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新たな関係

翌日……

結局あの後はフィリエルさんに真っ赤になった顔を可愛いとかからかわれ、

抗議すると怒った顔も可愛いなんて……。

もうどうにでもしてと寝たふりもすると寝顔も可愛いというし……。

おもちゃにされてほとんど寝ないままに夜が明けました。


「あふ……おはようございます」

「おはよう……寝れなかったのかの?えらく眠そうじゃの」

半分寝ている状態でレリックさんに朝の挨拶……寝不足が行動にすでに出ているみたい。

「フィリエルさんのおもちゃにされました……」

そのまま僕はテーブルに突っ伏してしまう。

「仕方ないのう、しかしなフィリエルは嬉しいんじゃよ」

「そうなんですか?」

理由を教えてくれるレリックさん……困ったように笑っている。

でも何が嬉しいんだろう?

「ふむ……理由はのうリーラがここに居るからじゃろうで」

「僕がですか?」

僕が居ると何が嬉しいのかな?

どっちかいうと手がかかる子供が転がり込んできたようなものだけど……。

子供……あっ。

「シェリーさんの代わりみたいなものですか?」

「まぁ、そんなとこじゃろうな、世話を焼きたいんじゃよ、わしと二人きりの生活もそこそこに長いからのう、

穏やかな毎日もいいじゃろうが、ちょっとした刺激もないとのう」

刺激って僕は香辛料かなにかですか。

レリックさんが僕を見つめる目は穏やかなものでまるで孫を見るお爺ちゃんみたいだ

傍からみたら孫と祖父みたいにみえるのかな。

睡魔と戦いながらぼんやりとそんなことを考えていると、

「ほれほれ、そろそろ起きんとフィリエルが戻ってくるぞ」

「う~このまま寝ちゃいたい……」

閉じかけたまぶたをこしこしこすりながら何とか起き上がる。

ふんわりとパンの香りが鼻をくすぐる。

これでシャキッと目が覚めたらなぁ……心地いい香りのおかげで眠気が……。

寝ちゃ駄目だ……と思いながら睡魔に抗う……多分こっくりこっくりと頭を上下させている感じなのかな……。

頭が働かない……必死に目を開けようとするが……再び机に突っ伏してしまう。

「しょうがないのう……」

レリックさんのやれやれといった感じの声が聞こえたと思うとそこで僕の意識は途切れた。


懐かしい夢を見ていた。

「母さんいっちゃやだ」

まだ幼かった頃の僕が母さんの足にしがみついている

「困ったわね、私はこれからお仕事なのよ」

言葉通り困った顔をしていた

懐かしいな……あれは初めての保育園に預けられた時だっけ……。

むずがる僕を頭を撫でることであやしてくれたんだっけ。

そこで夢から冷めると目の前には明るい緑色の布が見える。

あれ……僕机に突っ伏して眠ったような……寝てしまう前の記憶を必死に手繰り寄せ思い出す。

温かくて心地よい……って僕何かに抱きついてる……?

夢では必死に抱きついてたけど……おそるおそる確認をしようと抱きついていた手を離すと、

「起きた?」

声の元へ見上げような形になって見ると穏やかに微笑むフィリエルさん、

フィリエルさんのお腹周りに抱きついていたみたい……ってどうしてフィリエルさんと一緒に寝てるの?

