表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
イベント・『悪意』オークション
79/86

第70話 表

 月曜日の放課後、私は会議室に向けて歩いている。

 先生から呼び出しをされたのは昼休みの時だ。呼び出された理由はあれしかないな。誘拐事件を解決した事に対する表彰だろう。それ以外に理由を思いつかない。

 まあ、それにしたら妙だ。

 なぜならあの誘拐事件を解決したのは私だけではなく月見、原山、金石、寺スも事件解決の立役者だ。

 もしかして叱られるのか? まさか! 最近は別にそんな呼び出しをされるような事はしてないぞ。

 そんな事を考えながら私は会議室の扉の前に立ちノックする。すぐに中にいる先生から入るように言われたため会議室に入る。先生達は険しい表情で私を見ている。とりあえず誉められるために呼び出されたわけではない事はわかった。


「とりあえず椅子に座りなさい」


 長テーブルが椅子を真ん中に四角で囲い扉側だけ開いている形である。私はおとなしく椅子に座る。

 いつもは呼び出されても職員室で叱られるくらいだが、この形で呼び出されるのは始めてだ。


「高田、お前はなんで今日呼び出されたかわかっているのか?」


 私は先生の問いにおずおずと答える。


「えっと……誘拐事件を解決したから呼び出されたんですか?」


 先生が勢い良く机を叩く。静寂な部屋に大きな音が響く。


「そんなわけないだろ!」


 わかってます。言ってみただけです。

 とりあえずわからないものはわからないので質問する。


「なぜ私は呼び出されたのでしょうか?」


 私の質問に女の先生が答える。


「この一週間のあなたの素行について匿名の告発がありました。高田鏡華さん、あなたは滝沢月見、シオン=オルコール、原山大樹、中山晴恋、一条璃子と不純異性交友および不純同性交友を働いた疑いがかかっています」


 不純異性交友って……不純同性交友って……。不純同性交友ってそんな単語初めて聞いたぞ……。何だこれ?

 とりあえずそんな言われ方は不本意なので言葉を返す。


「不純異性交友、不純同性交友と言いますけど別に友達と遊ぶのなんて普通でしょう?」

「これを見てもまだそんな事言えますか?」


 女の先生は封筒から数枚の写真を取り出し長テーブルを回り私の側まで来ると私にその写真を渡す。私は渡された数枚の写真を見る。

 言葉を失った。

 それは公園で私と月見がキスしているように見える写真、私がシオンを襲っているように見える写真、教室で私が身を乗り出して原山とキスしているように見える写真、晴恋を抱きしめている写真、観覧車の中で璃子とキスしようとしている写真。

 よくもまあここまで捏造写真を撮れるものだ。しかしこの程度で不純交友とは言いがかりもいいところではなかろうか?

 しかもその5枚の内3枚どちらかというと被害者は私だしな。問題は璃子の写真だけは加害者は私だという事だ。別に私自身は被害者とも加害者とも思ってないけれど。しかし、今の立場だと明らかに悪者扱いだ。正直、璃子の写真以外で加害者扱いは不本意だ。そもそも問題はこの写真の出所だろう。

 原山との捏造写真を見てあの時の違和感の正体がわかった。職員室に原山の課題を渡しに行った前と後での教室の違和感がわかった。教室後ろの一つ開いていたロッカーが閉まっていて何か変な音が聞こえたのはそういう事だ。写真の角度もちょうどそのロッカーの位置からのものだ。

 という事はだ。告発者というより盗撮者は内部──つまり昼山中の生徒の可能性が非常に高い。それに関しては原山との捏造写真から多くの事が導き出せる。

 まずは盗撮者が直接カメラを手に持ち盗撮しなかった理由は私の耳の良さを知っていたからだ。また、他校生なら制服だろうと私服だろうと目立つ。あの時間ならたくさんの生徒がまだ残っていたしな。それにその日確実に私と原山が教室に残っていると知る事ができる人物も限られる。これらの事から盗撮者は昼山中の生徒だとわかる。

