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Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
イベント・『悪意』オークション
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第69話 6人目裏

 今日は高田さんと一条さんのデート日か。

 僕と高田さんのデート日になるはずだった日の翌日。僕──伊集院風麿は原山君に呼び出され、またもや駅前で原山君とシオンを待っていた。しかし、今回は遊びじゃない。今日、僕と原山君とシオンは朝山学園に乗り込む。理由としてはオークションの招待状を取り戻すためだ。そのため日曜日だというのに今日は制服で集合だ。

 ちなみに当の滝沢さんはわざわざモデルの仕事を休み僕達とは違うアプローチで招待状を手に入れようと試みている。つまり、誰かに招待状を譲ってもらおうという訳だ。滝沢さん自身はあまり期待していないようだけれど。

 ちなみに僕達から招待状を盗んだ人の能力は既に看板している。その能力とは『悪意』によって歪んだ才能──相手の目を掠める才能だ。その才能は凄まじいと云わざるを得ない。少なくとも僕達4人の目を招待状に手を触れるまで掠めたのだから。逆に高田さんがいれば強奪を防げたかもしれない。彼女は目より耳の方が良いから。

 問題は相手が芸能科の生徒だという点だろう。芸能人は仕事故に学校を休む事も珍しくない。盗んだ人がどの程度仕事が忙しいかは知らないけどね。少なくとも僕はあの人を知らない。

 考え事をしている間にシオンと、シオンと話しをしている間に原山君と合流した。

 朝山学園に向かう間にそれぞれ集めた情報を提示した。


「悪いけど僕は情報は何も集めてないよ。お母さんがパソコン占領してたからね」


 僕がそう言うと原山君とシオンは役立たずを見るような目で僕を見る。

 そもそも君達はちゃんと情報を集めたのかい? と言いたい。


「私は彼のブログを見つけました」


 いきなり功労賞ものの働きだね。


「顔を見ただけでブログを見つけたのかい?」

「はい? 私は名前も見ましたよ。透視でポケットに入ってた生徒手帳を」

「え? それズルくない?」


 シオンはバッグの中からメモ用紙を取り出した。


「えーと……名前は赤地九龍。芸名は赤地明涙というらしいです」


 普通に本名の方がカッコいいと思う。


「ブログの日記によると今日はオフらしいです」

「赤地は確か今日は補習で学校だ」

「原山君、なんでそんな事知ってるんだい?」

「金石に聞いたからな」


 その手があったか!

 シオンも同じような表情をしている。原山君が続ける。


「あの泥棒は芸能科所属で2年2組だ。芸能科での身分は中堅、実力はあるが知名度はないタイプだな。まあ、こんな事問題じゃないんだがな」

「どういう事だい?」

「金石の話だと朝山学園内で妙な動きがあるらしい。あそこはそれぞれが掲げている方針故に芸能科と芸術科は犬猿の仲だ。内部の争いなんて日常茶飯事、朝山学園にいる芸術科のルーラーの友達いるだろ?」


 ルーラーとは高田さんの事だ。所謂原山君特有のコードネームみたいなものだ。


「俺達はその争いを電話越しに聞いていた通り内部争いが頻繁に起こっている。だけどどうやら最近内部争いに新たな勢力が加わった。芸能科と芸術科の生徒が手を組んだ徒党だ」

「へぇ~、芸能と芸術のチームか。あえて名前を付けるとしたらエンターテイメント・アーティストと言ったところかな?」

「わざわざ英語にする必要ないだろ。芸能術科とかでいいだろ」

「君らしくもないネーミングだね」

「語感がカッコ良くないんだよ。ラプラスデーモン、お前は確かに天才かもしれないがその手の才能はないな」


 才能がない認定くらったちゃったよ。ちなみにラプラスデーモンとは原山君特有の僕のコードネームだ。確かシオンはエスパーガールだったかな。そのシオンは怪訝な表情で僕達を見ている。留学生には難しい話題だったかな?


