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Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
イベント・『悪意』オークション
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第69話 4人目

 精神的に疲れ気味なデート4日目、つまり4人目だ。月見とシオンとのデートが色々衝撃的過ぎたからか、原山とのデートが一番精神的に楽だった。思い出したら勉強と買い物と料理しかしてないからだな。

 今は放課後。さて今日は待ってろと指示されたが自分から迎えに行く事にする。シオンの時はこの前の誘拐事件をあまり引きずっていなかったが、今日の相手はアフターケアが必要かもしれない。顔を殴られてたしな。まあ、アフターケアの必要がなければそれはそれで良い。

 私はバッグを持ち教室から出る。


「あっ……」

「やあ、晴恋。迎えに行こうと思ってたんだ」

「そう。ありがとう鏡華さん」


 晴恋は上目遣いで私を見る。優しく感じる垂れ目の所為か頬のガーゼが痛々しい。晴恋はいつもの調子で言う。


「鏡華さん、どこかでゆっくり話したい。できれば誰もいないところで……聞いてほしい事がある」


 いつの間にかどこか怯えた目をしている晴恋に私は安心させるように笑みを作る。


「わかった」

「うん。じゃあ体育館裏へ」


 なぜ体育館裏?

 晴恋は私の手を握って先導する。


「晴恋、私もさすがに体育館裏の場所は知ってるぞ」

「鏡華さん、これはデート」

「そうだったな。忘れてた」


 晴恋の前では下手な嘘を吐けない。どんなに取り繕おうが偽装しようがバレるからだ。

 外履きに履き替えた私達は体育館裏に着いた。体育館の中からはバスケットボールの弾む音とバドミントンのハネを打ち返す音が聞こえる。

 体育館の扉は開いているため扉と地面を繋ぐ短い階段に座ると体育館の中から見えてしまうため体育館の壁に寄りかかり隣同士で私達は座った。やがて晴恋が言う。


「鏡華さんは伊集院君好き?」

「え? いや、友達としては好きだが」

「うん。えっと……恋愛的な意味では?」

「それなら何とも思ってないぞ」


 晴恋は安心した顔を私に見せる。私の言葉に嘘がなかったからだろう。

 そんなに好きなら告白すればいいのにな。

 しかし、晴恋は今の質問の時より不安な顔で再び言う。


「だけど……私、もう一人好きな人がいるの……」


 私が沈黙すると晴恋は続ける。


「夏休みに夜山祭り行ったよね?」

「ああ、行ったな」

「その時に友達が出来たって言ったの覚えてる?」

「覚えてるに決まってるだろう」


 夜山祭りの時の友達とは私と月見と晴恋の3人で行った時、晴恋がはぐれてその時にお世話になった友達の事だろう。私は直接会っていないが晴恋のこの言動から男らしい。


「ほう、どんな人なんだ?」


 個人的には悪くない性格以外は完璧な伊集院と天秤にかける程の男とは興味がある。


「その人は人懐っこいというかスキンシップが多くて可愛くて少し恐くてだけど頼りになる人で口がセクターでオシャレなスカーフで目隠ししてる人」


 人物像が全然イメージできない。なんとなく女性で想像してしまったが、恋愛的な意味なら男だろう。


「しかし何が問題なんだ?」

「だって好きな人がいるのにもう一人好きな人ができるなんて……」


 別にどちらが恋人というわけでもないんだから想うだけなら自由だと思うんだが……。変なところで真面目な娘だ。

 晴恋は胸を手で押さえて言う。


「あの日からあの人の事が忘れられない。こんな気持ち駄目なのに……」


 罪悪感の所為か申し訳なさそうで苦しみに染まった顔に晴恋はなっている。そんな晴恋の顔を見た私は正体不明な違和感に襲われる。しかし、私はそんな事も気にせずに言う。


「まあ、そんな事もあるだろう。気にするな」

「でも鏡華さん……」

「今の私に比べれば全然正常だから問題ないさ」


 晴恋は私の真を聞いて押し黙る。

 正直な話、月見とのデートから自分がおかしくなった。正確には本格的におかしくなった。私は昔から女の子が好きだったが、そういう好きではなかった。しかし、最近はどうも女の子もそういう好きになって来てしまった。実は晴恋とのデートも月見やシオンの時程ではないが同様にドキドキしてしまっている。


「本格的に二股でも浮気でもないんだから罪悪感なんて感じる必要はないと私は思うぞ。難だったら間を取って私を恋人にするか?」

「え……?」


 晴恋は不安げな顔から急に顔を赤くして照れ出した。


「いやいや冗談だからな」

「嘘! あ……知ってる!」


 そんな声荒げなくても……耳に響く。

 月見やシオンだったらどんな反応したんだろうか?