 だけど目的と理由がわからない。恨みならばわかりやすい。直接手を出さないでこういう形での仕返しという意味では有効だと言わざるを得ない。面倒だし認めるのは簡単だ。そうすれば相手の恨みも晴れるだろう。だが目的と理由、そして盗撮者と告発者が結び付いていなければ別の問題が浮上する。もし盗撮者と告発者が別ならば盗撮者の目的が見えない。金目的ならともかく、璃子の写真は手がかかっている。璃子との写真は角度から察すると私達が乗っていた一つ後のゴンドラだ。あの遊園地はなんだかんだで中学生のお小遣いから考えるとかなり高い。正直、お金と時間をかけ過ぎている感じがする。仮に盗撮者と告発者が別人の場合、盗撮者がお金目的以外で情報を渡す理由がない。そもそも告発したいなら金石と情報を交換する方が余程安く済む。

 ただこの告発が恨みにしろ別に目的があるにしろもう少し先生達から情報を引き出して背景を探る必要がある。そもそもこの告発自体が違和感がかなりあるからな。

 ちょうど璃子達も会議室のすぐ外に来たみたいだし、私は先生達に言う。


「事情はわかりました。質問いいですか?」

「なんですか?」

「そもそもこれは明らかに盗撮ですよね? という事は滝沢さんや一条さんから話を聞いてこれが事実だという裏は取れてるんですよね?」

「お答えする必要はありません」


 そんな事だろうと思っていた。私は廊下にいる璃子、月見、晴恋達の言葉に耳を傾ける。


『聞いてないよ』


 月見は私が先生達にした質問に答える。先生達には月見の声が聞こえないみたいだけどな。とりあえず声が聞こえた事を外の3人に知らせる。


「わかりました。聞いてないんですね」

「教える必要はない」

『晴恋、一条さん、今くらいの声で鏡華に声が聞こえるから鏡華が先生に質問してあなた達に答えられるようならあなた達も答えてね。晴恋は先生の嘘を見破って』

『わかった』

『おーけー。じゃあ私は今から用があるから帰るよ』


 ちょっと待て! 月見帰るのか?! あんたがいるのといないのとでは安心感が違うんだ!

