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工房にて

昨日言っていたレリックさんにお手伝をお願いされ三人で工房へ、

「昨日わしを癒すためにロッドが壊れたじゃろ?それの代わりとして新しいの作るのにちょっと試したいことがあるんじゃ」

というお願いをされたので、お手伝いできるのならと喜んで返事したのはいいけど。

何をすればいいんだろう?

工房の中は金槌やペンチとか色々な工具みたいなものが綺麗に並べられている。


「これに魔力を込めて欲しいんじゃ」

といわれてさっきテーブルに並べていたダイヤモンドを一つ僕へと手渡す。

どうやって込めるんだろう?

手渡されたダイヤモンドをもって、見つめながら途方にくれてしまう。

「リーラちゃん……やり方がわからなくて困ってるわよ?」

「すまん、いつもフィリエルにやって貰っていたから、同じようにやってしまったみたいじゃ」

二人で苦笑してしまっている、『やり方は自分で探すんじゃ』とか言われなくてよかった。

少しホッとしていると「私が手本を見せるわね」といって青い石を手のひらにのせ、目を閉じる。

集中してるのかなと、フィリエルさんの手のひらの石を見つめていると青い光が少しずつ集まっているように見える。


『アクアマテリアル』

フィリエルさんの言葉と共に石がほのかに光っているように見える。

「魔法を使う時にその対象を石にするようにやれば出来るわよ」

僕へお手本を見せ終えた後、にっこりと微笑んでレリックさんへと石を手渡す。

なるほど、石へ魔法を閉じ込めるようにすれば良いんだね。

なんとなくやり方がわかったので、手のひらにのせたダイヤモンドへと集中する。

脳裏に浮かんできた言葉を唱える。

『ブレッシングマテリアル』

石へと魔力が持っていかれる……この感覚はちょっと心地悪い。

その感覚が無くなったので、終わったのかなと思いダイヤモンドを見てみると、

白い湯気のようなものが見える、のせたままの手のひらが温かい、落ち着くようなホッとするような温かさが感じられる。

これが僕が込めた魔力なのかな?

「終わったようじゃな?」

僕は頷き、レリックさんへとダイヤモンドを手渡すと、受け取ったレリックさんは目を見開き、まじまじとそれを見つめる。


「レリックどうしたの?」

フィリエルさんはレリックさんの行動に首を傾げている。

「持ってみるのじゃ、そしたらわかる」

フィリエルさんにダイヤモンドが手渡される。

「えっ?」

今度はフィリエルさんがレリックさんと同じような行動をしている。

僕が込めた属性が間違ってたのかな?

「リーラちゃんこれ……」

二人して驚いてる理由がわからなくて、不安になってくる。

高価な石に間違った属性を入れてるなんて言われたらどうしよう。

「ごめんなさい」

大きな失敗をした気分になって謝ってしまう。

「リーラちゃん勘違いしてるわよ、これは驚くほどすごいことなのよ」

「うむ……宝石から魔力があふれておる……持つだけで感じられるほどじゃ」

二人ともすごいことだと言ってるけど、他の属性の石とか触ったことが無いからよくわかんないよ。

とりあえず失敗したわけじゃないみたいなのでよかった。


「後四個残ってる物もお願いできるかの?」

「体感だから良くわからないけど、結構魔力使ったと思うから無理かも」

僕の答えにレリックさんは「わかった」と頷いた。

無理しちゃってまた動けなくなったら迷惑かけちゃうもんね。

「それじゃまた明日おねがいするかの」

「うん」

明日なら大丈夫だよね、僕は二つ返事で引き受ける。

「そういえば、魔力込めて何に使うの?」

「うむ、このダイヤモンドにリーラの魔力を込めてもらって、リーラの魔力に耐えうる物をつくりたいのじゃよ」

え……僕の為に金貨二十枚のダイヤモンドを使うの?

「だ、だめだよ……僕の為なんかにそんな高価なもの」

両手を左右に振って、だめだめと手振りも交えて答える。

僕の言葉にニヤリと意地の悪そうな笑みを浮かべるレリックさん。

「ふむ、困ったのうリーラはわしの命は金貨20枚もせんというとる」

「リーラちゃんひどい、レリックはそんなに安くないわよ」

あうあう……そんなこと言ってないのに……。

フィリエルさんが悲しそうな声で言うけど、耳が楽しそうに動いている。

指摘しても意味ないかもしれないけど。


「だって……」

それでも何とか抗議の声を上げようとするけど、

フィリエルさんに笑顔で頭を撫でられ、首を振られた。

無駄な抵抗はよしなさいってこと……?

「まぁ冗談はおいといてじゃな、あの壊れたロッドがあったからこそ、リーラは倒れずに済んだと思うのじゃよ」

必死になって魔法を使った後に壊れちゃったから、よくわからないけどそうなのかな?

