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Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
鳥の王・原山大樹
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第62話

 シオンと晴恋と部長が誘拐された翌日。

 雀の鳴き声の中、私はまたもや月見の抱き枕にされていた。しかし状況は昨日よりひどかった。なぜなら、昨日は向かい合う形だったが、今日私は月見に背を向けている状態だ。そして月見は私のお腹に右手を回し、私は月見の左手を枕代わりにしている。

 かくいう私が起きた理由は月見の手が私の──まあ、どうでもいいな。

 月見の寝息が耳の真後ろから聞こえる。月見の右手が私のお腹やら脇腹を弄│(まさぐ)る。


「ッ……!」


 まだ暑いから私も月見も寝間着は生地の薄いシャツにラフなホットパンツだ。月見が着ているのは私が貸した服だから、まあアレなんだが。そんなことより──

 コイツ起きてるんじゃないのか? 触り方が気持ち悪い。いや、そういう意味ではなく、むしろ良いんだが……。何を言ってるんだ私は?! ていうかさっきからチュン! チュン! チュン! チュン! 雀うるさいな! 耳に息を吹きかけないで月見。……ちょっと! それはやばい……!


「月見! それはやめろ! 殴るぞ!」

「…………ごめんなさい」


 月見が私の右の耳元で悪びれもなく囁いた。むしろわざと耳に息をリズム良く吹きかけている。

 私は疼く耳を手で抑えてしまった。


「あら? 今ビクッとしたよ?」

「くすぐったいんだ」

「ふ~ん……耳弱いんだ?」


 尚も私の手越しに月見は囁く。耳は守られたが逆に手の甲が息で撫でられてくすぐったい。

 さすがにそろそろ耐えられなかったので│(いろいろと)私はお腹に回された手を退け起き上がる。


「あれ? もう起きるの? 鏡華の反応かわいかったよ~」

「……私にそんな趣味はないぞ」

「……奇遇だね。私にもないよ」


 私と月見は不敵な笑みを向け合った。私は未だ寝転がっている月見に言う。


「月見、男の前でその格好ははしたないぞ」


 月見は私を体を足の先から舐めまわすように見て、やがて私の目を見る。そして言う。


「鏡華の格好もぞんざいはしたないよ。いや、だらしないよ」

「ほっとけ」


 私はベッドから抜け出し窓に向けて歩き出す。


****


 俺は再び雀になる夢を見ている。そして再び高田の家を覗いていた。

 いや! 覗く気はなかったんだ!

 しかし待ってほしい。だけどこれは夢だ。言い換えればこれは俺の妄想だ。ならばこれはこのまま見続けても良いはず。

 俺は開き直りこの夢を見続ける事にした。

 リアルで見ているみたいだった。

 ひたすら滝沢が高田の腹を優しく撫で回して耳に息を吹きかけている。高田の顔が紅潮して耐えている表情だった。

 うおっ! あの球技大会の時の笑顔もヤバかったが、なんだあの顔! かなり可愛い……。

 そして滝沢……。それはいくらなんでもそれは……。

 さすがに勘弁ならなくなったのか高田が強気な言葉で反撃に出る。別段嫌な顔をしていない所為か高田がツンデレにしか見えない。

 高田は耳が弱いのか。

 そして滝沢、お前はまだやるか。高田は耳を手で抑えてるが滝沢はその手に息を吹いている。それですら高田は反応している。

 やがて高田は滝沢の手をどけて起き上がった。

 なんだあのポーズ!

 高田は大きめでゆったりしたシャツは肩がはだけ、パンツみたいなズボン│(?)から覗く脚線美、片足の膝を曲げるポーズ、綺麗で長い黒髪のおかげでアレだった。可愛かった。エロかった。

