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Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
イベント・『悪意』オークション
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第67話

 放課後の教室。すべてのクラスメート達がそれぞれ席に着席している。

 夏休みに起こったあの事件で入院していた奴らもほとんど退院し登校している。それはもちろん友達である璃子や伊集院も例外ではない。私としては久し振りに璃子に会えて嬉しい。

 話を戻そう。それで今、私のクラスが何をしているかというと──


「授業が終わってもう一時間半……。これから部活の人や帰って遊んだり塾へ行く人もいると思います。それで未だに文化祭で演劇をやるか店をやるかも決まってません。早く決めません?」


 つまり文化祭で何をやるか出し物を決めているわけだ。進行役は文化祭実行委員で男子は桜、女子は朱命──宇田川朱命だ。ちなみに今喋ったのは朱命の方だ。

 そもそもなぜ一時間半もかかっているのかというと、みんな我が強いんだよ。今出ている案は演劇がシンデレラ、眠り姫、白雪姫、金の斧銀の斧、オリジナル、店はメイド喫茶、執事喫茶、甘味処的なものの7つ。しかも綺麗に同じ票数とはいかないが大体同じくらいの票数であり、一つに決まったと思ったら他6つの支持者達からブーイング。果ては、過半数に満ちてないから駄目、と言う奴はまだ良い方で、それなら自分は参加しないから、と言う奴まで出る始末だ。もちろん私も演劇オリジナルになりそうになった時はブーイングの輪に入った。個人的に演劇──特にオリジナルは嫌なんだ。

 演劇だと十中八九私が脚本になるからな。一応、文芸部だし。私的には店がいいな。執事喫茶は駄目だがメイド喫茶と甘味何処ならかわいい服が着れるはずだ! 演劇だと璃子という儚い系美少女がいるから絶対お姫様役になりそうもないからな。良くて継母だろう。

 朱命の言う通りこの後部活があるからな。そろそろ終わらせようと思う。

 そんな時、クラスメートの一人──田名部が手を挙げる。


「やっぱり金と銀にしようぜ? 最初から脚本考えなくていいしさ」

「はあ? だったらシンデレラでもいいじゃん」

「白雪姫だって同じ条件でしょ?」


 金と銀の斧支持者達の怒りの視線が田名部を襲う。当たり前だ。

 さて、状況を整理しよう。今の彼の発言から金と銀の斧を支持を集めるのは難しくなるだろう。しかもシンデレラと白雪姫にも火の粉が飛ぶというオマケ付きだ。個人的には第一候補にメイド喫茶、第2候補に甘味処。後はタイミングだ。意見が通り易い。こういう場において個人の発見権は2回だ。3回目以降だと意見が通り辛くなる。だからタイミングは重要だ。


「ねぇ」

「ん? なんだ璃子?」


 私の右斜め前の席にいる璃子が話しかけて来る。

 一条璃子。雪のように白い髪は私と同じくポニーテール、一人長袖を着ている透けるような肌は隠れ、普通ではありえない特別な赤い目であるこの娘はアルビノというやつであり、ロシア人の血がクォーター、しかし私より低い身長でその美少女ぶりは守ってあげたくなる。そんなこの娘は予知夢の超能力者だ。璃子はつい最近今年2回目の入院から退院したばかりだ。怪我で入院してた璃子は正に病弱少女だった。怪我だけど。


「鏡華ちゃんは執事が似合いそうだよね?」

「璃子は白雪姫似合いそうだな」

「え? そ、そうかな?」


 璃子は顔を白い肌を紅潮させ嬉しそうに照れた顔になる。

 嫌味なんだが……そんな嬉しそうにされると罪悪感が……。

 すると璃子が珍しく手を挙げる。嬉しそうに。朱命が言う。


「璃子さん何か意見でも?」

「執事喫茶が良いと思います。絶対鏡華ちゃんに似合うと思う!」


 私を巻き込むな! と言いたいところだがちょうど良い。ここで私の名前を出したのはナイスだ。だけど悪いな璃子、私は執事喫茶はやりたくないんだ。精々このグッドタイミングを使わせてもらおう。