 私の思いとは裏腹に月見の足音が会議室から遠ざかる音が聞こえる。

 ただ晴恋はいる。これなら先生が嘘を言っても見抜く事ができる。これで質問の幅が広がる。


「とりあえず一条さん達に事実確認を取らない事にはこれが事実という証拠になりませんよね?」


 少なくとも学校の教師陣に権力によって圧力をかけられる生徒は璃子以外にはいない。良くも悪くもここは公立の中学校だからな。


「知ったような口を聞くな! 事実の確認は取れていると言っているだろ!」


 ムカつく奴だ。


「本当に聞いたんですか? 滝沢月見にもシオン=オルコールにも原山大樹にも中山晴恋にも一条璃子、全員に聞いたんですか?」

「聞いたと言ってるだろ! 高田! お前は教師の言う事が信じられないのか?!」


 先生は机に思いきり腕を振り下ろした。私ではなく他の先生が驚いて怯える。


『みんなそんな事聞かれてないよ!』


 廊下にいる璃子が答えた。


「ちょっと抑えてくださいよ泉先生」

「そうです。高田さんが怯えています!」


 いいえ怯えてません。

 しかし被害者本人から事実確認しないなんて違和感なんてレベルじゃなくおかしい。しかもどうも先生達の態度がチグハグなのも気になる。少しカマをかけてみるか。


「白板先生、本当に一条さん達から本当に事実確認をしたんですか?」


 私はあえてこの先生達の中で気弱な女の先生に質問した。泉先生が嘘を吐いているのは確定だ。ならばその嘘を吐く目的を探る必要がある。


「高田! 白板先生は関係ないだろ!」

「どうなんですか?」


 私は泉先生の言葉を無視して白板先生に早く答えるように催促する。


「えっと私は聞いてません」

「それではどの先生が一条さん達から話しを聞いたんですか?」

「高田アァ!!」


 泉先生はうるさいな。あんたの底はとっくに知れてんだ。廊下にいる璃子と晴恋も怯えてるだろ。可哀想に……。

 とりあえずこの場にいる先生達は良くも悪くも性格がはっきり出ている。例えば、泉先生は大声出して生徒を怯えさせるような性格、今私が話している白板先生は気が弱い、さっき私に写真を渡した青森先生は生活指導担当で良くも悪くも客観的な視点を持っているし、ちょうど私の目の前の席にいる高橋先生はただの銅像だ。とりあえず一番の疑問はこの場に一年の学年主任がいない事だ。こういう場では必ず出席するもんだと思うんだが……。学年主任の日下部先生は厳しい先生ではあるがきちんと生徒の言い分も聞くし事実確認も怠らない。確か学年主任は今日は休みじゃなかったはずだ。なるほど……特に盗撮者、告発者の狙いはわからないがなんとなく背景はわかったぞ。

 誰かはわからないがやってくれたな! これはただの憂さ晴らしじゃないぞ。何か狙いがあっての呼び出したな。まさか先生達の弱みを握って脅すとはな……。やり口が月見みたいだ。まあ、月見ならそもそも他に狙いがある事も匂わせないけどな。

 そもそも手が込み過ぎている。

 ならばここで認めるのも嫌だな。成績に響くしな。ちょっとムカつく。

 さて、誰が脅された先生だろうか? 一人一人にカマかけるか? ちょうど晴恋もいるわけだし。だが今の私にそんな何度も質問する権限はない。正確には泉先生がマジ切れするまでしか質問できないというべきか。マジ切れしたら強制的に加害者認定だろう。

 とりあえず白板先生への質問の答えを聞くとしよう。


「確か泉先生……でしたよね?」


 白板先生が泉先生を見て答えた。泉先生だけか。廊下の晴恋も本当だと言っている。それならそれで次の質問をし易い。


「白板先生ありがとうございます。あの~、それで日下部先生はいないんですか? この場に学年主任がいないのはおかしいですよね?」


 さてどういう言い訳が飛び出すかな?

 立場はともかくこの場にいる先生全員が敵というわけでもなさそうだ。現にここまでやり取りを見たためか青森先生は泉先生に疑いの眼差しを向けている。泉先生は気付いていないみたいだけど。当たり前といえば当たり前だが。


「日下部先生は関係ないだろ! いい加減にしろよ高田!」

「なるほど高田さんの言葉にも一理あります」


 答えたのは2人、泉先生と青森先生。


「青森先生! 今は日下部先生は関係ないでしょう? わざわざ手を煩わせる必要もないと思いますけど?」

「それはこちらの台詞です泉先生。あなたは2年の学年主任であって一年の学年主任ではありません。そもそも今回の事件は一年の教師の管轄であって2年の教師は関係ありません。大体あなたの態度はなんですか? 高田さんの言葉に聞く耳を持たないで。そもそもなぜあなたが一年相手に事実確認を行うのですか? この事件は一年生の間でのトラブルである以上事実確認は学年主任と生活指導の仕事です。若林先生、今すぐ日下部先生を連れて来てください」