正直実感が無いので首を傾げてしまう。

「フィリエルが全力で使えばひびが入ることがあるかもしれんが、粉々になることはないんじゃよ」

「つまり、リーラちゃんがレリックに使った魔法がすごく魔力を使うってことなの」

え……ということは?

「高価なものを貰う、という意味で遠慮したいという気持ちはわかるんじゃが、正直不安なのじゃよ」

「リーラちゃんが初めて神聖魔法を使ったとき、どうなったのか考えてみてほしいな」

優しく呼びかけるように言う、フィリエルさんの言葉に思い出してみる。

ガーラントさん達に使ったときは急に意識を失って二日間眠ってしまった。

レリックさんを治療したときは意識はあるものの体の力が抜けたような状態で一日過ごす事になった。

すごく心配かけたし、迷惑もかけちゃったね。

思い出すとシュンと俯いてしまう。


「わかってくれたみたいね、私もレリックもリーラちゃんの使える魔法については知らない事ばかりなの、

まだ沢山の魔法があるかもしれないし、無いかもしれないの」

「じゃからこそ、少しでも軽減できそうなものを持ってもらいたいのじゃよ……それが高価なものだとしてもじゃ」

フィリエルさんは僕を包み込むように抱くと、沈んだ気持ちが和らいで行く。

「前も言ったように、リーラちゃんの為ならお金を使ってもいいの、生活が傾くような事はしてないから大丈夫よ」

フィリエルさんは笑顔で気にしなくて良いと言ってくれるけど、

金貨二十枚なんてこないだの蜂蜜の瓶が銀貨四枚だったから五百個も買えちゃう……。

他の物を購入した事がないので比較が蜂蜜の瓶になってしまった。

「中々頷いてくれんのう、まぁリーラの性格から言えば仕方ないかのう」

「ごめんなさい……」

苦笑いになってしまった、レリックさんに申し訳なくなり謝る。

僕の事を想ってやってくれてることはわかるけど……。

「ふむ……困ったのう、これではこのダイヤモンドが無駄になってしまうのう」

レリックさんは腕を組み困った様子でこちらを見ている。

僕の為に買ってくれたのは嬉しいけど……額が額なだけに……。

一つには魔力込めちゃったから返品もできないよね……。

でもフィリエルさんもレリックさんもすごいといってたし……そうだ!

この方法なら返品しなくてもそれ以上になるかもしれない。

「僕が魔力を込めたものを売るのはどうかな?」

神聖魔法を人前で使うわけでは無いし、これなら損もしないよね。


「これを売るじゃと……ならん!」

僕の提案にレリックさんは険しい表情となり、怒号で返す。

背筋が凍るような叱責を受け、耐えられなくなり視線をそらすと、その先に居たフィリエルさんは悲しそうに僕を見つめている。

僕の提案はよくない事だったみたい。

「ご……ごめんなさい」

その場の雰囲気に耐えられなくなり謝ると、僕の視界が少しずつ歪んでいく。

何がよくなかったのか、僕にはよくわからない、でも僕の提案が原因なのに、僕が泣いてしまったら……。

許してもらう為に、泣いてるのと同じじゃないの……、腕で涙を必死に拭って流し続けることを何とかこらえる。

「すまんな、リーラを責めるつもりはないんじゃが、売ってしまうことは駄目なんじゃ」

小さく溜息をつくレリックさんの視線は、穏やかなものに戻っていた。

フィリエルさんは何か思いついたのか、レリックさんの耳元で僕に聞こえないように何かを言っている。

「ふむ、それなら……」

フィリエルさんに何を言われたのだろう? 満面の笑みを浮かべる、レリックさんが気になる。

「リーラの魔力を込めた石を売ることにするぞ」

さっきと言ってることが、全く逆なので僕は目を見開いてしまう。

僕をにらめつけてしまうぐらい、反対の意思を示していたのに……僕は混乱してしまう。

「購入するのはわしじゃ、中に入った魔力をわしが買うのじゃよ、金貨二十枚でな」

レリックさんはしてやったりという表情で僕に言う。

「でもそれって……」

僕が貰うのと全く変らない、最初と同じ事になってる……。

「それぐらいの価値は十分あるのよ」

戸惑う僕にフィリエルさんは優しく微笑んでくれる。

「こう思ってくれんかのう、わしが鍛冶でこれを使うこと自体が職人として光栄なことなんじゃよ、

これを扱ったことのある、鍛冶をするものがどれだけいるかわからん」

僕が魔力を込めたダイヤモンドを手に取り、僕へと微笑みかける。

「うん……わかった」

僕が頷くと、レリックさんに髪をくしゃくしゃとちょっと乱暴に撫でられる。

髪を引っ張られる感じになって少しだけ痛かったけど、心地よかった。

結局元の木阿弥、金銭の高さに意地を張って、素直に頷かなかったことをちょっと後悔。

「精一杯やるからの、後のダイヤモンドも頼むぞ」

「うん、僕も頑張って魔力を込めるね」

僕は今出来る精一杯の笑顔でレリックさんに答えた。

読了感謝します

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