「まあ、待て。朱命、私は執事喫茶は反対だ」


 執事喫茶支持者達からブーイングの嵐だ。璃子が私を不満そうに見つめる。恐いよ。今から私があんた達をメイド喫茶派に寝返らてやろう。


「なぜかな? 鏡華さん」


 私も月見ほどではないが人の心を誘導するのには自信がある。


「私達は中一だ。執事喫茶をやるにも女子も男子も童顔ばかりだ。執事の格好しようにもイケメン風女子はいないし──」

「鏡華ちゃんがいるじゃん」

「少し黙っててくれ璃子。かといって大人の雰囲気のある男子もいない。ショタ執事や男装少女コスプレ執事なんていうのはニッチな需要だぞ。集まる客なんてショタコンや男装少女が好きな変態な紳士淑女の皆さんしか集まらん」


 まずは直前の意見をやんわり論理的に否定だ。見ると執事喫茶派含めてどこか納得した顔だ。私は続ける。


「そこで私はメイド喫茶を推そうと思う」


 そして自分の意見を示す。ここが重要だ。メイド喫茶も執事喫茶と同じくらいニッチだと自分でも思う。だが肯定意見を集めるだけなら執事喫茶より遥かに容易い。


「男子達!」


 私の一声で男子達は慌てたように、はい! と返事を返す。


「このクラスは美少女が多いと思わないか? あんた達は璃子や朱命のメイド姿を見たくないのか? 数魅や透子も可愛いだろうな」


 男子達が明らかに女子達をチラチラと見ている。他愛もないな。個人名を出す事によって期待感や現実味、妄想を持たらす。しかも意見を言っているのがかつて羅刹女と呼ばれていた私とはいえ純然たる女子だ。男子が受ける女子による軽蔑の眼差しなどの攻撃をある程度無力化できる。


「ちょっと鏡華ちゃん」

「鏡華さん、私達を巻き込まないでくれませんか?」


 後は女子か。


「みんなは可愛い服着たくないのか? 演劇だと可愛い服着られるのは主役と数人の役だけだぞ」


 そうなのだ。演劇は可愛い衣装を着られるのは数人、だが店ならみんな公平に可愛い衣装を着れる。これなら女子全員とは言わないが大半の女子の支持を集められるはずだ。それに元々メイド喫茶支持者の半数は女子だ。問題は実際接客するのは女子のため男子票が多いだけでは駄目、女子の中で過半数の同意を得る必要がある。まあ、いざとなれば隠し玉もある。


「どうする?」

「興味ないわけじゃないけど……ちょっとね」

「私は賛成かな」

「私も」


 女子達の話す声が聞こえる。思いの外賛成の声が多い。これなら隠し玉を言う必要はないかもしれない。


「ちょっと待って!」

「立原さん。何か?」

「さっき鏡華は執事喫茶はニッチがどうとか言ったけどメイド喫茶も大概ニッチだと思うんだけど」


 白雪姫支持者が反論した。

 正にブーメランだな。だけどそんなわかりやすい事を私が気付かないと思っているのか?

 なるほど。苺は見た目可愛いし、シンデレラならともかく題材が白雪姫なら白雪姫役になれるだろうな。白雪姫ならほぼ確実に璃子は抜擢されないからな。かといって私が抜擢されるわけないので私も苺の意見には反対させてもらおう。


「なるほど。あんたの言いたい事はわかった。それに関しては手を打っている。だから実際は小さい子にも親しみ易いデザインにするつもりだ。それに私からも言わせてもらうと演劇は衣装を着るうえで公平性に欠く。特に白雪姫は主役に絶対選ばれない奴もいるし、白雪姫支持派の実質リーダーの苺は間違いなく監督だし、私と璃子は自動的に脚本だろう。もしみんな公平に決めるならくじ引きかジャンケンになるしな」

「票数で決めればいいじゃない?」

「白雪姫が今の投票で決まったらな」


 デザインに関しては考えていた事だ。どうせ集客するならニッチな奴らばっかというのは私も嫌だしな。

 公平性に関しては投票での役決めも全然公平だけど、やはりそれ以上に公平なのはみんな同じ衣装を着る事だ。さらに苺がナイスな返しをしてくれたおかげで、次の投票が実質最後の投票となる可能性があるという事だ。それに自分自身をほぼ決められた役に不満を漏らし、苺に自分自身が役ではなく監督になる可能性を示唆する事で敬遠もした。


