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Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
鳥の王・原山大樹
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第63話

「さて行きますか」


 私は月見と原山に言った。

 現在午前10時くらい。

 私の予想通り今日授業はなかった。正直な話、この学校の生徒の平均学力はストップ安に違いない。

 私達は校門から出て、伊集院の計算予測により割り出された場所──夜山町に向かうため駅を目指す。


「本当に授業なかったな」


 私達は喋りながら歩く。


「まあ『悪意』絡みで公務員や国の関係の人間は事件の解決もしくは事件解決の妨げはしないからな。市民に解決させるのに授業は妨げにしかならないからじゃないのか」

「なるほど。じゃあなんで今日来たんだ?」

「だから事件に進展があるかないか確かるためと金石に情報をもらうためだ」


 事件の進展に関してはついでだ。本命は金石の情報だ。

 私達は金石にもらった情報が書かれた紙のコピーを見ながら歩く。


「さて、現状をわかっている事を確認しよう。まず一つ目だ。今日の朝は誰も誘拐されていない。昨日の誘拐の件も含めてこれらの事からわかる事がある」

「え? なんだ?」

「シオンが誘拐されていてすぐ傍に原山君がいるのに原山君が誘拐されていない。さらに原山君が今日になっても誘拐されていない。また、超能力者でない晴恋が誘拐かれている。犯人達には超能力者を見つけ出す能力及び道具はなく、事前に手に入れた情報により超能力者の誘拐を決行したという事だよね」

「そういう事だ」


 実はこの情報、裏を返せば時間さえかければ超能力者の情報を集められる程の組織という事にもなる。逆に考えれば超能力者でない私達の情報も握られている可能性が高いという事だ。少なくとも月見と伊集院は要注意人物となっている可能性がある。


「ちょっと待て! それならおかしくないか? なぜ一条は誘拐されてないんだ?」


 原山がそんな事を言い出した。良い着眼点だと思う。


「実はそれに関しても見当は付いている。私の知り合いの超能力者、璃子と北乃先輩は攫われていない。私の推測ではたぶん入院中の超能力者は誘拐されていない」

「だよね。ケースバイケースだけど誘拐の成功率が低くなるであろう入院患者をわざわざ誘拐する理由はないよ。誘拐の仕方は全部同じ、車で近づき車に無理矢理押し込んで誘拐する。またこれを同日の朝に全部行われている。一斉に誘拐するのなら数人のためにわざわざ建物に入って失敗する可能性が高いリスクは普通切るよ」

「なるほど」


 月見もまあ、いけしゃあしゃあと言えるな。あんたが首謀者じゃなく良かったよ本当に。月見の策士としての能力は普通じゃないからな。おそらく月見はこの事件の攻略とともに、この事件以上に最善にして最低で最悪にして最高の計画が頭に浮かび上がっているだろう。


「2つ目いくぞ? 2つ目は明らかに超能力者であろう北見蓮十郎が誘拐の被害者リストに載っていなかった事だ」

「北見って誰だ?」

「夜中のプリンセスって呼ばれてる恥ずかしいだよ」


 月見……私も羅刹女とかいう不本意な呼ばれ方してるんだが。


「まあ実力は確かな奴だ。金石の情報によると唯一、誘拐犯を返り討ちにした奴だからな」

「で? これで何がわかるんだ?」

「ちょっと考えてみろ」


 原山は腕を組んで考え出す。そして一分かからない内に考えを口に出す。


「その北見って奴より誘拐犯達は弱い! そうだろ?」

「惜しい」

「なんだと?!」


 原山の解答法は間違っていない。数学で例えるなら計算途中だ。


「そう北見先輩は誘拐犯達より強い。これを前提とした時、この誘拐を成功させるために月見ならどうする?」

「簡単だよ。北見先輩より強い人をぶつけるか、あるいはそんな強さなど関係ない方法で誘拐すればいいよ。洗脳とか催眠とかね」

「なるほど。だけど成功してないだろ」

「そう成功していない! 逆説的に考えるなら失敗した。ということは北見先輩より強い奴はいない及び洗脳の能力の類を持つ人間や道具はないということになる」


 そうだ。これは私達にとってありがたい情報だ。強い奴はともかく洗脳の類がないのは有り難い。それに関しては私達に対抗手段がない以上どうしようもないからな。


「3つ目、昨日璃子からもらった情報の一つに超能力者を支配するアプリの存在を匂わせていた」


 そう、この情報が曲者だった。これらの情報を統合すると洗脳のアプリは有り得ない。また晴恋達のタイムリミットが今日までという時間の猶予があるのもわからなかった。

 私に代わり月見が続ける。


「そしてそのアプリの能力は大体わかったの。時間に猶予があるということは催眠による洗脳の類、あるいは直接操るもの、もしくは苦痛を与えるなどして無理矢理従わせるアプリ。まあなんにしても北見先輩が誘拐されていない以上、そのアプリを使うために誘拐する必要があると思った方が自然だよね」