 若林先生が青森先生の指示に従い日下部先生を呼びに会議室から出て行く。璃子と晴恋は廊下で若林先生に見つかったらしいがここで待っているように言われている。


「な! 青森先生、あなたは私より生徒の言葉を信じるのか?!」

「信じる信じない以前の問題です。別に高田さんの疑いは晴れたわけではありません。しかし私は泉先生が本当に事実確認をしたかどうかも疑っています」


 私が意図したわけではないが泉先生と青森先生の間に確執が生まれた。


「青森、貴様~!」

「泉先生、素が出てます。正直底が知れますから口を閉じてた方がいいですよ」

「ふざけるな。高田は不純異性交友、不純同性交友を働いた。それでいいだろ」

「よくありません。それを今から確認するんです。あなたそれでも教師ですか?」


 青森先生に言われて泉先生が押し黙り私に対して殺意を込めて睨み付ける。それは逆恨み過ぎだろ。

 やがて学年主任の日下部先生が若林先生と璃子と晴恋を引き連れて会議室に入って来る。


「会議室の前で盗み聞きしてました」


 若林先生の言葉に2人は怯えている。普段あまり先生に呼び出されない2人だから当然といえば当然かもしれない。もともとおとなしい性格だしな。

 青森先生は2人に向けて質問する。


「中山さん、一条さん、単刀直入に聞きます。あなた達は高田さんにたぶらかされましたか?」


 璃子と晴恋はお互い顔を見合わせる。先に答えたのは晴恋だった。


「私はたぶらかされてません。……できれば盗撮された写真を見せてくれませんか? 一応確認したいです」

「どうぞ。高田さん、渡してください」


 晴恋の質問に青森先生は簡潔に答えた。私は指示された通り晴恋に写真を渡した。

 そういえば晴恋は写真に写った人間でも嘘を見破る事ができるのだろうか?

 晴恋は写真を見る。おそらく自分の写真を探すふりをして他の写真も見ている。そしてある写真に目を留めると晴恋は私と璃子を見る。見ていた写真は璃子が写っているものだった。つまり、璃子のものだけ合成でも偶然の産物ではないと見破られたという事だ。私は思わず目を逸らしてしまう。

 いや、私の嘘は最初から見破られていたか……。

 晴恋は璃子に写真を渡してから言う。


「これたぶん私が転びそうになった時に高田さんが受け止めてくれた写真です」

「その生徒は嘘を吐いている!」

「発言を許した覚えはありませんよ? 泉先生」


 晴恋に食ってかかろうとした泉先生を青森先生が止めた。


「それで、一条さんはどうですか?」


 話しを振られた璃子はビクッとすると青森先生から目をそらして言う。


「えっと! 私もただ鏡華ちゃんが転びそうになったのを受け止めただけです!」


 晴恋は目を見開いて璃子を見る。もちろんそれが嘘だからだ。しかも座ってる写真なのに転びそうになるという嘘はどうだろう?

 嘘を見破る晴恋からすると私と璃子の写真と私達の嘘に関して気が気ではないのだろう。さっきから私を見る目が心配の色に染まっている。


「転びそうになると顎に手を添えるものなんですか?」


 青森先生が私を見て言う。

 百歩譲って転びそうになって顎に手を添えてたとしても、こんな誘うように指が絡むわけない。私だってこの写真を見れば転びそうになったとは思わない。

 こういう場において長考は印象が悪い。私はすぐに考えた事を口に出す。


「そういうシーンに見える写真が撮れるとは天文学的確率ではないと思います。たまたま私が転びそうになってたまたまそういう風に撮れた写真なだけです」


 私の言葉を聞き先生達はお互い話し合いを始めた。聞いている限り今回の件は不問となりそうだ。泉先生はまだ何か喚いているが……。

 不問になるのは当たり前だ。そもそも今回の件は明確な被害者がいないのだ。被害者と思われる生徒が被害に遭っていないと否定している以上この件を掘り下げる必要はない。むしろ泉先生の不正とかが発覚して感謝される可能性もありえる。

