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千早(29)・居場所



 ひなとコハクを乗せた舟が、大型船の傍らへと戻っていく。

「……頭」

 じっと身じろぎもしないで、小さくなっていくその舟の後姿を見送っていた千早の背後で、ざく、と砂を踏む音が聞こえた。

「…………」

 緩慢な動作で振り向いた千早は、さっきまでのコハクのように、感情のない無表情になっていた。それを見て、灰色っぽい顔色をした三左のほうが、よほど苦しそうに表情をくしゃくしゃにした。


「すまない、頭……。俺だ……俺が、コハクに教えた。潮の動きも、流れの読み方も、外から島にいちばん入りやすい時間帯も」


 うな垂れて口から出すその声は、狼狽と自責の念でわずかに震えている。

「島の人間以外には教えちゃならないことを、教えちまった……。すまない。すべて、俺の責任だ」

「……三左の責任なんかじゃねえよ」

 千早はなんとかそう答えたが、耳に聞こえる声は、どこか暗いところから響いてくるように虚ろだった。

 現在こうなっていることの責任は、これっぽっちも三左にあるなんて思っていない。それは事実なのに、どうしても言葉を続けることが出来なかった。胸の中が空っぽになったみたいで、否定も慰めも、何も浮かんでこない。


「そうだ、全部、千早のせいだ!」

 自分の代わりに、大きく糾弾する声があがった。


 そちらに目を移すと、未だ状況が把握できなくて戸惑う島民たちを押しのけるようにして、ずいっと前に出てきたのは五平だった。寝る前に呑んだだろう酒もすっかり抜けた蒼白な顔で、眉を逆立て息を切らしている。


「お前だ、お前が悪いんだ! てめえが不知火の頭の腕を斬り落としたりするからこんなことになったんだ! てめえのせいで、島の男たちが死にかけただけでなく、今度はこの島全部を潰すことになったじゃねえか! どうしてくれる、え、どうしてくれるんだよ! 冗談じゃねえ、俺は殺されるのは御免だ! それくらいなら不知火衆に入らせてもらうぜ!」


 恐怖からなのか、五平は耳障りなくらい高い金切声を出して喚き続ける。千早は無言で五平を見返し、自分を激しく責めたてる言葉を受け止めた。

 言い返す気はなかった。そこに個人的な恨みが混じっているにせよ、五平の言うことは、ちゃんと真実を衝いている。心臓が痛いほどに。


「──へえー、それで不知火の一員として、人殺しや強奪行為を働くわけだね。ま、性格的にはもしかしたら向いてるかもしれないけど、残念ながら、圧倒的に度胸と実行力に欠けてるよ。あんたみたいな男は、あっちでも足手まといになるだけだから、散々痛めつけられて海に捨てられるのがオチだね」


 次に発されたのは、この場の重苦しい空気にはそぐわない、嘲弄するような軽い声だった。

 人々の間を、するりとすり抜けるようにして、七夜が姿を見せる。

 なんだと、と五平は気色ばんでいきり立ったが、七夜は言うだけ言うと、まったくそちらには関心を持たなかった。いきなり現れた七夜に対しても無感動な目しか向けない千早をまじまじと覗き込み、「……ひどい顔だねえ」と呟く。


「帰るのが遅くなって悪かったね、頭。夕方頃、不知火島にカラスが飛んでくるのが見えたんだけど、まさかこんなにも早く、やつらが行動を起こすとは思わなかったんだ。確証が掴めるまで、もう少し様子を見ようとしたのが裏目に出た」


「……カラス?」

 意味が判らず問い返すと、七夜は懐から出した手を、自分の顎に持っていった。いちいち絵になる仕草で、整った顔に苦笑を乗せる。

「コハクって間者の忠実なる手下、ってとこだね、多分。流されてきた時から、あいつの側にぴったりとはべってるから、何かあるんじゃないかと睨んでたんだけど」

 言われて、千早も思い出した。コハクが流れ着いた時、南の浜の上空に、黒い鳥が羽を広げて舞っていた。


 白い海鳥の中で、一羽だけ姿の異なるその鳥は、確かに千早の目を引いたはずだった。


「カラスってのは、案外、頭がいいんだ。よく懐かせて教え込めば、決まった場所に文を届けたりすることも、不可能じゃないんだろう。空を飛ぶ鳥には、海の激しい潮流も関係ないからね」

