第71話
別の学校視点は2回目
今回は異能力者が多く在籍する夜山中学
大倉 黄葉 : おおくら もみじ
徳山 雲雪 : とくやま くもゆき
鹿屋 糸乃 : かのや しの
私の学校には化け物が2人いる。
一人は9の目の超能力を持つ男『北見蓮十郎』。
そして2人目は夜山中学の最大勢力悪党のリーダーにしてカリスマ『大倉黄葉』。
そして今日、新たな3人目として転校して来るはずの女子生徒『名前はまだわからない』。
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私は夜山中学に到着した。周りを見回しても登校している人数は少ない。理由は朝早いから。
私の名前は徳山雲雪。2年3組に在籍する女子。長い髪はボサボサ、疲れているような顔とすごい隈だ。友達は可愛い顔とは言うけどお世辞だと思う。
そもそもなんで私が朝早く登校したかというと遅刻するのが嫌だったから。例えば遅刻はしなくてもちょうどいい時間に家を出たとしよう。もし登校途中で道に迷ってる人に親切したとしたら遅刻するのは確実でしょ。その点朝早くに登校すればそんな人に会うなんて滅多になく遅刻する事もない。
何事もなく2階にある自分の教室に着く。私は席に着くと携帯電話で電話をかける。
『よお、どうした徳さん』
「困ってると思いまして」
私は電話の相手が困ってると考えて電話をかけた。
『ははは! そうなんだよ。ストレスと散財し過ぎて小遣いがやべーから高校の不良どもから金巻き上げてたんだよ。そしたら一人潰し損ねて逃がしちまったんだよ。援軍呼ばれてさ。流石の俺も20人相手はキツいんだよ』
「それで今逃げていると。たぶんその人達30人はいますよ」
『マジかよピンチじゃねーか。……てことでテメーも協力しろ。電話から助言でいいから。相手は30人だ。巻き上げたらかなりの額になるぞ。さっき鉄ちゃんも巻き込んだからさ、3人で派手に山分けといこうじゃん?』
私は財布の中を確認する。1000円しか入ってない。
少ないな~。
「……わかりました」
『協力してくれるのか! サンキューな!』
「あなたは『悪党』のリーダーですよ。部下がリーダーに従うのは当たり前じゃないですか」
私は不気味にニヤリと笑う。
終わったようだ。電話越しに聞こえた金属バットで頭を殴る音や壁に叩きつける音が聞こえなくなった。
「どうでした?」
『すげーぞ。ザッと数えて29万はある。俺達が一万多くもらっていいか?』
「まあ、リーダー達は危険な目に遭ってたんだしそのくらいはいいですよ」
安全な場所から助言。楽な仕事だ。まあ、現場に行っても足手まといだから仕方ない。リーダー曰わく適材適所だ。
『とりあえず俺達は今からゲーセン行くから今日はサボるわ。もしかしたら昼頃行くかもしれねーけど』
リーダーは今の通り運動神経が良くて、さらに頭が良い。成績優秀な以上、学校サボっても誰も文句は言わない。
「わかりました。それでは」
『お金は後で渡す。じゃあな徳さん』
「はい。後、この時間はまだゲーセンやってませんよ」
そう言って私は通話を切った。
普通の人は暴力を振るってお金を巻き上げるのは悪い事と言うと思う。だけど私達は悪い事をする集団だ。リーダー曰わく、善なんていうのは法によってただ悪が抑圧されているに過ぎないらしい。善と抑圧される悪、これらのバランスを絶妙に調整する人こそが支配者に向いているらしい。話しを戻すと仲間じゃない善良な人間からお金を巻き上げるのは心が痛むから悪いけど、仲間じゃない不良からお金を巻き上げるのは心が痛まないから別に良いとか。
「終わったかしら?」
私は後ろから肩に手を置かれると女子が私の顔を覗き込んで来た。
