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Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
イベント・『悪意』オークション
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第68話

 無事ケモミミメイド喫茶に決まった我がクラスは早々に会議を切り上げた。そして私の所属する文芸部では璃子、月見、伊集院、シオン、晴恋、原山が円陣している。私は椅子に座り勝手に膝に座って来た見た目幼女の部長とともに成り行きを見守っている。


「日曜日は私がもらうんだから。私だって珍しく未来予知で協力したんだから」


 と璃子。


「一条さん、あなたみたいな頭がお花畑じゃ日曜日は無理だよ。みんなには悪いけど日曜日は私がもらうよ。私も人質を助けるという重要な役割を見事に成功させたんだよ」


 と月見。


「僕はとっくに僕が勝つための手は決まったよ。それに僕も誘拐犯の居場所を割り出したじゃないか。それに僕なんかわざわざアレを見せてもらうのと引き換えたのんだぜ?」


 と伊集院。


「負けません。私も鏡華と一日中遊びたいです。私も捕まっている間色々頑張りました」


 とシオン。


「みんな……日曜日は怪我人の私に譲ってくれてもいいと思う。私だって捕まってる時頑張った」


 と晴恋。


「俺だって超能力に覚醒して助けたぜ!」


 と原山。

 コイツらがなんでこんなにも真剣なのかというと一週間かけて一日に一人とデート│(という名の遊び)をする。日曜日と土曜日は学校が休みということもあり一日中私を好きにできるらしい。しかし、月曜日から金曜日は放課後デートらしい。最初は月見だけだったのに随分大事になったものだ。

 一応勝負種目はジャンケンだ。ジャンケンとなると心理戦に強い月見と計算予測できる伊集院の2強だな。璃子がこのジャンケンの手を予知しているならこの2強に食い込める可能性がある。一方、他の3人はそういうアドバンテージがない。シオンはサイコメトリーが使えれば簡単に勝利できるだろうがみんながシオンに触らせるなんて真似はさせない。晴恋も嘘破り自体は使えなくはないが素早い思考力が要求されるに違いない。原山は言わずもながだ。


「鏡華ちゃんは誰が一位だと思いますか~?」


 部長が私に顔を向けて言った。

 文芸部部長こと宮永恋歌先輩はシオン、晴恋と同じく誘拐事件に巻き込まれた一人だ。自分自身どんな超能力を持っているかわからないらしいが……。シオン曰わく世界のバランスが崩壊する可能性があるとか、それは大袈裟にしても超能力としては未来予知やサイコメトリーなんかとは格が違うらしい。


「月見か伊集院じゃないですか?」


 部長はクスクスと笑い言う。


「私もそう思います。あの2人はあの6人の中では段違いです。鏡華ちゃん、ここはみんな平等の勝負にしませんか?」

「平等ですか?」

「そうです~。私にはこのジャンケン勝負じゃ伊集院君と月見ちゃんがワンツーフィニッシュが見え見えです」


 部長は私の膝から下りるとトテトテと棚からトランプを取り出した。そして6人の円陣の中心にムリヤリ入り込んだ。


「みんなちゅうも~く!」


 ハイテンションで部長はジャンケン勝負に横槍だ。もちろんみんな水│(槍)を刺されて文句を言っている。璃子は絶望を絵に書いたような顔だし、月見はおそらく私以外には聞こえないであろう舌打ちをして、伊集院は微妙に困った顔、シオンはむしろ嬉しそう、晴恋と原山はあまり表情に変化がない。他の奴はともかく晴恋と原山はゲームが変わっただけであまり状況は変わらないからな。


「部長命令です! 今からジャンケンから公平にトランプに競技を変更しま~す!」


 ジャンケン以上に不公平なゲームだぞそれは。どんなゲームをやるかは知らんが伊集院の独壇場じゃないか?


「ゲームは簡単、山札の上からカードを一枚引いて1から13の数で大きい人の順で勝ち! 簡単ですよね?」


 6人がお互い顔を見合わせる。戸惑っているみたいだ。

 確かにシンプル故に個人の能力による有利性を極力排除した運のゲームだろう。しかし、それでも伊集院が一歩有利なゲームである事は変わりない。伊集院はおそらくそれさえ計算予測する。それに伊集院以上にシオンは透視を使える。サイコメトリーは役に立たないにしても、この手のゲームにお誂え向きの透視は伊集院以上に有利。


「それで順番はみんなで話し合って決めてくださいね」


 なるほど! 話し合いという場を設ける事で伊集院、シオン有利をなくそうという事か。確かにこれなら伊集院に対抗できる月見も介入できるし、結果が見えるシオンを抑制できる。それにこの限定条件下ではシオンにとって天敵の晴恋もいるから下手に口を出せない。

 よく考えると全然公平じゃないな。原山が不利過ぎる。ただ最終的には運が勝敗を分けるのは確かだが。

 わかってるのかわかってないのか部長は満足そうに机の上にトランプを置き、再び私の膝の上に腰を下ろした。

 そういえば璃子は演劇部の方に顔を出さなくていいのか?