「まあそれは置いといてだ……。赤地はその徒党に属してるんだ」

「そもそも疑問なんだけどなんでそんな徒党が現れたんだい?」

「事のきっかけは鈴木楽園が姫路姫都を助けたからみたいだな。その事件は朝山学園の中で広まったわけだ。芸術科の生徒が公開処刑されている芸能科の生徒を助けたのは史上初の事らしくてな、それでお互いの目的はどうあれ徒党を組む生徒が多くなったらしい」


 原山君はオーバーに言っているがただ違う学科にいる人達が友達になってるだけだね。


「そして赤地が属しているのは徒党の中でも一番大きい徒党。なんでも芸能科のナンバー3と芸術科のナンバー2が中心となって組んでいるらしいからな」


 ナンバーワンを目指す芸能科とオンリーワンを目指す芸術科、どちらの目標も本質は他人との繋がりを否定する目標だ。そんなナンバーワンとオンリーワンが組むという事だ。


「ふむ、確かにそんな人達が集まってたらヤバいね。『悪意』で歪んだ人もいるだろうし。だけど不幸中の幸いにも今日は日曜日だから大半の生徒は休みだろうね」

「ああ、この状況は俺達にとって好都合だ。さっさと赤地に接触して取り返すぞ!」


 僕達は勢い良く、オー! と言った。




 僕達は朝山学園の敷地へと潜入を果たした。校門から堂々と。

 僕達は校舎から少し離れた所に立っている。シオンが透視で赤地を探しているからだ。


「シオン、何か見えたか?」

「日曜日だけど人が多いですね」

「赤地はいたか?」

「いえ、見えないですね。どうやら死角にいるみたいです」


 シオンの透視の死角にさえ入る。これが才能というものだ。

 そもそも赤地の才能は視覚に頼る相手ほど強力なのだ。ある意味、普通の人よりさらに一つ上の次元の視覚を持つ魔眼持ちやエスパーには天敵ともいうべき人だ。


「仕方ない。地道に探すしかないね」


 こう言ってはなんだけど僕達3人にとって赤地は天敵だ。『悪意』が絡んでいるから僕の計算予測は効かないし、先程言った通りシオンの透視の死角にも入るし、原山君も鳥に憑依しても鳥の視覚に頼るから。

 僕達は校舎に潜入した。

 さすがは私立だけあって公立の昼山中とは比べものにならないくらい綺麗だ。教室の中もチラホラと見るが既に机からランクが違う。


「いないね~」

「いませんね~」

「いねーな~」


 一階にはいなかった。やはり補習だから赤地は自分の教室にいるのだろう。階段を上り2階に来ると2年3組の教室から物音が聞こえた。僕達は扉に付いている窓から中を見た。そこには昨日僕達から盗んだ張本人とその他の人達がプリントの問題を解いている最中だった。どうやら課題をやる方式の補習らしいね。


「おいおい! あの人はあの双子子役の片割れの安堂愛左門じゃねーか!」

「風麿! 大樹! あの人あの人、パニーズの相羽清貴ですよ!」

「見てよ! あの人、都会のどっかの駅か忘れたけど駅前のビルですごく大きく広告出した事で話題になってたファッションモデルじゃない?」


 モデルの名前は確か川崎未来、有名な中学生モデルの中では滝沢さんと人気を2分するとかしないとか高田さんが言ってた。


「て、そんな事言ってる場合ではありません! どうします?」


 シオンの言葉に僕達も我に帰る。とりあえずこの補習が終わるのを待つという事になった。

 大体20分後くらいに教室にいる生徒達は筆を置き、教卓の上にプリントを置いて帰る支度をしている。

 それを見ていた僕達が教室を覗くと異変に気づいた。


「赤地いなくなってるじゃねーか!」

「原山君落ち着いて」


 原山君が声をあげる。さすがに騒がしいかったからか教室にいる生徒達が僕達を見ている。


「どうも失礼しました~」


 僕は敬語で謝罪をして教室から離れ階段の踊場に来る。


「原山君目立つのはマズいって! そうでなくても僕達はアウェーなのに」

「すまん……」


 しかし、ただあの教室の中で赤地は僕達の死角にいただけかもしれない。だけど赤地が動き出したら僕達は見つける事ができない。

 こうなったら計算で見つけ出してやる!

