらそれに続く。

三人の言葉を聞きながら、前回の失敗を周知された事に、僕は「あう……」と呟いて肩を落とした。


その後、家に戻り、疲れを取る為に休もうと言うことになり、途中昼食を挟んで夕方まで雑談を楽しんだ。

アルゴさんの双子の悪戯によって納期に間に合わなかったという失敗談、ガーラントさんが語るシェリーさんと昔の思い出話、シェリーさんは時折照れたように顔を赤らめていた。

僕の興味は尽きる事は無く、ずっと耳を傾けていた。


夕日が沈んで初めての六人での夕食。

いつものテーブルでは狭いので、ほかのテーブルを横につけて皆で囲む。

テーブルの上には大蒜とバターによって香り豊かなパンが大皿に積まれ、置かれた木の器にはジャガイモのスープが注がれて、その中には柔らかそうな玉葱、濃い肌色のきのこ、人参が見え、香りと一緒に立ち上る湯気は食欲を刺激する。

食事が始まり、パンとスープに舌鼓を打っていると、

「ネックレスの付け心地はどうだ?」

アルゴさんに言われ、一日付けたままで過ごしていた事に気がつく。

「違和感もなかったから、一日付けてたよ……今から言うのは遅いかもしれないけど、ありがとう」

十字架を持ち上げて微笑んで返す。

少しだけ恥ずかしくて、もしかしたら、はにかんだように見えたかも。

「そう言って貰えると作ったかいがあるってもんよ」

アルゴさんは嬉しそうに僕の肩を叩いた。

少しだけ痛く感じたけど、ここに嬉しさがでているのかなって思うとお礼を言ってよかったと思えた。


「シェリー殿、あの手紙について尋ねないのですか?」

「そうだった、戻ってきてからあれこれあったからな……失念していた」

何かを思い出したようなガーラントさんの指摘に、シェリーさんは手をポンと叩く。

シェリーさん沢山驚いてたもんね……でも手紙って誰にだろう?


「手紙って?」

首を傾げながら、二人を除く全員の疑問を口にするフィリエルさんに、

「母上にです」

荷物から折りたたまれた手紙を取り出して手渡す。

「私に?」

受け取りつつも、貰う事がほとんど無いのかな? 首を傾げてしまっている。

手紙を出すだけでも結構な金額になっちゃうから、そうそう出せるものでもないよね。

一緒に住んでいるから手紙はレリックさん宛になることが多いのかも?

「ただ……何が書かれているのかさっぱりわからない。 しかし、最後の文字のつづりは母上の弓に彫られていた物と同じなんだ」

「手紙の配達人は魔物に襲われて亡くなりました。遺された荷物よりその手紙を見つけ、シェリー殿の話よりフィリエル殿に宛てられた物と判断致しました」

シェリーさんの説明をガーラントさんが補足する。

説明により、皆の視線はフィリエルさんの手にしている手紙に注がれる。


「シェリー達が見つけなかったら届かなかった手紙なのね……」

フィリエルさんは注がれる視線に困ったように笑いながら、手紙を慎重に開いた。

読了感謝です

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