「どうして?って顔をしているわね、レリックにベッドまで運んでもらってから、私もちょっと寝ようかなと思って、

寝てたんだけど……キュッと締め付けられる何かを感じて目が覚めたの」

「そしたら僕が抱きついてきてた……?」

僕の回答が正解だったのかフィリエルさんは楽しそうに続きを話し出す

「そうそう、でねすやすや気持ちよさそうに寝てるからなすがままにしていたら『母さんいっちゃやだ』とか言うんだもの、

寝言だと分かってても、母さんって呼ばれるの久しぶりでちょっと嬉しかったわ」

楽しそうに笑ってるフィリエルさん……しかし僕は恥ずかしさのあまり言葉が出ない。

夢の中そのままが現実にほぼ連動してたなんて……しかも言葉にでてたなんて……。

「にゃぁぁぁ」

恥ずかしさのあまり叫ぶ僕であった。


「落ち着いた?」

「はい……」

僕は肩を落とししょんぼりとしたままだ。

ふと同じようなことがあったことを思い出す。

あの時も叫んじゃったなぁ。

あれからまだ20日もたってないのにそれすら懐かしく感じてしまう。

ミーナさん達に早く連絡が行くといいなぁ……手紙の内容は分からないけど。

「どうしたの?考え込んじゃって」

僕の表情から読み取ったのかな?フィリエルさんに心配そうに僕にたずねる。

「ランドの村でも同じようなことがあったなぁって」

「手紙は今日お願いしにいくから、早く届くといいわね」

僕の心中を察してか、微笑みかけてくれた。

「はい……」

届くのは遅ければ三十日ぐらいかかると聞いているので少し歯切れの悪い返事をしてしまう。

森を突っ切れば2日とかからないはず……だけど魔物で通行止め、歯がゆい気持ちでいっぱいになる。

「わかってると思うけど森を抜けて戻ろうなんて思っちゃだめよ?

今までにそれで何人も命を落としてるのよ」

釘をさすかのように言われるけど、

「それは大丈夫です」

ケルスの怖さを教えてもらってから、あれと正面から向かって挑もうなんて思えない。

僕だって無駄に死にたくはないからね。

「それだったら……少しは笑顔を見せてほしいわ、今日は村を案内するのだからそんな顔して欲しくないのよ」

と言ってから、しまったと口を手で覆うフィリエルさん、本音をつい言ってしまったのかな。

そういえば僕ってここに来てまだ笑ってないのかな……?