****


 ヤ、ヤバい。ゲームが変わっちゃった。

 実は私──璃子は、ジャンケンの結果を夢で予知していた。誰が何を出すか私は知ってる。ジャンケンなら天才伊集院君や腹黒な滝沢さんを出し抜けるはずだった。それが部長のおかげでトランプになってしまった。

 う~ん、どうしよう……。トランプで何が出るか私は知らないしな~。完全に運任せじゃん。

 演劇部の方は放課後に練習がある。夏休みの事件で舞台に立てる演劇部員が少ないため舞台に上がる事になった。比較的に怪我が少なく軽い私は舞台に立つ事になった。しかも……しかも! 主役である! そのため私は放課後は鏡華ちゃんと放課後デートする時間がない。土曜日も同様だ。よって私には日曜日しか予定を入れられない。

 そして現在、私と他5人は順番を決める相談中だ。一番最初に口を開いたのはシオンちゃんだった。


「私は何番でもいいですよ」


 まあ、何番に引こうと結局は運だからね。何番でも同じだよね。あ! でもシオンちゃんって透視できるじゃん。何で透視できるのに投げやりになってるんだろ? 一番大きい数字がある順番にすればいいのに。


「じゃあ俺は一番でいいか?」


 原山君の言葉に反対する人はいない。

 ん? 何かトランプが光って見える……。

 次に意見を表明するのは伊集院君だ。


「僕はどこにしようかな? 面倒だし最後でいいよ」


 たぶん伊集院君は計算したんだ。

 段々色がの光が明るくなる。

 ここで滝沢さんは図々しくも伊集院君に意義を唱える。


「私も最後がいいな。ほら、残り物には福があるっていうでしょ?」


 伊集院君と滝沢さんは6番をどちらにするかで揉め始めた。

 トランプの山札の一番上からが赤、青、赤、赤、赤、赤とカードに色が付いている──というより色が包んでる。

 もしかしてこれは……。

 私は晴恋ちゃんに言う。


「晴恋ちゃんは何番目に引くの?」

「私は3番目」


 なら私も決めさせてもらおうかな。私の予想が正しければ一番大きい数字は──


「じゃあ私は2番かな」


 これで私のトップは確定した。しかし、この色が本当に正解なのか確信はない。伊集院君は6番目を選んでいるわけだし、そもそもこれが正解が色でわかる能力かも怪しい。もしかしたらまったく直接正解に関係のない意味で色が見えるだけかもしれない。

 だけど、何にしても最終的に運になるなら可能性に賭てみなきゃ。

 滝沢さんは諦めたように溜め息混じりに言った。


「仕方ないか。これは早い者順という事で伊集院君に6番目を譲るよ」

「当たり前じゃないか」


 伊集院君は呆れたように疲れた感じで言う。

 なんで滝沢さんはこんなに上から目線なのだろう。ムカつく人。

 そして滝沢さんは仕方ないと言わんばかり言う。


「それじゃ私は5番目にするよ」

「それでは私は4番目にします」


 シオンちゃんは宣言通り最後に決めた。カードを引く順番は上から原山君、私、晴恋ちゃん、シオンちゃん、滝沢さん、伊集院君となった。

 何気なく鏡華ちゃんを見ると私をジッと見ている。まるで観察するような目だ。そういえば鏡華ちゃんの妹の彩七ちゃんもこんな目をする。彩七ちゃんは正に目を見開いて正に観察という感じだが、鏡華ちゃんは目を細めるからなのか誘うように見つめるという感じだ。

 鏡華ちゃんと眼鏡越しに目と目が会うと、鏡華ちゃんの勝ち気で生意気な目が唇が優しく笑む。鏡華ちゃんは本当に卑怯だと思う。作り笑顔じゃないその無意識な笑顔は癖になっちゃう。虜になっちゃう。

 そういえば鏡華ちゃんはさっきから黙ったままだ。あくまで口は挟まない方針みたい。


「それでは早速引いてみましょう! それでは原山君から!」


 部長の元気な声で原山君に促した。


「ふん。要は日曜日か土曜日を当てればいいんだろ?」


 原山君はそうは言ったものの特に自信があるわけでも諦めているわけでもないみたい。ただ運に身を任せている感じだ。

 原山君は昔見た事あるようなカードゲームアニメのキャラのように格好を付けて一番上のカードを引いた。


「なるほど……悪魔の数字か……」


 悪魔の数字……?