 やがて青森先生が先生達に静かにするように言うと意見を求める。先生達の意見を総評すると問題視する必要がないという意見が多数だった。


「高田鏡華さん、この件ですが審議の結果問題はないと結論しました」


 青森先生が言った。

 まあ当然だな。私は誰とも不純な交遊してないんだからな。まったくとんだ時間の無駄遣いだな。


「それでは私達は部活に戻っていいですか?」


 私は青森先生に聞いてみる。


「待ってください高田さん。もう一つ聞きたい事があります」


 青森先生がもう一枚写真を取り出した。ものすごく悪い予感がするんだが……。


「こちらについても聞いてよろしいでしょうか?」


 青森先生が写真を私達に見せるように持つ。


「うゎ……」


 晴恋がその写真を見てそんな声を出した。そりゃそうだ。

 私は思わず絶句する。もしかしたら顔が引きつっているかもしれない。反面、泉先生は満面の笑みなわけだけれども。


「別の方からの触れ込みです。これはどのような状況ですか?」


 写真に写るのは夜に私が公園で小さい女の子の上で横になっているものだった。小さい女の子とは璃子とのデートの帰りに私の大きい男とともに後をつけていたあの女の子だ。


「これは年端もいかない女の子を押し倒している写真ですね?」

「ち、違います」


 青森先生の質問に答える。私を見る晴恋の目が若干──いや、ドン引きしている。璃子もさすがに今の返答が嘘だとわかったのか私を心配するように見ている。一気に形勢が逆転してしまった。

 マジでヤバいな……。まさかこれもとは……。


「これはちょっとした事故でして……」

「高田さんは座っている時によく転ぶのですね」


 ……さすがに同じ言い訳は使えないか。かといってあの事を言っても突拍子もなくて信じてもらえないだろうな。『悪意』の事がなかったら私だって信じないし。


「とりあえずそれは誤解なんです。えっと……その子の保護者に聞いてみてください」


 一緒について来た男……その娘の父親なら誤解を解いてくれるだろう。この場合は解じゃなくて問かもしれないが。


「この女の子の所在はこちらで掴んでいません」

「私が電話番号知ってます」


 青森先生が、確認を取る、と言うので私は電話番号を教えた。青森先生は相手先に電話して確認を取ると私に向き直り言う。


「被害者と思われる女児の保護者に確認を取ったところ事故という事ですので高田さんを解放します」

「ありがとうございます」

「しかし! 高田さん、あなたの普段の素行は目に余るものがあります」

「は?」


 私は一瞬固まる。私は普段品行方正だと思うが。最近喧嘩もしてないしな。


「廊下は走る、授業中は居眠り……この程度ならともかく7月の終わり頃は親に無断でテレビに出ましたよね」

「なんでそんな昔の事を今更?!」

「不本意ながらとある先生が動画投稿サイトでたまたまあなたがテレビ番組に出ている動画を見つけました」

「それのどこが問題なんですか?」

「未成年のあなたが親の許可なしにテレビ番組に出演するのは十分問題です。それにあなたと姫路姫都さんに関しては悪い噂が流れてます」

「私と姫……路姫都にどんな噂が流れてるんですか?」

「逆に聞きますけど高田さんと姫路さんは不純な関係じゃないんですよね?」

「不純な関係ってなんですか?! 聞いてればさっきからまるで私が加害者のような扱いしてますけど名誉毀損もいいところですよね?!」


 さすがに私もとうとうキレる。相手は先生? 知らん。

 璃子と晴恋がビックリする。すまないな2人とも。


「つまり姫路さんが加害者で高田さんが被害者という事ですか?」


 私は足を組んで答える。


「姫路さんも私も、被害者でなければ加害者でもありません。私の事はともかく姫路さんを巻き込むのはやめてください。姫路さんは私の大事な友人です。不純な関係だとか加害者だとか言う侮辱はさすがキレますよ」