苦笑い……くらいしかしてないかも笑顔とはいえないよね……。

「こう……ですか?」

ちょっと思うように笑顔を作ってみる

フィリエルさんが目をそらしてしまった……多分ぎこちないんだろうねそんな気がする。


「私の言い方がよくなかったわ、色々ありすぎて困ってるのにね」

どこか申し訳無さそうに呟く。

その言葉に僕は首を横に振り、

「この村で暮らしていかないといけないのに僕のほうこそ……」

僕が最後まで言う前にフィリエルさんに抱きしめられていた。

「ごめんなさいね、自然に笑顔がでるようになってほしいのに……」

ああ……沈んだ気持ちを見抜かれてたのかな……。

手紙をだすけれども片道三十日……先に逃げてくれた二人の安否も分からない、

養女となって一日目で行方不明になった僕。

心の奥に沈めたくてもなかなか出来ないのは仕方のないことなんだよね。

泣きじゃくってすっきりしたつもりだけど不安な気持ちはやっぱり出てきちゃう。

でもやっぱり、ここで暮らすのに沈んだ気持ちのままじゃ駄目だよね。

ただの他人だった僕をこんなに心配してくれる人が居るんだからと心を奮い立たせる。

密着した部分が温かく、心の中まで温かくなってきた気がする。

「フィリエルさん」

「なーに?」

「もう大丈夫です」

温かい気持ちは十分伝わりました。

「ありがとうございます」

多分僕は自然な笑顔でお礼を言えたと思う。

「どういたしまして」

僕の表情を見たのかフィリエルさんは明るい微笑を浮かべて応えれくれた。


「それじゃ体を洗いにいきましょうか」

そういえば僕は昨日体の埃はふき取ったけど洗っては無いことを思い出す。

「一緒に……ですか?」

歯切れの悪い質問をフィリエルさんに投げかける。

「そうね、一緒によ」

さも当たり前のように応えてくれる、ううう、少しは考えてよ……。

僕の前世が男の子だったんだから……。

ミーナさんに連れて行かれた時の事を思い出して恥ずかしさが増してくる。

「まだ恥ずかしいの?」

僕はこくりと頷くとフィリエルさんはどこか困ったような微笑を浮かべる。

「でも慣れないとだめじゃないかな?」

まるで小さい子供を諭すように僕に言う、あれ?昨日の勢いならその反応可愛いとか言って連れて行きそうな勢いになると思ったのに……

思った想像とは違い微妙な肩透かしを食らった気分になった。

「昨日みたいに冷やかされて連れて行かれると思っちゃいました」

僕が正直に言うと苦笑しながら

「ごめんなさいね……昨日は私がやりすぎたみたい……レリックに『嬉しいのはわかるが、もう少し休ませてやるべきじゃな、

見なさい、憔悴してしまってるぞ』って机に伏せて眠ってるリーラちゃんを見ながら言われたわ」

「嬉しかったんですか?」

「そうね、久しぶりに娘が帰ってきたみたいで……ね」

そういえば娘のシェリーさんは時々しか帰ってきてないんだっけ、時々しか会えないとやっぱり寂しいのかな?

それなら……

「厚かましいお願いになるますけど……僕がここに居る間娘として扱って頂けませんか?」

僕がここに居ることで寂しさを紛らわすのに役に立つならと提案する。

つまりここにいる間は『お父さん』『お母さん』と呼ばなければ……

言った後にミーナさんとディンさんにも言ったことがないことに気付く。

はう……ちょっと早まったかな?

僕の言葉にフィリエルさんはぱっと華やぐような笑顔に変ると、

「ちょうど考えてたところだったのよ、リーラちゃんから言ってくれるなんて」

あうあう……予想外に渡りに船みたいな提案になってしまった。

ディンさんミーナさんごめんなさい、再会できたら『お母さん』『お父さん』と呼びます。

心の中で二人に謝る、

「ちょ、ちょうどって?」

「村の人たちに説明するのに、『シェリーの子供』って説明すれば、すぐに受け入れてもらえると思うのよ」

あれ……それだと『お婆ちゃん』と呼ばないといけないのかな?

「分かってると思うけど私を『お婆ちゃん』とか呼んじゃ駄目だからね?」

「でも……シェリーさんの娘ということになると自然とそうなっちゃうよ……?」

思ってることを見透かされてる……っなんとなく予想がついたのかな?

「呼び方は今まで通りでいいの、私とレリックの娘だと今まで居なかったのが不信に思われちゃうでしょ?

だからシェリーが連れて来て預けていったということにしたら辻褄があいやすいの」

娘じゃなくて孫の扱いになるから『お父さん』『お母さん』と呼ばなくていいみたい……よかったのかな?

それに自分の娘をそんな扱いにしていいの……かな?

シェリーさんは知らぬ間に一児の母になるということですけど……。

「でもシェリーさんの事全然知りませんし……」

もし聞かれたときはどう回答したらいいのか分からないよ……。

「今日の案内で私が適当に説明するから大丈夫」

フィリエルさんは僕に向かって片目を瞑ってウインクする。

乗り気で過ぎて逆に怖いけど、もうなるようにしかならないよね。

「それじゃ、シェリーの娘と体を洗いに行きましょうか」

切り替えはやいです……腕をぐいぐいと引っ張られてそのまま外へと連れ出された。


外へでると……見晴らしの良い風景が広がっていた。

「わぁ……」

自然と感嘆の声が漏れる。

村の外れだとはいってたけど……丘の上に家が建ってたんだ。

見下ろした先に木々に囲まれる形となった集落が見える……歩くとどのくらいかかるのかな。

集落への道は一直線に木々が開けており細い道が一本通ってるように見える。

「あれがローエルの村よ」

フィリエルさんが指差した先に僕がさっき見た集落があった。ランドの村と同じぐらいの規模かな、

村の大きさを見た感想を思い浮かべていると、

「案内は体を洗った後で行きましょう」

と回れ右と、村と反対の方向へと歩いていく……。

といっても手を引かれているので連れて行かれてる感じかな……。

しばらく歩くと……綺麗な湖が広がっていた水は澄んでおり、そのまま飲むことも出来そう。

ここが村の水源になってるのかな?