「……男子はどうするの? 公平性という意味ではメイド喫茶も男子がほぼキッチン係になる不公平があるよ」


 苺が負けじと食い下がる。


「な、何?! その笑顔?」


 苺が照れたように目を逸らす。今の私は笑顔なのか。不気味な笑顔ではない事を祈ろう。


「苺のそういう所私は好きだぞ」

「な?! 鏡華、反論できないからって私を口説き落とすつもり?!」


 なぜ口説く事になった。

 どうやら隠し玉を言う必要性があるみたいだな。今の空気なら押し通せるかもしれない。


「男子の不公平に関してもちゃんと考えている」

「言ってみなさいよ」

「男子もメイド服を着て全然で接客、キッチン、休憩をローテーションすれば良い」




 私は席に座り頭を抱えている。

 結局、私の意見は男子達のブーイングにより却下された。隠し玉の効果としてメイド服を着るというのは女子の意見を大きくする。そのため女子の票数を過半数にする必要があった。それならば男子にもメイド服を着せて票の重さを同じにして票数を無理矢理過半数にしようとした。それによって苺の男子の不公平を解消しようとした。後は盛り上がる空気の中決まると思ったがそんな事もなかった。

 不幸中の幸い。私の意見は後一回は真面目に聞くだろうという事、演劇より店の方に意見が傾いた事、執事喫茶もほぼ却下状態という事だろう。

 まあ、今のままならメイド喫茶か甘味処に決まりそうだから良しとするか。

 そしていざ最後の投票に移ろうとした時、教室の前の扉が開かれた。


「おや? 高田さんのクラスはまだ文化祭の出し物決まってないのかい?」


 は?


「あ! 伊集院君だ」

「こんにちは風麿君!」

「伊集院何しに来た!」

「そうだ! ちょっと顔が良いからって騒がれやがって!」


 まさかの伊集院の登場にクラスの女子が黄色い声援を、男子は嫌味を言う。

 伊集院風麿。最近めでたく退院した天才少年だ。美形で癖毛、性格は良くも悪くも普通の男子中学生、時々おっさん。しかし、その頭脳は正真正銘の天才なのだが如何せん普通なためかまるで宝の持ち腐れだ。

 コイツ……わざわざ迎えに来たのか? 部室で待ってればいいものを……。

 よく見ると廊下に晴恋もいる。


「ここはどうだろう? いっそ制服喫茶なんてどうかな? 需要あると思うよ」

「制服喫茶……良いわね」

「宇田川さん、制服喫茶も候補に入れようよ」


 他人のクラスに何意見してんだ? アイツ……美少年な外見に反して中身はどこぞのおっさんだな。

 もちろん実行委員が黙ってるわけがない。私が文句を言う前に朱命が伊集院に言う。


「伊集院、あなた私達のクラスじゃないでしょう? あなたのクラス、文化祭の出し物決まったの?」

「当たり前じゃないか。じゃなきゃここにいるわけないだろ」

「だったら部活にでも行きなさいよ!」


 確か伊集院と朱命は同じ朝山の小学校に通っていたとか。


「宇田川さん、別にいいじゃん。今更案が増えたっていいじゃん」

「いいわけないでしょ……」


 色々な意味で風向きが怪しくなってきた。おそらく朱命もメイド喫茶か甘味処に落ち着かせようとしていたのだろう。


「あら? このクラスは部外者も案を出していいの?」


 今度は教室の後ろ側から声がする。

 この声は……月見。

 滝沢月見。有名なファッション雑誌の人気モデルであり、私より高い身長でスレンダーという正にモデル体型で、やはり目を惹くのは黒髪に混ざる赤髪のメッシュだ。そんな月見は小学生の時にかつて私を追い詰め、ただ独りで学校をイジメという恐怖で支配した策士だ。

 私は伊集院から目を離し月見を見る。月見の腕を組んで立つ姿は正にモデルだ。


「月見さんだ」

「滝沢さん、今月号見ました!」

「ありがと」


 女子の尊敬の眼差しに笑顔で返す。

 伊集院の時と同じ女子の黄色い声、しかし伊集院の時と違い男子は凝視やチラ見している。

 廊下から晴恋とシオンと原山の他愛もない話し声が聞こえる。伊集院と晴恋のクラスはオリジナルの演劇、月見とシオンのクラスもオリジナルの演劇、原山のクラスはお化け屋敷らしい。


「宇田川さんだっけ? 私からはケモミミメイド喫茶を推すよ」


 とても有名ファッション雑誌の人気モデルとは思えない発言だ。


「ケモミミって何? メイドはわかるけどケモミミって?」

「ケモはわからないけどミミは耳じゃないか?」


 クラスメート達は疑問符で溢れている。わかっている奴もいるみたいだが。実行委員の桜は疑問符、朱命はケモミミがわかるらしく別に否定的な顔はせず、むしろ肯定的な顔すらしているような気がする。当の発言者の月見はクラスの状況を見て満面の笑顔で言う。