 寝転がっている滝沢は見上げて不敵な笑みを、上半身を起こしている高田は見下ろして無防備な笑みをお互い向けていた。

 前から思ってたがアイツらいつも2人で独特な世界に入るよな。

 高田は滝沢に男が見ているとかどうとか妙な事を言った。

 もしかして俺の事か? まさかな……。

 そして高田はベッドから出て俺が見ている側の窓に近寄って来て、窓を思いっきり開けた。そして電線に止まっている俺達雀を見上げる。


「おいで」


 高田は人差し指を差し出し、安心感を覚えさせるような柔らかい笑みで俺達に人差し指に止まる誘う。

 日本人にとって雀というのは害鳥の歴史だ。かつての日本人は大事な農作物を食べる雀を狩っていた。その歴史から日本の雀は人間から逃げるという記憶がある。

 ただまあ……あれだ。これでは高田が可哀想だし止まってやるか。

 俺は電線から離れ高田の人差し指に向かって羽ばたき、そこに止まった。


「可愛い奴だな~」


 高田の言葉に俺は鳴き声で返す。

 チラチラ見える滝沢の顔がニヤニヤしている。


「あんた……さっきの私と月見のアレ見たか?」


 高田は笑みを崩さず俺に聞いた。俺は否定の意味を込めて鳴き声で返した。


「そうか見てないか……」


 俺は高田の言葉に肯定の意味で鳴いた。

 そうかそうか、と高田は言って今までの柔和な笑みから怒りの混じった笑みになる。


「おはよう原山、気持ちのいい朝だな」


 は? いやいやね~よ。


「原山、とりあえず電話かけるから」


 高田は俺を離す。俺は羽ばたき再び電線に止まる。そして高田は机の上に置いてある携帯を手に取り、ボタンを押してから耳に当てる。おそらく俺の携帯に電話している。

 ふと滝沢を見るとあっちも俺をチラ見した。一瞬目が合った。




 俺は携帯の着信音で覚醒した。俺は起き上がり慌て携帯を手に取る。

 画面に表示されている名前はルーラーもとい高田鏡華。


「マジかよ!」


 俺は一旦深呼吸して高田の通話に対応する。


「も、もしもしルーラー? お、おはよう……」

『やあ原山。私はルーラーじゃなくて高田鏡華だ。それと、私と月見の寝込みを覗くとはいい度胸だな』


 軽くて重い感じの高田の声が聞こえた。


『さすがにこれが夢だとは思ってないだろう?』

「ああ」

『おーけー。じゃあ聞くが原山はそれを自由に使えるのか?』

「いや、まだ2回しか使ってないが眠っている間に起こっている」

『ほう。条件は不明だと。……今は6時前か。原山、今すぐ私の家へ来い。朝食でも食べながらその能力について検証しよう。あっ、制服でいいぞ』

「わかった。それと一ついいか?」

『なんだ?』

「どんな感じなんだ? 耳をな──」


 通話が切れた。

 やばい。たぶんキレた。絶対キレた。行きたくね~。だけど行かなかったらさらにキレる。それに高田が作ったご飯は食べてみたい。とりあえず着替えよう。




 俺は現在、時間にして6時45分くらいに高田家で朝食を食べている。目の前には高田、高田の隣りには滝沢。2人とも既に制服に着替えて見出しなみを整えている。肝心の朝食のメニューはご飯、玉ねぎと豆腐のみそ汁、焼き鮭にひじきのおひたし。一般的な和食だ。

 それにしても高田も滝沢も食べ方上品だな。見る限り高田の方が上品だが食べるのも早いぞ。なんというか早送りの1.5倍速みたいな感じだ。


「それで? 一体どうして俺があの雀に憑依してるとわかった?」

「璃子が予知夢で視てそれを私にリークしたからだ」

「なるほど」


 俺の問いに高田は答えた。

 話を要約するとこういうことだ。

 昨日、高田は一条から今回の事件に関しての予知結果を教えてもらいその際に俺が『悪意』によって歪み超能力に目覚めると予知したとか。そして高田と滝沢は俺の能力が事件を解決するために必要ではないかという結論に達したらしい。


「しかしなんで俺のこの能力が必要なんだ?」


 高田は俺より先に朝食を食べ終わり食器を重ねながら言う。


「確かに璃子のおかげで重要な情報こそ手に入れたが、私が聞いたのは未来で起こる事からわかる現状把握程度だったんだ。その中で原山の超能力に目覚めるという予知情報は妙に浮いてたからな」


 なるほど。しかし高田も高田で伊集院や滝沢に──いや、どちらかというとシオンや中山にも引けを取らないほどの直感力だな。昨日もそうだがあの誘拐被害者リストから違和感だけで誘拐被害者の共通点が超能力者という推測を導き出せるか? 普通に考えて。

 俺も朝食を食べ終わった。ひじきのおひたしがヤバい。美味過ぎる。俺は高田に倣い食器を重ねた。

 高田は未だに食べ終わらない月見を見て言う。


「ところで月見は原山の能力がどんなのかわかったか?」


 滝沢は茶碗の上に箸を置いて言う。


「大体鏡華と同じだと思うよ」


 高田は腕を組んで考える素振りをしてから言う。


「テレパシーとシンクロをベースにして鳥と感覚を共有して操る能力じゃないか?」

「私の考えと同じだよ」

「問題は発動条件だろう?」


 滝沢は箸を持ち再び進め、ひじきを口に運び飲み込んでから言う。


「私の考えでは原山君の能力の発動条件はボンヤリすること──つまりボーとすることだと思うよ」


 高田は得心がいったような顔になり、俺は疑問に思い口にする。


「なんでそうだと思ったんだ?」

「睡眠には浅い眠りのレム睡眠と深い眠りのノンレム睡眠というのが交互にあるのは知ってるよね? まず原山君の能力は真夜中に発動していない。この辺にはフクロウとかいるから環境による能力の発動条件はあるの。このことからノンレム睡眠時には発動できない。またレム睡眠時も否定できる。理由としては眠り始めた時に能力が発動していないから。そしてさっきの事だけど鏡華が原山君に電話した時に原山君の意識ははっきりしていた。つまり起きている状態だった。これらの事から発動条件はボンヤリしている事だとわかるよ」

「な、なるほど」


 高田は時間を確認すると俺の目を見て言う。


「原山、確認の意味も込めてちょっとやってみたらどうだ? 鳥で家の窓を叩いて見てくれ」

「わかった」


 俺は無心になるように試みる。




 気が付くと俺の目の前の道路上には散乱した生ゴミが。

 まさか……。

 俺は自分の体を見回す。正に惚れ惚れするような漆黒の羽だ。

 カラスか……。で、ここはどこだ?