 私はそんな考えをかき消した。それより晴恋は今私の言葉を嘘と言った。私自身は冗談のつもりだったが本心は本当に恋人になっても良いと思ってるのだろうか? 益々自分で自分がわからなくる。

 しかしあまりデートっぽくないな。

 私は立ち上がり晴恋の前に移動する。


「晴恋、そういうのはデート相手の前で言うものじゃないぞ。だから晴恋……今からカラオケへ行こう」


 晴恋は私を見上げて肯定の笑みを見せた。私は晴恋を立たせようと手を差し出す。すると晴恋は私の顔を見て照れたように目を逸らして私の手を取る。


「ありがとう鏡華さん」

「大した事ないさ」


 ちょっとした出来心だった。私は晴恋が立ち上がると同時に掴んでいる手を引いた。晴恋は私に寄りかかる形で転ぶのを辛うじて防ぐ。


「大丈夫か? 晴恋」

「鏡華さん、わざと?」

「つい出来心で」

「転びそうになった」

「私が受け止めるから転ばないぞ。私はどうでもいい奴はどうでもいいが友達は絶対守るから」

「知ってる」


 私はガーゼをしていない方の晴恋の頬を触り言う。


「だけど守り切れなかった。ごめんね」


 ただ私は許してほしくて口調を変える。この口調はあまり人前でしない。

 晴恋は私の両頬を撫で回しながら言う。


「そんな事気にしてない。鏡華さんは気負い過ぎ。もっと自分の事考えて。原山君達がいたからってあまり無茶は駄目」

「だけど私にはそれしかできないから……。私は友達に傷付いてほしくない」

「……もしかして……鏡華さんは友達に嫌われるのが恐い?」


 私は答えたくないから沈黙する。もしそれを言葉にしたら嘘だとバレるから。


「答えたくないなら答えなくてもいい。一つ言うけど私は嫌わない。私は守ってくれる鏡華さんじゃなくて優しい鏡華さんが好きだから」

「ありがとう晴恋」

「うん。私の方も助けてくれて本当にありがとう」


 やがて晴恋は私から離れ、私の手を取る。


「鏡華さん、カラオケ行こう。私は鏡華さんの歌も好き」

「そうだな。やる事もないしな」


 私は晴恋に手を引かれ体育館裏を後にした。




 私と晴恋はカラオケへ行き、2人で思いっきり歌った。

 今は既に別れて家に帰り、バッグをリビングに放置してソファーに顔をうずめて横になっている。やがて思考を止めた状態をやめて、仰向けになって天井を見上げて呟く。


「ははっ、アフターケアのつもりが励まされたてしまったな。しかも私の恐い事まで当てるとはな。私も優しい晴恋は割と好きだ。だから今度こそ晴恋を守る。いや、みんな守ってみせるぞ。たぶん私の喧嘩の才能はこのためにあると思うから」


 そしてもう一つ気になった事。晴恋に相談を受けていた時の晴恋の苦しそうな顔をしていた時の違和感。私自身、今になってわかった。

 違和感の正体……苦しみなどとは程遠い感情を同時に顔に出ていた。その感情はおそらく──


****


 私はベッドの上で横になり今朝の事を思い出していた。

 月見さんの言っていた通り、鏡華さんは私が怪我した事に対して気負っていた。たぶん予め知らなければあんな対応できなかった。

 まさか泣き出すなんて。

 鏡華さん自身気付いていたかはわからない。涙が流れている事に気付く前に私が鏡華さんの頬に触れたから。


「明日は鏡華さんと伊集院君……」


 誰に言うわけでもなく呟いた。

 鏡華さんが伊集院君を恋愛対象として見てないのは本当。だけど伊集院君は違う。伊集院君は鏡華さんが好き。もし私が鏡華さんに頼めば明日のデートやめる? だけど私にそんな資格ない。

 私はスマフオを手に取り、名前を確認して発信ボタンをタッチする。ワンコールで目的の人物が電話に出る。


『もしもし晴恋?』

「鏡華さん……」

『どうした?』

「明日のデートやめて。じゃないと……鏡華さん嫌いになる」

『……まあ、いい。伊集院に何か言われるかもしれないが断るよ。友達が好きだとわかってるのにデートなんてするほど無神経じゃないしな。さっき直接言えば良かっただろう?』

「そうだね。ありがとう鏡華さん。ごめんなさい」

『気にするな。それじゃおやすみ』

「おやすみ」


 私は通話を切りスマフオをベッドの上に放る。

 私は罪悪感に胸が締め付けられる。そして呼吸が荒くなる。伊集院君と鏡華さんへの罪悪感が変貌し快感となり私を襲う。


「本当に私って変な子……。罪悪感が気持ちいい」


 快感に対する罪悪感がさらなる快感の波となり襲い続ける。はしたない吐息が部屋に充満する。伊集院君の思いを裏切った罪悪感、鏡華さんの嫌な言葉で脅した罪悪感、妖恋さんを想って罪悪感、快感に襲われる罪悪感が快感に変わり私を襲い続けた。

デートじゃありませんね

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