「あら? みんなケモミミがわからないの? しょうがないからどんなものか見せてあげるよ!」


 ケモミミ──獣耳の略称だ。要するにネコ耳やウサ耳とかの事だ。


「鏡華! ちょっと来て!」


 月見が嬉々として私を指名する。私は朱命を見る。朱命は行って来いと言わんばかり頷く。まるでこれから何が起こるかわかっているようだ。

 朱命はネコ耳、苺はウサ耳だな。

 私は黙って席を立ち上がり月見の方へ歩いて行く。私を目で追う璃子と目が合う。

 白いウサ耳だな。垂れてるやつ。

 私が廊下に出ると月見が教室の扉を閉める。私は月見、シオン、晴恋、原山、そして反対側の扉から駆け寄って来た伊集院に囲まれた。


「で? 私を指名してまで連れ出した理由は何だ? 私を囲ってリンチか?」

「リンチ? 私達だけじゃ逆にねじ伏せられるよ。喧嘩に関しては鏡華は規格外だからね」

「じゃあ何だ?」

「シオン、鏡華のポニーテールを解いて」

「わかりました」

「は?」


 シオンは後ろで私のポニーテールを解いた。しかし、シオンは私の髪から手を離さない。


「シオン、どうした?」


 シオンは重力に逆らうようにゆっくり私の髪を上から下に滑らせる。そして髪を離し髪を持ち上げて落としていく。


「さらさら気持ちいいですぅ」

「おい! シオンしっかりするんだ!」


 一体何が?

 まるでとろけたように微小に呂律が回っていないシオン。

 シオン=オルコール。健康的な褐色肌にウェーブがかった黒髪、活発的でキュートな顔が印象的だ。シオンは生粋のエスパーガールで透視とサイコメトリーを持っている。この娘のおかげで私はとある人形に魅了された時に大事にならなくて済んだ。

 そんなシオンは未だに私の髪を弄り続ける。


「シオン、いつまで弄り続けてるの?」

「そうだよ。次は僕の番だよ」

「いえ、私の番はあっても伊集院君の番なんてないよ」


 月見の番も伊集院の番もない。私の髪を弄るために呼び出したのか月見は?

 しかし、反面自慢の髪を褒められて嬉しい自分もいる。私の唯一の自慢を褒められて嬉しいわけがない。


「シオンさん、そんなに気持ちいいの?」

「晴恋も触りますか?」


 晴恋の質問にシオンは私の髪を触るように促した。晴恋は黙って私の髪を触れる。

 中山晴恋。肩までかかる黒髪、目元が垂れていておっとりとした感じの外見は見る者を癒やす。しかし、私がしっかりしていなかったばっかりにその頬はこの前の誘拐事件で主犯者に殴られて痣ができたためかガーゼで隠している。そんな晴恋には嘘がわかる脅威的な洞察力を持っていて、さらに先の誘拐事件で『悪意』によって歪み嘘がわかる超能力に目覚めたらしい。


「鏡華さんの気持ちいい」

「ですよね。正に大和撫子です!」


 髪だけ大和撫子って事か? コイツらとことん私の髪を弄んでるな。


「後はコレだね!」


 月見はバッグからコレ──すなわちネコ耳を取り出した。月見が持つ黒いネコ耳を見て私は言う。


「月見……あんたは何でネコ耳を持ってるんだ? 正気を疑うぞ」

「別に正気でも狂気でも狂喜でもいいよ。鏡華、あなたはネコ耳を装備しなさいよ」

「なんで?」

「あなたの事だからあの案の中だったらメイド喫茶か甘味処でしょ? だったらネコ耳を装備して実物を見せてケモミミメイド喫茶に誘導すればいいよ。別にいいでしょ? ケモミミメイドもかわいいんだから」

「確かにかわいいがなぜそれを私が付けるんだ?」

「いいからいいから」


 月見は私にカチューシャ型のネコ耳を付ける。私は腕を組む。シオンと晴恋がネコ耳を触る。無論、所詮は偽物なので私は何も感じない。

 まだあるよ、と月見は言いバッグからさらに黒い尻尾を取り出した。


「ごめん月見。さすがにこれは……」

「今更でしょ? ほら付けて付けて」


 ──と言いながら勝手に尻尾を付けていく。本当にコイツはファッション雑誌のモデルか?