 そういう通信手段を用いて、コハクはこの羽衣島の情報を、離れた不知火島に向けて発信していたということか。

 蜘蛛が、千早の最大の弱味である、ひなという存在を知っていたのも、この島の領域内にまで簡単に侵入できたのも、事前にそれらをしっかりと把握していたからだったのだ。


 ……蜘蛛の言うとおり、千早が甘かった、ということだ。何に対しても。


「で、どうするんだい。降伏するのかい?」

 七夜に問われ、千早は伏せていた目を上げた。

「当たり前だろうが! 降伏しなきゃどうすんだ! 戦ったって勝てるわけねえのに、むざむざ殺されるなんて冗談じゃねえよ!」

 また甲高い声で異議を唱える五平に、七夜は今度ははっきりと眉を寄せた。この男がここまで不快感を隠しもしないのは珍しい。

「うるさいよ、あんた。俺はね、頭に聞いてんの」

「頭じゃねえ、ただの代理だ! こんなガキが頭なんて、俺は認めねえからな! なあ、みんな、そう思うだろ?! 千早は、この島をこんな危地にまで追い込んだ反逆者だ!」

 大声でがなり立てて同意を求める五平に、島民たちの反応は鈍かった。互いの困惑した顔を見合わせ、ぼそぼそと囁き合っている姿に焦れたのか、五平はさらに唾を飛ばして声を高くした。


「なんだよ、一年前のことだってそうじゃねえか! こいつは自分の父親を助けるために、島の人間を見捨てようとしたんだろ! そのために死にかけたやつだっていたんだろ?! 今度は、こいつのせいでこの島すべてが──」


「黙れ、五平」

 遮った低い声は、三左のものだ。

 三左の固い顔には、くっきりと怒りが露わになっている。三左は気の優しい男だから、普段、滅多なことでは怒らない。しかし一旦こうして怒気を表に出すと、もともと怖い顔立ちが、より際立って怖くなる。五平が言葉を呑み込んだのも無理はなかった。

「何も知らないやつが口出しするな。お前は一年前、船にも乗っていなかっただろうが。千早は──頭は、あの時」

 ひとつ息継ぎをして、吐き出すように一気に言った。


「俺たちを逃がすために深手を負った先代を守りながら、一人で船の上で戦ってたんだ。そっちに向かおうとする俺たちに、『来るな、逃げろ』って、何度も声を張り上げた。小舟に分散した羽衣衆を追ってこようとする不知火の連中を、たった一人で、必死になって止めてくれていた。なのに、それを見ながら、何も出来なかったのは俺たちだ。取るべき行動に迷ったのは、ただひたすら、俺たちが不甲斐なかったせいだ。先代を助けに行くことも、頭に手を貸すことも出来なかった俺たちの情けなさが、お前に判るのか。頭のせいで死にかけたなんて言うが、先代と頭がいなけりゃ、そもそも俺たちは、今この場にいないんだ」


「そ……」

 五平がたじろぐように黙り込む。

「……三左」

 呟くように言った千早を、三左はしっかり正面から見据えた。


「俺にとって、あんただけが、羽衣島の頭だ。俺は、頭の命令に従う」


 力強い口調で言い切る三左の言葉に、その後ろにいた島民たちが、一人、また一人と小さく頷く。

 それはゆっくりと、けれど明確に全体の意志としての形をとっていき、その顔からは徐々に、戸惑いや困惑が抜けていった。


「──どうするね、頭」

 しばらくしてから、改めてそう問いかけたのは、島の年寄りだった。彼ははっきりと、千早を「頭」と呼んだ。


 千早はその皺に埋もれた目を見て、それから、後ろにある海上の船へと顔を向けた。

 そこにはもう、蜘蛛も、ひなも、コハクの姿もない。甲板に出ている不知火の他の男たちは、松明を持ちながら、こちらの様子を面白そうに観察している。

 あの船の中では、一体、何が起こっているのか、今の自分にはもう知るすべもない。


「──降伏はしない」


 もう一度顔を戻し、静かに告げた。

 五平は驚愕に目を開き、何かを言いかけたが、三左に睨まれて口を噤んだ。それ以外の人々は、かすかに頷いて、千早の言葉の続きを待っている。

「降伏したところで、結果は同じだ。不知火は、この島の男を殺し、女を苦しませるだろう。万が一、不知火衆に加わったとしても、そこから先は、ただ修羅の道が続くだけだ。俺は、皆にそんな思いをさせたくない」

「じゃあ、戦うか」

 血気盛んな若い男が勇んだように言う。刀を持った手に、力を込めた。

「…………」

 千早は再び無言になってその男を見てから、今度は下の砂浜に目を向けた。そこには、頭上の月光が、くっきりと自分の影を作っている。

 ──多分。

 心の中で、自分の声が空虚にこだました。


 多分、不知火の船は、ここに上陸してこない。


 それをどうやって島民たちに説明すればいいんだ、と影を見ながらひそかに暗い笑いを漏らした。ひなの「力」が、あの船をなんとかしてくれるから、とでも言えばいいのか? 千早だって、その力がどんなものなのか知らないというのに。