 辺りを見回すとすぐに場所がわかった。高田の家から10メートル離れてなかった。俺は飛んで高田の家の塀を飛び越え庭に着地した。高田と滝沢がジーと俺を見ている。俺は窓に近づきつつく。それを見ていた高田は立ち上がって俺の体│(元の)に近づき、顔を近づけると俺の顔│(元の)を軽く叩いた。




「はっ!」


 気が付くと俺のすぐ目の前に高田の顔があった。不意打ちじゃないけど不意打ちだ!

 俺は高鳴る心臓と紅潮していく顔の事実と高田から目を逸らした。


「ど、どうした原山?」

「なんでもない! この──なんでもない」

「なんなんだ?」


 危なかった。危うくブスと言いそうになった。こんな心にもない言葉で嫌われたら罪悪感と後悔で死ねそうだからな。前世なら本当に死んでるな。どうせ不死鳥だから生き返るけど。

 高田は俺から離れると自身が食べた食器を持って言う。


「原山の能力もわかった事だしそろそろ学校行くか。あ、食器流しに持って来てくれ」

「え?! 学校行くのか?!」

「当然だろう。だから制服で来いと言ったんだ。まあ、今日は授業やらないだろうがな」

「いや、何しに行くんだよ?」

「状況把握と情報収集。何か進展があるかもだし、金石にも会わないといけないしな。仮に授業あってもサボる」


 高田が流し台に食器を置くと滝沢も食器を流し台に持って行く。俺も食器を持ち滝沢の後に付いて行った。


****


「驚いた」


 先程言葉を発した男子──確か名前は木谷平太は頭を抱えて倒れている晴恋を見て言いました。

 私──シオンは昨日の夕食に引き続き朝食にと菓子パンを与えられ和食が恋しく思っていたのも束の間、体感で数十分後くらいに木谷と大学生くらいの男が私達を監禁している部屋に入って来ました。そして木谷はスマフオを操作すると晴恋が急に頭を押さえ苦痛の表情で泣き出しました。私達と一緒に監禁されていた男子も木谷に反発すると晴恋同様に頭を押さえ苦しみだしました。

 私と雛萌は同じ事を思ったのでしょうか? 木谷を刺激しないように私達は傍観しています。


「中山さん、まさかお前が超能力に目覚めるとは思わなかったよ」


 晴恋が超能力?!

 私は現在なんらかの手段により超能力が使えないので晴恋が超能力を使えるか使えない真意がかわかりません。しかし、少なくとも彼らは晴恋を超能力者でないとわかっていて連れて来たということですね。


「ふん……しかしどんな能力かはわからんな。おい、シオン=オルコール!」


 私は急に名前を呼ばれ一瞬ビクッと跳ね上がり返事します。


「なんですか?」

「ちょっと中山さんをサイコメトリーしてどんな超能力か調べろよ」


 私は木谷の言葉にムカつきましたが今は少しでも情報がほしい時、私はおとなしく従いました。もしかしたら晴恋が目覚めた超能力が突破口になるかもしれませんし。

 私は晴恋に近づき、晴恋に触るためにしゃがみ込みます。私は体を支えるフリをして床に手を付き、晴恋の手を触ります。

 木谷が私にサイコメトリーを使えと言ったのだから少なくとも今はサイコメトリーは使えるはずです。

 床から得た情報はこの建物の内部構造です。どうやらここはどこかの使われていない医療施設みたいですね。3階建てで地下があります。どうやら地下には部屋がたくさんあり、学校毎さらに学年毎に誘拐した人を振り分けているみたいです。

 晴恋から得た情報。まあ、関係のない情報は割愛です。なんとなく予想はしていましたが、どうやら『悪意』によって歪んだ超能力みたいですね。しかもこれは……。


「オルコールさん、それで中山さんの超能力はなんだ?」

「嘘破り……嘘を見抜く超能力です」

「ほぅ……」


 痛っ! 痛い痛い痛い! 痛い!

 私は急に襲う激しい頭痛に頭を押さえて倒れます。


「があぁぁーーーー!!」


 強烈な頭痛に襲われている私は醜い絶叫を上げ、床の上で陸に打ち付けられた魚のように暴れます。途中何度か晴恋を蹴ってしまった気がしますが、そんな事を気にしている余裕はありませんでした。

 どのくらい頭痛は続いたのでしょうか? やがて頭痛が治まると、私は疲労感でぐったりして喉が枯れています。


「嘘吐くなよ。それは中山さんが本来持っている異能力だろ」


 思考する余裕など私にはありません。かろうじて木谷の言っている事を理解するくらいしかできません。


「嘘……じゃ……あ……りません」


 再び激しい──先程以上の頭痛が私を襲います。


「そういうのいいから」

「う、嘘じゃ──」


 さらなる頭痛とともに私は意識が途切れた。

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