 だそうだ。私は支配の部分で手間取ったが月見はこれを導いたわけだ。


「高田も滝沢もすごいな」

「そうか?」


 別に普通だと思うんだけど……。


「まあこんなものか? 後は金石からおまけで色々な情報をもらったがな。特にこの超能力者リストとか……」

「後コレとか?」


 私が件の超能力者リストを誇示するように見せつけると、月見も私が持っている資料からあるリストを取って言った。

 私と月見は不敵な笑みを浮かべた。


****


 私は目を覚ましました。


「あぁ?! シオンさん! 良かった~!」


 今にも泣きそうな顔で晴恋が横になっている私の顔を覗き込んでいます。晴恋の声を聞きつけ他の2人も駆け寄って来ます。私は晴恋を安心させようと口を開きます。


「大丈夫ですよ。あの頭痛自体は私……いいえ私達の思い込みです。所詮あんなの痛覚に嘘を訴えるだけの幻覚ですよ」

「え?」


 私は頭痛に襲われて頭を押さえた時、おそらく気絶する直前に頭──正確には頭痛をサイコメトリーしました。

 自分へのサイコメトリーは本当はあまりやらない方が良いのですが……あの場合は仕方ないでしょう。おかげでわかったことがあります。


「あの頭痛を起こしている原因は木谷が持っているスマフオですね。正確にはそこに入っているアプリです。確かアプリ名は『超能力者調教』。名前通り超能力者を調教するアプリですね」


 完全に頭から痛みが引いた私は上半身を起こし床に座る。他の3人も円状に座る。私はサイコメトリーした内容を説明する。


「あのアプリは超能力者相手なら誰でも使えるわけではありません。条件があります。みんなはわかりますか?」

「わからない。先進めて」

「顔の写真です。顔の写真といってもあのスマフオで撮った写真である必要があります」


 しかも撮った画像によって対象への調教の強さが変わります。アプリそのものにプログラムされているカメラで画像に写る対象との距離、顔のピント、果ては顔の角度といっとところで強さが変わります。


「アプリの機能は能動的に自分で操作して行う鞭……調教モードと快楽を与える飴モード、そして受動的で超能力を使わせないためのしば……制限モードです。調教モードは先程私や晴恋が受けたもの、制限モードは昨日私が床にサイコメトリーした時に襲われた頭痛ですね」


 まだ色々疑問はありますけどね。これで間違いはないはずです。


「そしてわかりましたよ」


 3人とも疑問の視線を私に向けています。そして雛萌が、何が? と言いました。


「今回の事件の構成員及びあのアプリを破る方法が」


 私は晴恋を見て不敵な笑みを向ける。


****


 俺は鳩に憑依して夜山町の上空を飛行している。

 俺の体は夜山にある割と大きい公園のベンチに座っている。

 高田は昼飯を食べようと提案しコンビニに俺達の昼飯を買いに出掛けている。滝沢は俺の見張りだ。そして俺はある物を探している。

 そのある物とは誘拐に使われた車だ。高田と滝沢曰わく、俺がシオンが誘拐された時に見た車を見つけるのが一番早いとのこと。

 それにしてもないな。そもそもガレージに仕舞われてたらどうするのか……。

 やっぱりないな。




 俺は憑依を解いて自分の体に戻った。

 俺の座っているベンチの隣りのベンチに滝沢が座っている。スマフオをいじっている。


「戻った」

「そっ、ご苦労さん」


 滝沢はこちらも見ずに一言そう言った。不機嫌そうだ。

 気まずいな。


「滝沢は何やってるんだ?」

「原山君には関係ない」


 取り付く島もない。

 高田はまだコンビニから戻っていない。

 それにしても俺達はこんなにのんびりしてていいのだろうか?

気付けば説明回だった

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