 僕は俯いて考える。教室を出発位置を起点に今の位置を……。


「どうしたんですか風麿?」

「ごめんシオン、今計算中だから話しかけないで」

「はい」


 早い話が視覚の範囲を基準に計算するから赤地の位置が計算できない。ならばもっと大雑把な位置を計算する。視覚の死角を計算するのではなくて通常は決して見る事ができない視覚の範囲外。死角ではない不確定である壁の先、箱の中、遠い所、こちらからは見えない視界。

 やがて僕は赤地の位置を計算し終える。


「原山君、シオン、赤地は2年5組の教室だ」

「え? 伊集院、お前位置を計算できるのか?!」

「そうです! 赤地は死角に入るのですよ?」

「確かに赤地は死角に入るよ。だけど僕の視覚はあくまで目に映るものだけさ。僕は今、階段と君達しか見えない。僕にとって壁の先や床の下や天井の上は見えない視界の死角じゃなくて決して見る事のできない不確定の世界だからね」


 あくまで僕がしたのは不確定の世界の不確定を計算して確定にしただけ。


「とにかく行こうぜ?」

「うん。だけど覚悟してね? 僕の計算では2の5にいる人は赤地だけじゃないから」


 僕の言葉に2人は息を呑んだ。




 僕達は2年5組の教室の中で多数の朝山学園の生徒に囲まれ、赤地と対峙していた。

 緊張感が場を支配する中で原山君が赤地に言う。


「赤地! お前が俺達から招待状を盗んだのはわかってんだ! おとなしく返せ!」


 原山君、この圧倒的不利な状況でなんでそんなに自信があるんだい? 僕達は赤地達の37倍くらいピンチだというのに……。かくいう僕はすごく怖くて仕方ないよ。ちょっと足が震えてるしね。よく見るとシオンもかなり落ち着いている。


「まあ招待状だけなら返してやるけどね。俺達がほしかったのはあくまでチケットの方だけだからな」


 俺達? 俺達という事は単独の判断ではないという事か……。

 とりあえずわかった事は2つ、もしかしたら僕達の他にも招待状及びチケットを盗まれている可能性がある事、もう一つはオークションで大量に『悪意』に歪んだものを落札しようという事。という事は交渉相手が違う。

 僕はシオンの手に触れる。

 シオンは透視の他にもう一つ超能力を持っている。それはサイコメトリー。触れたものの思念を読み取る能力。

 シオンに僕の考えを伝える。今の僕だと恐怖のあまり話しにならないからね。僕の考えを読んだシオンは口を開く。


「とりあえず芸能科のナンバー3か芸術科のナンバー2を出してください」


 教室の中がざわめいた。どうやら徒党内の芸術と芸能のそれぞれのトップを知っている事に動揺したのだろう。


「芸術科はナンバーじゃなくてオンリーワンだ。ただなるほど……、まあいいか。お前達のいう芸術科のナンバー2はいないけど芸能科のナンバー3はいるから今呼んでやるよ」


 赤地が仲間の一人にナンバー3を呼んで来るように指示した。

 しばらくすると、やがて指示を出された人が戻って来る。ナンバー3を連れて……。


「さすがは月見と人気を2分する事はありますね。あなたが出て来るなんて……」

「あら? それは心外、私は滝沢さんほど性悪│(しょうわる)じゃないし、今日理由もなくモデル業休んだ人と違って頑張ってるからね。ただ今日滝沢さんが休んだおかげで仕事が私に回って来たから万々歳だけどね」


 なるほど……川崎未来さん……、滝沢さんに負けず劣らず性格が悪そうだね。ただまあ、確かに滝沢さんほどではないかな。滝沢さんはあれで全然全開じゃないけど、この人はこれで全開だろうし。あくまで主観の印象だけどね。

