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Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
組織・悪党
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第75話

 今日は火曜日。現在は5時間目の授業時間だ。

 私──高田鏡華にとって退屈な授業なのは間違いなかった。

 外を見ると伊集院のクラスが体育をしていた。サッカーだ。2チームに分かれているが、両チーム11人に達していないのかは仕方がないだろう。現在押してるのは当然の如く伊集院がいる方のチームだ。

 伊集院風麿には明晰な頭脳による驚異的計算能力と記憶力と物理的法則への理解力があり、これらによる極めて未来予知に近い未来予測ができる。所謂天才だ。もっとも頭がアレな人や『悪意』によって歪んだ人や物には通じない傾向があるようだがな。

 まあ、運動能力がずば抜けていなくてもそんな奴がいる方のチームが勝つのは必然。そもそも伊集院とは自分の欲望に才能を無駄使いするような奴であり、問題を解答したり法則を解明するより遊びで勝つためやゲームの内部計算を解明したりするような奴だ。

 よく見ると情報屋である金石柳太郎も伊集院と同じチームだ。相手チームにはサッカー部員が数人──むしろ偏っているようだがあの程度の実力では何人集まっても伊集院のチームは止まらないだろう。

 ふと廊下から足音が聞こえた。抜き足差し足忍び足と意識して足音を消している。上履きを履かず、靴下で歩く徹底ぶりだ。そして教室のドアが開く音がした。無論、この教室のドアが開いたワケではない。他の教室のドアが開いた。これも意識して音を小さくするためゆっくり開けているらしい。

 そのドアが開けられている教室はこの教室から一つ教室を挟んだ教室──伊集院、晴恋、金石が在籍しているクラスの教室だ。

 私は外を見て伊集院のクラスの男子の数を数えた。今日は誰一人休んでいないようで男子は全員いる。違うの教室のドアが開く音がしなかったので他のクラスの生徒という事もない。後は伊集院のクラスの女子の誰かだろうが……そもそも足音が男子だったため女子ではないだろう。つまり今日出席した一年以外の男子なのだろう。

 目的は盗難か?

 しかし、財布や貴重品は体育が始まる前に体育委員がクラスから集めて袋に入れて職員室に置いておく。そのため、この線は薄い。後は……まあ、クラスの誰か私物。女子は更衣室で着替えるため、服の類はないが他の物はまあ、色々ある。後は男子の私物……。確かに男子の制服とかは置いてあるが……。

 まあ、何にしても気持ち悪い盗難者だな。

 実際、人事なので動く気になれない。

 盗難者│(推測)は時間にしてそこまで長く滞在してるわけもなく、再び音を消して帰って行く。

 果たして盗難者│(推測)は何を盗んだのだろう? ここの生徒ならばこの時間はむしろ財布や貴重品がないのは明白だから外部犯だろう。しかし、他に目的があるならば? 携帯電話は貴重品の範疇に入らないため回収されない。携帯電話は個人情報の塊だからな~。

 私は何かが思考に引っかかる。


「あ……」


 そして外にいるある人物を見てすべてが繋がった。そして小さく声を漏らした。

 伊集院のクラスの体育の時間……。貴重品以外の物品……。上履きを履いていない理由……。情報……。そして、金石柳太郎……。

 ヤバい! のんびりしてる場合じゃないぞ! 奴の狙いは金石の情報ノートか!

 授業──というより今日は5時間目で学校は終わりだ。それまで後5分、正直待っていられる時間ではなかった。

 私はバッグから携帯と財布を取り出してから立ち上がる。

 クラスメイトや先生が私を見るがそんな事を気にしている余裕はない。

 私は即座に動き教室から出た。私は廊下に出るとすぐ様走り、階段を下りて、下駄箱で靴に履き替える。先生に捕まると面倒なので、おそらく盗難者と同じルートで学校の敷地から出る。