「あっ、おはようございます。糸乃さん」
「ええ、おはよう雲雪」
可愛い垂れ目が特徴的で、長い茶髪を二つに縛り下ろしている。そして無駄にスタイルが良い女子。私の友達にして同じ悪党のメンバー鹿屋糸乃だ。リーダーの幼馴染みらしい。
「相変わらず早いわね」
「遅刻しないために早く家を出たましたから」
「まったく……相変わらずネガティブね」
仕方ないじゃん。そういう性分なんだから。
「そういえば今日は転校生が来るんでしたわね。どんな人が来るのかしら?」
「化け物だと思いますよ」
糸乃さんの独り言に私は窓の外に視線を持って行って答えた。
「化け物って……」
「私には北見さんやリーダーと同じような化け物クラスが転校して来る未来が見えますよ~」
「雲雪がそう言うんならそうなんでしょうね……」
私の考えでは最悪の事態にはならないから安心しなよ。
「そういえば黄葉は学校来るのかしら?」
「午後は来るかもしれないみたいな事言ってましたよ」
「まったく自由人ね」
「あの人は特別ですからね~。それは糸乃さんが一番わかってるんじゃないですか?」
「そうね……」
幼馴染みだからこそ長い付き合いだからこそ長く付き合えば付き合っている糸乃さんはリーダーが特別だとわかっている。
やがて教室に先生が入って来る。日直が号令をかけて挨拶する。
「はい、注目。今日はなんと転校生が来る」
みんな知らけている。当然だ。みんな知ってるからね。この教室の生徒はみんな悪党に所属している。転校生の情報くらい広まっている。しかし、どんな転校生が来るかは期待している。転校生の情報はあっても転校生自身の情報は伝わっていないから。
「入って来ていいぞ」
先生の合図で教室に入って来たのは赤毛のミディアムヘアをサイドテールにした少女。目鼻立ちが整っていて翡翠のような瞳が映える。
男子も女子もただ黙っている。
「それじゃ自己紹介を」
私達の態度に不審に思いながらも先生は転校生に促す。転校生は一言、はい、と答えて私達に向けて言葉を紡ぐ。
「東宮美優と言います。よろしくお願いします!」
可愛い元気な声が教室に響く。
「えーと、東宮さんの席はそこの疲れが滲み出てる女子の隣りの席ね」
先生、事実とはいえオブラートに包め。
東宮さんは教室を見渡すと私を見止める。迷いもなく視線が私を射る。
「はい。わかりました」
東宮さんは先生に返事をし、真っ直ぐこちらに歩いて来る。机の上にバッグを置き席に座る。そして私の方に顔を向けて愛想のある笑みを浮かべて言う。
「よろしくね。え~と……」
「徳山雲雪」
「よろしくね! くもちゃん」
私の脳裏に八本足のあれが浮かんだ。顔を東宮さんに向けて言う。
「よろしくお願いします。東宮さん」
チラッと視界に糸乃さんが映る。糸乃さんは頬を紅潮させ目をトロンとさせて色っぽく呼吸を乱している。
ゲッ! マジか!
どうやらこの女は私の考え通りリーダーや北見さんと同格の化け物か……。
「どうしたの?」
「なんでもありません」
「そう」
私は糸乃さんを視界から外し前を向く。
私が糸乃さんを見て東宮さんが化け物だと確信した理由がある。
あんな状態の糸乃さんを見るの久しぶりだね。
「ところで……」
東宮さんが言った。私も東宮さんも前を向いているため私に言ったかわからない。たぶん私に言ったんだろうとは思うが違っていたら恥ずかしいので聞こえない振りをした。しかし、尚も東宮さんを続ける。
「この学校には生まれながらにして悪──性悪│(せいあく)な人がいると聞いてるんだけど知ってる?」
私は驚きに言葉を出しそうになる。
知ってるも何も……。
それは『悪党』の──私の所属する勢力のリーダーの事だ。