 腕も組み始め、もはや先生に対する態度ではない。敬語が崩れていないだけマシだ。

 私でもわかるほど私に怯えている璃子と晴恋、先生達が大勢いる中、青森先生は素か仮面かわからないがあくまで冷静な態度を崩さない。


「なるほどわかりました。姫路さんとの関係については謝ります。しかし、無断でテレビに出演した事は許されるべき行為ではありません。それはわかりますよね?」

「そうですね」


 その辺に関しては納得もしているし理解もしているし反省もしている。後悔はしていないけど。姫都と友達になれたんだから後悔なんかするわけないだろう。


「一応この事に関しては保護者の方に連絡を入れておきます」


 マジか。確実にママに怒られるんだけど。

 あのテレビ番組「キスサバイバル」はママから見るなと言われている。見るのが駄目なら出演なんて以ての外だろう。しかし、私は多発誘拐事件を解決したんだ。その事を言えば許してくれるだろう。


「後、テレビ出演の件に関しましてはそれ相応の処分しをます」


 私は青森先生から処遇を聞き会議は終わった。




 私は璃子と晴恋とともに文芸部部室に向かっている。璃子は私が心配だからと部室まで付いて行くと言い一緒に歩いている。


「それにしても罰があの程度で済んで良かったね鏡華ちゃん」


 私はそう言った璃子を見る。

 私も別に背が特別高いわけではないが目を合わせると璃子と晴恋を少し見下ろす形となる。


「まあ、そうだな。それにしても私ってそんなに加害者みたいな顔してるか?」


 璃子と晴恋は顔を見合わる。最初に答えたのは晴恋だ。


「加害者っていうか……鏡華さんって女子と放蕩してそう」

「? うん放蕩│(?)してそう」


 放蕩って……。私、そんな風に見られてるのか? そりゃ先生から見た私の印象は最悪なはずだ。後、璃子は放蕩の意味わかってないな。


「そんなに?」

「むしろ自覚ない? だけど放蕩してるように見えるのは鏡華さんだけの所為じゃない」


 はべらせていると言われないだけマシかもしれない。


「鏡華さんに自分からはべらかされに行く女子と顎で使われても文句を言わない男子に問題がある」


 結局言われてるし……。今後ははべらせないように顎で使わないように気を付けよう。

 そうだ。忘れてた。

 私は一歩先へ進み璃子と晴恋の方へ向いて言う。


「今日はありがとう璃子、晴恋。2人のおかげで助かった」


 璃子と晴恋は顔を赤らめる。璃子は私の顔を見つめて惚け、晴恋は口に手を当ててうつむき上目遣いで同様に私の顔を見つめる。


「えっと……どうした2人とも?」


 私の問いに璃子はハッと我に返ったように慌てて答える。


「な、なんでもないよ鏡華ちゃん!」


 晴恋は私の問いを無視して口を隠し小声で言う。


「やっぱり反則……」

「何が反則?」

「今の聞こえたの?! えっと……やっぱり放蕩してるように見えるのは自業自得」

「なぜ?!」


 璃子が少し本来の顔色に話題を逸らさんとばかりに言う。


「そ、そんな事より! 小さい女の子を抱いてたってどういう事?」

「あー、それはな……なんと言ったらいいか……」


 普通ならあんな事言えば中二病とか電波などと言われるだろう。しかし、私達は既に十分奇妙な事に巻き込まれてるし、ある意味では真実を真実とたらしめる晴恋がいるから問題ないだろうと判断した私は言う。


「その女の子だが……私の昔の友達だったんだ」


 今の私の言葉を真実として認識したためか晴恋は疑問を口にする。


「いつ頃から?」

「小学校に上がる前だからもう6年くらいか? それ以来会ってなかったんだがな」

「鏡華ちゃん、それおかしくない? 写真に写ってた女の子は5歳くらいだったよ。赤ちゃんの友達って事?」


 璃子の言う通りだ。私の言葉とさっきの写真で考えると矛盾以前に計算がおかしい。晴恋も今の私の言葉が真実だと判断して困惑──というより奇妙な表情を浮かべている。確かに私の言葉とさっきの写真、晴恋の嘘破りという材料だけではこれを真と判断するにはあまりにも無謀だ。しかし、ここにある概念を加える事によってこれを真とできる。