 近くにそれらしい人物はいない。


「どこへ行った?」


 盗難者の足音は聞こえない。

 しかし、私の耳に呼吸音が聞こえた。どうも息を潜めているワケではないらしいが、どうも不自然に音源が低い気がした。

 私は呼吸音が聞こえる曲がり角の影を見る。

 そこには夕山学園の制服を着た男子が倒れていた。


「夕学の生徒か……。珍しいな」


 夕山学園。4校の一つであり、私立のセレブ校だ。あそこは基本的に寮生であり、節目の長期休み以外は学園を出る事が許されない。規則が厳しい学校と聞いている。


「それが盗難か……」


 足音の特徴から推測した体格と実物の体格がほぼ一致しているため間違いなく犯人だ。


「最近噂で風紀が乱れているとは聞いていたが……」


 この男子も間違いなく金持ちのお坊ちゃんである。

 まあ、そんな事より私は金石のノートを探す。思った通りないわけだ。


「期待はしてなかったがな。なるほど……横盗りされたわけか」


 つまり、計画的犯行か。


「足取りがなくなったな。今ノートを持ってる奴がどんな奴かわからなくなった」


 とりあえずここはコイツが目覚めるのを待つしかないか……。

 その時、後ろから誰かが近づいたのが聞こえた。振り返るとそこには女子が立っていた。

 女子は黒髪を三つ編みを作り下ろしている。何より──


「珍しいな。まさか夕学の奴に2人も会うとはな」

「はい、間違いなく私は夕山学園の生徒です。名前は御神楽明日実。あなたが羅刹女──高田鏡華さんですか?」

「まあな……。言っとくがコイツを倒したのは私じゃないぞ」 

「わかってますよ。そもそもこちらも犯人はわかってますから」

「あんた達も犯人だろう?」


 私が嫌味を言うと女子は不機嫌な表情になる。


「今、金石柳太郎様の情報ノートを持っている犯人は悪党です」

「あんた達の事か?」

「違います。夜山中学の内部勢力──実質夜山中学そのものといえる組織の事です」

「へぇ……」


 果たしてこの女子はそんな事を私に話してどうするのだろうか?

 どっちにしても犯人の行方がわからないし、この女子は今回の一件に間違いなく噛んでる以上、その悪党とやらが犯人だろうとこの女子が犯人だろうと話しくらい聞くか。ちょうど足取りもないしな。


「悪党。夜山中学を主な活動拠点としています。リーダーは大倉黄葉。首悪の性悪という人間です」

「性悪? ふ~ん……」


 性悪が一枚噛んでるのか。

 夏休みに起こった校内生徒が『悪意』によって思考が歪んだ6人に次々と暴行された事件。結局、あの時は私があの悪感情が湧き上がる言語を放送室から流し、私を含めて全員気絶させた事で制圧した。その事件の時に会った3年生の喜界島翡翠とかいう必要悪の性悪の男子を思い出す。

 あの時以降会っていない。理由としては探したがその男子は夏休みに転校したらしい。金石ですらその所在を掴めなかった。


「そんな事を私に教えてどうするんだ?」

「こちらの考えとしては悪党にその情報ノートが渡るのは非常にマズいんです。しかもそのトップが性悪と来たら最悪以外何ものでもありません。仮に面倒な事に私が所属する勢力が悪党と校争する場合、トップ同士が互角でも勢力差は圧倒的にこちらが不利。ならばここは私達は退き、金石柳太郎様の情報ノートを元鞘に戻すのがこちらの被害が一番少ないですから」


 そういう事か……。

 やっぱりこの女子もどこかの一派の所属か。

 嘘を言っている感じではなかったが、晴恋の嘘破りと違い私の嘘を見抜く──この場合聞き抜くだが、そもそも既に金石のノートがこの女子の一派に既に渡っていて私と昼中に悪党とやらをぶつけ合わせようとしている可能性も否めない。

 しかし、まあ──


「乗ってやろう。私もその性悪には聞きたい事があるからな。正しだ。仮にあんた達の元に情報ノートがあるとわかったらそっちに矛先を向けるぞ」

「それは面倒ですね。昼中文芸部は私達の勢力──他の勢力からも要注意勢力とされてますから」

「ふ~ん」

「それでは私は戻ります。そちらの方は放置しといて構いません。後で他の方が回収しますから」

「最初から放置するつもりだ」

「そうですか。それでは……」


 女子は踵を返し去って行った。

 金石の情報ノート。全貌は知らないがその情報量は凄まじい。仮にあれが他の手の者に渡れば間違いなく禄な事にならないな。


「悪党。夜中生徒のほとんどが所属する勢力。あそこの生徒は確か700人を超えたはずだ。これは私でも喧嘩して勝つのは無理な数だ。しかも相手のトップは性悪。状況は最悪だ。だけど──」


 私は携帯の時計を確認する。

 既に授業は終わっている。


「全滅は無理でも金石のノートくらいは取り返せるだろう」


 私は走って駅に向かった。


素手で700人とか無理ですね(断言) 700人全員手負いでも無理ですね(断言)


今まで情報屋金石の情報ノートが無事だった事にツッコんではいけない

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