 ひながその力を使えば、島は助かるのかもしれない。不知火が船を失ってしまえば、この戦いは、羽衣衆にとって、断然有利なものになる。ひなはそのために、あそこに向かったのだ。

 でも。


(……でも、ひなはきっと、帰ってこない)


 千早はここで島を守る代わり、ひなという女を失う。島か、愛する人間か。またこの二者択一だ。神や仏というものがあるとしたら、その存在は、とことん千早の片手を空けさせておきたいらしい。

 下を向いたまま、自分の手の平を水平に広げた。

 やっと掴んだと思った羽衣。またこうして、するすると手からすり抜ける。ひなの心も身体も手に入ったと思ったのに、二人で人生を進んでいこうというあの約束は、あの誓いは、この先ずっと叶えられることはない。

 宙に浮かんだまま。


(──そうやって)


 そうやって、これから生きていかなければならないのか。

 自分の中に、永遠に満たされない真っ黒で大きな穴を抱えながら、ずっと。


 口元を引き結び、自分の手の平を見つめる。

 そこには、何もない。


 空っぽの手を自覚した途端、ぽつりと思った。

(嫌だ)

 そう思ったら、次に湧いてきたのは、全身を焦がすほどの、激しい怒りだった。


 嫌だ──嫌だ。


 どちらかを選び、どちらかを捨てる。

 そんな生き方は嫌だ、と心が強烈に拒否している。

 島のみんなに生きていて欲しい。けど、ひなを失いたくない。一方を捨てるのは嫌だ。

 歯を喰いしばる。瞳に炎が宿った。

 いやだ!


 どうして俺は、一度手にしたものを失くさなきゃならない?

 どうして、どちらかを諦める必要がある?

 大事なものを大事だと思うこと、欲しいものは欲しいと願うこと、愛したものを守りたいと思うことの、何が悪い!


 広げた手の平を、ぐっと拳にして握った。そうだ、御免だ。絶対に嫌だ。

 片方を得るためには、片方を諦めなきゃならないのか?

 両方が欲しいと手を伸ばすことは、そんなにも許されないことなのか?

 そんなこと、あるわけない。

 ふたつに分かれている、目の前の道。どちらへ進むのか、俺はもう決めたじゃないか。

 「自分が後悔しないように」、そして、「自分が行きたい方向へ」。

 ──見据える先には、望む未来が待っていると信じて。



 千早は顔を上げた。

「みんな、頼みがある」

 今までとは違う芯の通った声音に、島民たちがはっとしたような顔をした。

「俺を、あの船に行かせてほしい。……ひなを助けたいんだ」

 その言葉に、三左と七夜が、申し合わせたように目元を和ませたのが見えた。他の人間たちは、少し驚いたように目を見開いている。

「あの子、本当にお前の恋人なのか」

 問われた言葉に、大きく頷く。

「一緒になる約束をしてた。もう少ししたら、ちゃんと、みんなにも報告するつもりだったんだ」


 一晩だけの妻なんて、そんなものが欲しかったわけじゃない。千早はひなを、生涯の伴侶にと望んだ。そうして、二人で島を守っていこう、そうやって生きていこう、と願ったのだ。


「あそこに行かせてくれ。船はあれ以上進ませない。蜘蛛は、必ず俺が倒すから」

 頼む、と言って頭を下げた。

 島民たちの間で、ひそひそと囁きが交わされる。その囁きを破るように「冗談じゃねえ!」と頭に降ってきたのは、またしても五平の声だった。

「ふざけんな! そんなことをして、不知火のやつらがこっちに攻め込んできたら、どうする気だ! 千早、てめえ、自分の女のために、俺たち島民を放り出す気かよ! みんな、聞いたか、やっぱりこいつはこういう奴なんだ! 自分のことばっかり考えて、俺たちのことなんてちっとも」

 そこで突然、ぶつりと五平の怒声が途切れた。

「……?」

 怪訝に思った千早が目線を上げると、動きを止めて、奇妙に口を半開きにしている男の顔が目に入った。その口から、「んが」という間の抜けた声が漏れたと思ったら、五平はくるりと白目を剥いた。


 身体がゆらりと揺れて、そのまま勢いよく、どう、と前方に倒れる。

 その後ろに、眉を吊り上げ、目にいっぱい涙を溜めた十野が立っていた。


「こっ……こ、この、ろくでなし」

 肩で息をして、ぶるぶると震える両手に握りしめているのは、誰かから強引に奪い取ったらしい刀だった。女の力とはいえ、刀身の入った鞘で思いきり脳天を殴られたら、そりゃあ倒れもするだろう。


「行きなさいよ、千早」


 語気も荒く、十野が命令口調で言った。手に持った刀をぶんと振り、ついでに足元で失神して転がっている五平の身体を蹴っ飛ばす。溜まっていた涙が、ぼとりと勢いよく落ちたが、それを拭いもしなかった。