 原山君はカードの数を確認するとみんなに見えるように表を見せる。その数は6。


「微妙だね原山君」


 伊集院君が慰めるように声をかける。肝心の言葉の内容は慰める要素がないけれど。原山君も恨めしくも視線を伊集院君に向ける。


「次は一条さんでしょ? 早く引けば?」

「わかってるから」


 急かす滝沢さんに私は自分でもわかるほど敵意丸出しで返した。

 私の番だけど大きい数字が出るか小さい数字が出るか。私が引こうとしているカードが変わらず青く光る。むしろ一層輝きを増す。私は瞳に光を映しながらそのカードを引く。

 不思議。その光を見ていると、その光に当たっていると安心感を覚える。私はその数をみんなに見せる。みんなが驚いた顔でカードあるいは私を見る。


「13……ふ~ん。どうやら僕は計算ミスしたみたいだね」

「クソっ! 俺も2番にしとけば良かった!」

「最高数字を当てるなんてすごいですね」


 それぞれ伊集院君、原山君の2人は悔しさを、シオンちゃんは感心を込めて言った。なぜか晴恋ちゃんが怪訝な顔を伊集院君に向けている。

 それにしてもまるで運が私に味方しているみたい。伊集院君が計算ミスして滝沢さんが共倒れ、シオンちゃんは手加減したのか最後に選んだし、晴恋ちゃんと原山君は運悪く外れを引いた。そして私は正解が色でわかる能力を手に入れた。だけどこれって要は『悪意』で歪んだんのよね。何が歪んだんだろ?

 次は3番目の晴恋ちゃんか……。


「引く」


 晴恋ちゃんはカードを引くとすぐさま表返した。書かれていた数字は8。


「思ったより悪くはない」


 予想通りなのか晴恋ちゃんは悔しそうな顔も満足そうな顔もしていない。

 次はシオンちゃんか……。

 シオンちゃんは溜め息を吐きつつカードを引いた。シオンちゃんは苦笑いで言う。


「2ですね。自分で最後になるとは言いましたけどこのカードを引かせるなんてみんな運が良過ぎです」


 何と言ったら言いのか……。すみません。私超能力使いました。


「次は私ね」


 滝沢さんがカードを引く。滝沢さんは一瞬だけ明らかに不機嫌な表情になったがすぐにそれを隠した。


「5だよ。残念」


 滝沢さんは鏡華ちゃんに目をやり悔しそうに笑みを投げる。この人の鏡華ちゃんに対する図太い態度は本当に感心する。

 いよいよ最後は伊集院君。まさかの計算ミスをした伊集院君だ。伊集院君は不敵な笑みを浮かべてカードを引く。伊集院君はカードの数字を確認してから鏡華ちゃんの膝に座っている部長を見て言う。


「部長、もしカードの数が同列だったらどうするんですか?」

「ん? 伊集院君は誰かと数字被ったのかな?」

「はい……」


 伊集院君はチラッと私を見た。そしてカードをみんなに見せて言う。


「一条さんとかぶりました」


 どうやら計算ミスはしていなかったらしい。




 部長はしばらく考えると抜き取っていたらしいジョーカーをトランプの束に混ぜてシャッフルして、机の上にカードを裏返しで並べる。


「部長、神経衰弱でもやるんですか?」


 鏡華ちゃんは部長に疑問を投げた。部長は笑顔で答える。


「いいえ、2人はこのカードの中から交互に一枚ずつ引いて、どちらかが先にジョーカーを当てるゲームをしてもらいます。カードは引く度に除外します。単純でしょう? 公平性を機すために先に13を当てた一条さんからでいい?」

「僕は構いませんよ。僕の運が余程悪くない限り最初の一手で僕は勝てますしね」


 なんという幸運。伊集院君が後攻になった。もちろん私には数多のカードに混じり、一色だけ異彩を放つ一枚が見えている。


「それじゃお言葉に甘えて先攻はもらうね」


 私はただ一点を見据え、真っ直ぐそのカードに手を伸ばす。カードを手に取り裏返す。


「マジかよ……」

「一回で……」


 そのカードはジョーカーだ。


「一条さん、もしかしてあなたこれを予知夢で見てたのかな?」

「やめてくれない滝沢さん、いくら負けたからって人に難癖付けるの。それに私の予知夢は外れたの」


 元々私の予知夢はジャンケンだった。しかし、それは外れているので間違いではない。ただ幸運にも私に新しい超能力が発現しただけで……。

 鏡華ちゃんを見ると鏡華ちゃんはシオンちゃんとお喋りをしていた。


「とにかく、私が最初に決めるからね。もちろん日曜日!」


 その後、みんなはそれぞれ鏡華ちゃんとのデート日を決めた。




 家に帰ってこの超能力を試したところ、私のこの超能力はなぜか使えなかった。

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