 僕はシオンの手に触れる。シオンが僕の代わりに言う。


「月見から招待状を奪ったのは月見の仕事を休ませて仕事を奪うためですか?」


 川崎は机に座り答える。


「いえ、そもそも私は滝沢さんが招待状を持っていたのも知らかったし。これに関しては偶然だし。あくまで目的はチケットだし。ただの棚ぼたかな」

「それでは招待状だけは返してくれませんか? そうすればこちらから危害は加えません。もしそちらから危害を加えた場合、こちらのバックには羅刹女がいます」


 教室の中で一部の生徒の顔が青く染まる。

 僕が見た限り同じ小学校の人達が何人かいる。僕の通っていた小学校は公立だ。つまり朝山町内の人しか通っていない。という事は高田さんの羅刹女伝説を知らないなんて事ない。しかも高田さんを直接見た事ないこの人達にとって得体の知れない畏怖の象徴だ。


「何を怯えてるの? てか羅刹女って何?」


 川崎の疑問に取り巻きの人が答える。


「この辺で有名な女ですよ。確かに彼女は強いですけど言うほど恐い人物ではありません。むしろ良い人です。後、榎宮君が姫路さんを処刑しようとしたきっかけです」

「ああ、噂の榎宮君が惚れてるって女の子ね。確かあの人も羅刹女ってのに夢中だったよね」


 どうやら僕の策は失敗に終わったらしい。

 新たに教室に人が入って来る。その人は川崎に耳打ちすると余裕の笑みを作っていた川崎の表情が強張る。それを聞き終えた川崎は溜め息を吐いて言う。


「悪いけどこっちは色々理由があってこれから用事ができたの。今日は見逃してあげるから帰っていいよ。まあ、別に教室に残ってもいいけど病院送りするから」

「はあふざけるな! これでも高田ほどじゃないが喧嘩には自信が……」


 僕とシオンは喰ってかかろうとする原山君を抑えて教室から出る。


「離せよ伊集院!」

「いやいやいくらなんでも分が悪過ぎるから! 確実に病院送りだからね!」


 あのまま暴れるのも一つの手ではあった。上手くすれば招待状くらいは確保できたかもだけどメリットに対してデメリットが大き過ぎる。しかも成功率は低いうえに言葉通り確実に病院送りだった。確かに僕達は運動能力高いけど高田さんと違って喧嘩の才能はない。つまり単純に数の少ないこちらが負ける。滝沢さんの考えた最後の策を実行するなら少なくともここで一人として誰も欠けるわけにはいかない。


「とりあえずここから早く出ましょう! 今の私達には完全に敵地です!」


 原山君は納得いかないという顔で僕達と一緒に逃げ出した。




 僕達は朝山学園を脱出すると、一応昼山町の公園まで逃げて来て一休みついでに滝沢さんの報告を待つ事にした。


「しかし僕達は本当に運が良かったよ」

「そうですね」

「すまない。ちょっと冷静でいられなかった」


 というか想像以上に朝山学園切れてる。よく姫路さんも鈴木さんもあんなところにいられるな。

 しばらくするとシオンの携帯に滝沢さんから電話がかかって来た。


「あ、月見そちらはどうでしたか? ……。えっと、こっちは失敗です。……。見つからなかったんですか? ……。そうですか! 良かったですね! それでは! ……。わかりました! それではまた明日ですね!」


 シオンは電話を切る。そして言う。


「どうやら招待状の入手には失敗したようです」


 僕と原山君はシオンの後半の嬉々とした電話対応にちょっと期待していたが駄目だったらしい。


「あ! 落ち込まないでください。入手はできませんでしたが同行はできるみたいですよ」

「それを早く言って」

「すみません。とりあえず説明は明日ゆっくりするそうです」


 僕達は明日に備えて今日は解散する事になった。


****


 この時はわからなかった。後にオークションは予想外な事が起こる事を……。

 そして高田さんの身に起こる事を……。

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