「早く行きなさい。ひなちゃんを連れ戻してこなかったら、承知しないわよ」


 十野の言葉に、そうだよ、と数少ない女たちが口々に同意する。

「ひなちゃんは、いい子だよ」

「あたしたちは、男連中よりもよく知ってる。あの子を助けてあげな、頭」

「男だったら、自分の女房になる女を守って当り前さね」

 強気な発言に、男たちは揃って苦笑した。


「言っておくけど千早、この島はね、あんただけのもんじゃないの。あたしたちだって、ちゃんと手があって足があって、頭があるんだから」

「そうです。頼む、なんて言う必要はない。頭は、俺たちに指図をしてくれりゃいいんです。そのための頭だ、俺たちはあんたを信頼して動く。頭が戦うことを選択するのなら、俺たちも戦う」

 三左が笑みを浮かべて、十野の言葉に肯った。他の人間たちも、全員が大きく頷いた。


「行きな」

 と、何人かが同時に言った。


 胸の底が熱くなる。どう言ったらいいのか判らなくて、結局、「──ああ」と一言だけ出して、手の平でごしごしと強く顔を擦った。

「それで頭、どうやってあの船にまで行くつもりなんだい。まさか、泳いで、って言うつもりじゃないよね」

 七夜に言われ、実際に泳いでいくつもりだった千早は目を瞬いた。羽衣島の舟は、すべてこの近くの船止め場に集まっている。そこの舟を動かせば、不知火の船から丸見えだ。確かに、重たい刀を背負いながらあそこまで泳ぐのは難儀だが──

「ちょっとしっかりしてよ、頭。不知火島に偵察に行っていた俺が、どうやって今、ここにいると思ってんのさ」

 呆れたように言われ、千早は思わず指を鳴らした。


 いつも、どこからともなく現れるこの情報屋は、島を出入りする時に、船止め場を使わない。

 千早でさえも知らない場所に置かれている七夜の舟は、不知火の連中にとっても盲点に違いなかった。


 千早は素早く決断した。

「よし、案内してくれ、七夜」

「承知」

 七夜がにこっと笑った。

「十野、お前はこれから、島を回って家に残ってる女子供に声をかけるんだ。全員で、山側に向かって避難していてくれ。俺と七夜は、闇にまぎれて移動する。三左、俺がいなくなったのを、不知火のやつらに気づかれないように出来るか」

「わかった」

「はい、任せてください」

 十野と三左の返事に頷いて、千早は他の島民たちに向かって言った。

「男たちのうちで、戦う気のあるやつは、浜に残れ。それ以外のやつは、女たちと一緒に山へ向かえ。動く時は、こっそり抜けるんだぞ。こっちがバタバタしているのを、あっちに気づかせたくない」

 男たちは気負った表情で一斉に頷いた。どの顔も緊張の色が濃いが、それ以上に負けん気と闘志が漲っている。若い男たちばかりでなく、年寄り連中にも、逃げる気は毛頭なさそうだ。


 千早は、こういう彼らを心から誇らしく思う。

 死なせるもんか。この島の人々も、ひなも。


「……か、頭」

 か細い声に目を向けると、そこには二太と三太の兄弟が小さな頭を並べていた。

「どうした? お前らも、八重や十野と一緒に、ちゃんと山のほうへ行くんだぞ」

 身を屈めてその頭に手の平を置くと、今まで精一杯我慢していたのだろう、二人はぽろぽろと涙を落とした。わななくその口から出てきたのは、震えるような懇願だった。


「頭……コ、コハクを、許してあげて」

「コハク、いいやつなんだ。きっと、何か理由があるんだよ。ひなのことだって、俺たちと同じくらい、好きだったんだよ」


 だから、お願い、コハクを殺さないで──と、声を押し殺して泣きじゃくる。いつもは無邪気で陽気な兄弟だけに、その姿はなおさら痛ましかった。

 千早は二人の頭を、一回ずつ、ぽんと叩いた。

「子供を斬るほど、落ちぶれちゃいねえよ。尻のひとつは叩いてやるかもしれねえけどな」

 泣き続ける二太と三太の身体を、八重が自分の腕で抱えた。そして、真っ直ぐに千早を向く。

「千早……いや、頭」

「よせよ、千早でいいよ」

 八重に頭と呼ばれると、なんだかむずがゆい。

「ひなちゃんを、助けておくれね。あの子を、またこの島に戻しておくれ」

 頼むね、と、八重は真剣な表情で言った。


「……ああ」

 千早はその目をしっかりと見返し、返事をした。

 ちらりと後ろを振り返り、不知火の船を見る。


(──帰ってこい、ひな)

 心の中で、呟いた。



 みんな、お前の帰りを待ってる。

 お前がずっと求め続けていた「居場所」が、ここにある。





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