沢山の初めて見るものに心が躍る、鉄塔や電柱など全く無い、ただただ広がる自然とその中に包まれている家。

この世界では当たり前なのかもしれないけどランドの村でも感じたけど新鮮だ。

「ここはローレ湖で、ここから村に流れている川をエーレ川って呼ばれているわ」

フィリエルさんが呼び名を教えてくれる、村で生活するようになるから必須だよね。

「さて……それじゃ体を洗いましょうか」

と言ってフィリエルさん自分の着ていた衣服を脱ぎ、生まれたままの姿になると湖へと静々と入り、手のひらで体を撫でるように洗っていく、

その光景は絵になりそうで、しばし僕は呆然と見つめてしまった。

僕も成長したら……と考えていると、「リーラちゃんも早く入りなさいな」といつの間にか僕の目の前にフィリエルさんが立っており、

僕の衣服を脱がしはじめる……「村の人はここまで来ないから安心して脱ぎなさい」

「じ、自分でぬぎます」

慌てて僕の服にかけたフィリエルさんの手を離すと、自分で脱ぎ始める。

この年になって脱がしてもらうなんて……僕に残っていた男のプライド(?)が許さなかった。

「肌が綺麗ね、若いと違うわね」

全部脱ぎ終えたところでフィリエルさんの感想が僕の中で恥ずかしさがこみ上げてくる。

同性なんだから見られても平気だと言い聞かそうとするけど……。

「か、体洗ってきます」

といって駆け出してしまい……膝の辺りがつかる深さまで走ってきたところでバランスをくずし……

湖にそれなりに大きな水音が立ちました。

「うう……」

入ってしまった水面から顔を出し水辺の方を見ると苦笑を浮かべたままフィリエルさんが近づいてきていた。

「大丈夫?急に走り出しちゃったから驚いたわ」

「ごめんなさい……綺麗なんて言われるのなれてないから恥ずかしくて……」

顔を真っ赤にして俯く、湖で転んだのも要因の一つだけど……。

「繰り返すようだけど……慣れていかないと駄目よ? リーラちゃんはすごく可愛いんだから」

そんな事言われても……と困惑していると、

「先に体洗ってしまいましょう、手伝ったほうが良いかな?」

「大丈夫です」

僕は即答し、出来るだけフィリエルさんを直視しないようにして、コシコシと体を撫でるようにして必死に洗った。

結局髪を洗うのは手伝ってもらったけど……長めの髪を洗うのはまだまだなれそうにないかな。


湖からあがり体をフィリエルさんが持ってきてくれた布で拭く、髪の毛は……

「『ウォームウィンドベル』」

鈴の音と共にドライヤー代わりに暖かい風を吹かせる。

ちょっとした便利魔法、僕の数少ない特技だ。

「リーラちゃん今のは……?」

驚いた表情を浮かべながらフィリエルさんがたずねてくる

「えっと、髪の毛を乾かすのに丁度いいかなと魔法を使いました」

そんなに驚くことなのかな?僕は首を傾げてしまう。

「リーラちゃん魔法使えたのね」

「使えてもほんの少しです」

僕は苦笑しながら応える。

ほんの少しの魔法……でもこれが無かったら僕は生きていなかった。

ちょっとだけ与えられた才能……それを教えてくれたミーナさんに感謝する。

「魔力を持ってるのは分かってたから、私が教えようと思ってたのに……」

フィリエルさんは残念そうに呟く、そういえばどうやってケルスを追い払ったかは言ってなかったっけ。

「それにしっかり魔法のアレンジまでしてるなんて……」

アレンジは僕の思いつきだけど。

とりあえず髪も乾き服も着たのでこれから村へ行くのかな?

「一度家へもどってお昼にしましょうか、リーラちゃんのお腹がなる前にね」

少し意地の悪い笑みを見せながら言うフィリエルさん、魔法を教えれなかったのが悔しかったのかな……?

ふと残念そうにしてたさっきの表情がよぎり邪推してしまう。

「後でどうやってケルスを追い払ったか教えてね」

僕が魔法が使えることが分かったのか興味津々といった感じで言うフィリエルさんの中で僕の魔法の質の高さを勘違いしているような気がする……最低限しか使えないんだけど。

同じ事をしちゃ駄目だって、再度叱られちゃうかな?自分でも正直良く追い払えたって思うぐらいだしね……。

ちょっと不安に思いつつフィリエルさんの後について行くのだった。

読了感謝です

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