「もちろん赤ちゃんの友達ではないし、女の子はまだ4歳だ。私も最初聞いた時は突拍子もないと思ったんだ。晴恋、今から私の言う言葉で真実と判断してもそれは間違いじゃないから安心していい」


 私の言葉から雰囲気を察したのか2人は黙って聞いている。


「2人は輪廻転生を信じるか?」


 唐突な言葉に璃子も晴恋も唖然としている様子。

 輪廻転生。要するに生物は死ぬとまた違う肉体となって生まれるという概念。元は仏教用語だな。

 晴恋は今の言葉でパズルが解けたような表情になる。


「まさか……嘘ですよね?」

「嘘破りの晴恋がそんな事言うなんて面白いな。だけどいっだろう? どんなに信じられなくてもそれは真実だと」

「鏡華ちゃん、晴恋ちゃん、一体どういう事……?」

「つまりだ璃子、その女の子は先程言った私の友達の生まれ変わりだという事だ」

「ええー?!!」


 そりゃそうだ。私だってそれを友達本人から聞かされて同じ反応したしな。


「奴の死に関しては私自身あまり言いたくないから省くけど、確かに私自身幼少の頃の記憶を一生懸命掘り起こして色々確認したから間違いない」


 友達の死こそがある意味であの写真のような状況になった理由だけがな。

 晴恋が質問を私にぶつける。


「そんな偶然が重なるもの?」


 何に関して偶然と言っているのかイマイチ判断できないが私は答える。


「少なくとも私とその女の子が会ったのは偶然ではない。むしろ友達ではなくその女の子自身が直接私に接触を謀って来たからな」


 そう、私に接触を謀って来たのは人格というべきだろうかわからないが友達の人格ではなくあくまで女の子自身の人格だった。


「それに前世の記憶があるというのも偶然と言っていいか甚だ疑問だ。ある側面から考えればこれも偶然かもしれないが」

「どういう事?」

「もしかしたら転生なんかよりこっちの方が信じられんかもしれんな。私としては転生やら前世の記憶やらよりこっちの方が信じられないからな」


 璃子と晴恋は興味により目を輝かせていた。どうやら私の次の言葉を待っているらしい。


「強制的前世記憶想起実験」


 私の言葉に2人は疑問を持っているようだ。


「つまりだ。強制的に前世の記憶を蘇らせる実験があるらしい。あの女の子はその実験の被験者だったらしい」


 詳しい事はこのくらいしか教えてもらってないが、女の子の存在が実験の存在が本当にあると証明してしまっている。


「小説でマッドサイエティストな登場人物がやりそうな実験」


 晴恋がそんな事を言った。私も最初に聞いた時同じような感想を持った。冗談だと思ったから。

 偶然前世の記憶があったわけでも蘇ったわけでもなく、無理矢理前世の記憶を掘り起こしたら偶然にも掘り起こせてしまった。偶然と言っていいのか悪いのか……。


「とてもじゃないけどまともな方法で実験してたとは思えないね」

「内容を聞かせてもらえない辺りまともじゃないだろうな。つまりあの写真の状況は泣いて抱きついたらたまたま押し倒してしまっただけだ」


 嘘は言ってない。詳しい理由を言っていないだけだから晴恋も嘘と見破らない。だけど理由を聞かないのも空気を読んでくれたからかもしれない。なんにしても聞いて来ないのはありがたい。

 いや……2人の顔を見ている限り今の話が衝撃的でそんな事を言う余裕がないだけか?


「とりあえず活動時間もあと少ししかないけど文芸部へ行こう! 文芸部へ行くのも6日ぶりだ」


 私と晴恋はこのまま文芸部へ行き、璃子は演劇部へ向かった。

 しかし、文芸部には部長と寺ス以外──月見、シオン、伊集院、原山はいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