第52話
私と月見ははぐれていた晴恋と落ち合った。
晴恋は様子がおかしい感じだった。不安そうな、しかし嬉しそうな様子。なんでも私達とはぐれている間に新しい友達ができたとか。
気が付けばもうすぐ夕方だった。
私達は璃子達へのお土産に屋台でいろいろ買った。今は電車で帰っている最中だ。
「そういえば今日できた友達が妙なノートを買ってた」
晴恋が突然口を開いた。私はそれに応じる。
「妙なノート?」
「うん。手書き書かれた1000円もするノート」
「フリマで手書きのノートに1000円?!」
高過ぎるだろ。
「『王女への革命』ていうタイトルで作者がムーン……ブイアイイーダブリューアイエヌジー……て人」
ブイアイイーダブリューアイエヌジー? viewingか? moon viewingか。直訳すると月見ってところか。
私は月見を見る。月見はマズいといった顔で目を逸らす。
「何か知ってるのか?」
「知ってるといえば知ってるかな」
王女といえばあいつの異名だな。心配だが──
「まあ、いいか」
あいつなら後れを取らないだろう。
月見が直接介入すれば危険だが、普通の人が月見の書いた本を扱えるとは思えない。
私は窓に映る景色を見た。夕焼けが眩しい。
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「まったく、面倒だったわね」
「ああ、まさか北見と桃園と同時に会うなんてな。だけど成果はあるんだろ? 北乃」
「ええ、おかげで亀裂が入ったともいえるけど」
「ハハハ、まさか北見と桃園が鏡華ちゃんに好意があるとはな」
「どっちに転がるかわからないけれどね」
「だけどこれで朝山学園、夕山学園、夜山中学の最強達は鏡華ちゃんに好意を持っている事になるわけだ。モテモテだな鏡華ちゃん!」
「どいつもこいつもアウトローな人達よ。良くも悪くも高田鏡華が要ね」
「しかし、4校校争なんてそんなに危惧することか?」
「中山、これから起こるのがただの学校間の戦争だと思わないで、もともとアウトローな人達はもとより『悪意』で歪んだ者、『悪意』で歪んだ物を操る者が参戦するのよ。それに私達はどうやらあなたの妹含めて文芸部に良い感情持たれてないのよ。校争が始まったら真っ先に消えるのは昼山ね」
「いやいや、むしろ鏡華ちゃんがいる限り真っ先には消えね~よ。それに鏡華ちゃんの他にも月見ちゃんや伊集院がいるんだ。心配ね~よ」
「高田鏡華は普通の人間、滝沢月見は高田鏡華至上主義、伊集院風麿は『悪意』相手には役に立たない。全然駄目ね」
「手厳しいな」
「実際使える駒がその3人しかいないんだから仕方ないわ」
「だけどあいつら俺達より一歩先をわかってそうだぞ」
「それならそれで構わないわ」
「そうか。……はぁ、やっと病院に着いたぜ。まったく、怪我人の扱いが荒いなお前は……」
「私の方が重傷よ。あなたは2階から落ちただけ、私は2人に立て続けに暴行されたのよ」
「はいはい。俺が悪かったよ」
51話と52話で分けました。
次回は『天才俳優の公開処刑』です。