 廊下にいる奴らがジロジロと私を好奇の目で見ている。それどころか段々と人が集まって来る。夏休みにもこんな事があったな。人をあたかも動物園の見せ物みたいに扱って。


「似合う似合う!」

「うん。高田さん可愛いね」

「これが今流行りのケモミミですね! キュートです! 萌えです!」

「シオンさん、流行ってはないと思う。だけど鏡華さんは似合う」

「高田、注目の的だな」


 5者5様の反応だ。なんか大絶賛だ。嬉しいか嬉しくないかと言われれば嬉しい。しかし、非常に恥ずかしい! 顔が熱い。しかも携帯のカメラのシャッター音が聞こえる。


「後は眼鏡を──」

「滝沢さんちょっと待ってよ」

「何?」


 月見が私の眼鏡を取ろうとした時、伊集院がそれを制止した。月見は満面な笑みから一気に不機嫌な顔になり伊集院を睨み付ける。


「どういう事か聞こうかな。伊集院君?」


 怒気の含んだ月見の声に伊集院は一瞬怯んだが反論する。


「高田さんは眼鏡かけてた方が似合うと僕は思うんだ」

「そうかな? 確かに眼鏡もいいけど私は断然眼鏡はない派だよ。そんなに眼鏡がいいなら眼鏡と付き合えば?」

「話を変えないでくれないかな? 今はネコ耳の高田さんに眼鏡は必要か否かの話だったよね」

「それなら3年前に必要ないって事で決着ついてるよね」

「決まってないよ。高田さんは眼鏡で柔らぐんだよ?」

「あ~ら。私はそのままの方が断然好きだな。柔らぐ? あなたは何もわかってないよ」


 何コイツら? 眼鏡取るなら早く取ってくれないか?

 私達は激しくどうでもいい激しい論争を繰り広げる月見と伊集院を見ている。


「おい! お前らその辺にしとけ! そんな些細な事で何を揉めてるんだ!」


 止めに入る原山の言葉をまるで空気のように無視して2人の口喧嘩はさらに激しくなる。

 原山大樹。無造作ヘアーで精悍で割りとカッコいい顔立ちである。原山は意識を鳥に憑依させる能力ロードオブバード│(命名本人)を持っている。そして自分は不死鳥とカオスが混ざった生まれ変わりだという設定を持つ中学生男子だ。


「伊集院君、どうやらあなたには格の違いというのを教える必要があるみたいだね」

「滝沢さん……君は前に僕にゲームをふっかけて負けただろ? 忘れたのかい?」


 2人は無駄に一触即発の空気を漂わせている。私は2人に言う。


「ちょっとあんた達やめろ。私はクラスの奴ら待たせてるんだぞ。もうジャンケンで決めろ」

「うん、そうだね。本番の肩慣らしにもちょうど良いしね」

「まあ、鏡華がそう言うなら仕方ないか。だけど私は本気でいくよ」

「当然、僕もやるからには負ける気ないし」


 2人の間に流れる空気が重く変わる。

 そういえば私は月見と伊集院が本気で勝負するところを見るのは初めてだ。どちらもタイプは違えど頭脳派だ。月見は人の心理を利用し、残酷で非道にして精神的に追い詰める策士モデル。伊集院は世界の事象を計算し、未来を予測する天才少年。問題は私の眼鏡を外すか外さないかというとてもカッコ悪い原因だということだ。

 2人は同時に、ジャンケーン、と言って、ポイという言葉とともに手を出す。


「……あいこですね……」


 シオンが息を飲み静かに言った。気が付けば私達を囲っていた奴らは伊集院と月見のジャンケンを静かに見守っている。シオンも晴恋も沈黙している。壁越しに私のクラスも廊下の雰囲気を感じ取ったのかざわめいている。しかし、唯一人だけこの空気を壊す奴がいた。


「コイツらの勝負なんて時間の無駄だ」


 原山はそう言うと私の腕を引っ張り教室の扉の前に私を連れて来ると、扉を開け放ち私の背を押して教室に突き飛ばした。


「おい……!」

「ちょっと!」


 伊集院と月見が原山に言い放っていた。結局、眼鏡は外していない。一応は目的を達成した伊集院の勝利か。

 私は転ぶのを踏みとどまった。クラスメート達の視線を感じていた。みんな私に言葉をかけようとしない。さすがにあまりの恥ずかしさにちょっとテンパった私はこの微妙な空気を壊す一言を告げる。

 私は握り拳を作り手首を曲げ顔の横に持って行く。


「にゃあ」




 ただやってみたかっただけだった。

作者もメインキャラの微妙な設定を忘れかけてた

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