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Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
魔眼・十さらに人形・邪道
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第49話

黒木 妖恋 : くろき ようこ


ほぼ晴恋メインですね

 硬すぎ。

 結局負けた。あのモンスター、銃弾50発撃ち込んでHPが10分の一も減らないとか笑えない。

 私がステージから下りる時の姫都の名残惜しそうな顔は印象的だった。

 私は月見と晴恋の元へ合流した。


「惜しかったね。鏡華さん」


 晴恋の労いの言葉に嬉しくなる。


「ああ、いけると思ったんだがな」


 私は晴恋に笑みで返した。

 月見がスポーツドリンクの入ったペットボトルを私に差し出しながら笑いかける。


「はい、お疲れ。暑いでしょ?」

「飲みかけじゃないか」

「今更でしょ」


 まあね。

 ボトルに付いた水滴は私に冷たさを伝える。


「じゃあもらおうか。ありがと」


 私は月見からボトルを受け取る。キャップを開けてスポーツドリンクを一気に飲む。飲み干すがやはり足りない。


「物足りなそうだね。もう一本買っといて良かったよ。はい」


 月見が満面の笑みで未開封のボトルを差し出す。私はボトルを見つめた後、月見と目を合わせる。


「最初からそっちを出せ。バカ」

「あら? いらないの?」

「ごめん。ほしいです」

「よろしい」


 月見は満足そうな笑みで私にボトルを渡す。

 私はボトルを受け取ると、スポーツドリンクのボトルを頬に付けてその冷たさを肌で感じる。冷たさを十分堪能した私はボトルのキャップを開けると、先程と違いパキッと音が鳴る。

 ドリンクを半分程飲む。


「あ、お金……」


 私はバッグから財布を取り出しかけると月見が言う。


「いいよいいよ。上げるよ。私からの頑張ったで賞、みたいな?」

「ありがとう」

「え、いや、なんていうかプライスレスだよ!」


 月見は先程の意地の悪い笑みからつられるように無邪気な笑みを浮かべる。

 確かにタダで貰ったからプライスレスだが。


「で? これからどうする?」


 私はこれからの方針を決めようと2人に聞いた。

 一応、璃子や伊集院達へのお土産として帰り際に何か食べ物を買うのは決定事項だ。それまで何をするかの質問だ。


「フリマ行きたい」


 答えたのは晴恋だった。


「私はいいよ。ここから近いし」

「私も賛成だ」


 月見と私は晴恋の意見に同意する。




 あれからしばらくして私達はフリーマーケットの会場に到着した。

 会場を見渡すとなぜかワクワクする。なぜか。

 しかし、問題が発生した。


「晴恋は何処へ行ったのか……」

「あの娘も一条に負けず劣らずトロいからね」


 気が付いたら晴恋がいなくなっていた。

 フリーマーケットの会場は割と広い。人混みもあるため迷子自体は珍しくない。しかし、会場に入って3分もしない内にはぐれるとは思わなかった。


「まあ、大丈夫だよ。もう中一だよ? いざとなれば携帯もあるし」

「それもそうだな」


 私と月見は晴恋を探すついでに店を見て回る事にした。




 後で気付いたけどこの時に携帯で電話すれば良かった。


****


 はぐれた。

 ちょっと目移りしている間に鏡華さんと月見さんはサッサと先に行ってしまったらしい。

 ひどい。2人して私を置いて行くなんて……。

 とりあえず携帯で連絡しようとバッグから携帯を取り出す。スマフォだけど。


「ん?」


 私がスマフォのホーム画面を見るとそこには見たことないアプリがインストールされていた。

 アイコンは黒衣を纏った骸骨が鎌を持っている正に死神という絵。


「death destiny game?」


 聞いたこともないアプリだ。名前からゲームのアプリということはわかるけど……。

 無論、インストールした覚えはない。

 気味悪い。

 ただ気味が悪かった。そして直感的に感じるヤバい雰囲気。


「どうしたの?」


 スマフォの件のアプリを見ていると急に私は背後から声をかけられた。

 澄んでいるがどこか暗い声。

 振り返ると、私より少し年上くらいの少女がいた。鏡華さんと同じくらいの長さの黒い髪はパーマがかっていてそれを総髪にしている。ワイシャツに黒いスカートと黒いネクタイを着用していて、上から下までの黒い着物はまるで喪服。口紅で彩られた真っ赤な唇。しかし、何より目を引いたのは薔薇の絵柄の黒いスカーフを目を隠すように巻いていたこと。


「えっと……なんでもありません」


 私が答えると少女は薄く微笑んで言う。


「嘘。何を持っているかはわからないけどそれが原因でしょう?」


 見えてる? 見えてない?

 私が答えずにいると少女は続ける。


「答える気はない? 別に良いけど。けれどあなたにそれは必要ないと思うけど」

「それとはこのスマフォの事?」

「それスマフォなの? ということはこの『悪意』の感じはアプリ?」


 私は少女の『悪意』という言葉に引っかかりを覚えた。

 昼山祭りの時に鏡華さんから聞いた事を思い出す。

『悪意』によって歪んだもの。鏡華さんを魅力した人形。


「まさか……このアプリが『悪意』で歪んだもの?」


 私は少女に聞いた。月見さんや伊集院君達からはこの事はあまり他人に言わない方が良いと言っていたけど、この少女は事情を知っているみたいだからいいよね?


「あなた、『悪意』の事知ってるの? 誰に聞いたの?」


 言っていいのかな?


「鏡華さん……鏡華さんは北乃先輩から聞いたらしいけど」

「鏡華……もしかして羅刹女の高田鏡華?」


 少女は私に聞いて来た。


「そう」


 私が答えると、少女の紅い唇が悪意で歪む。


「そう、そうなの。面白い。これは使えるかも」


 もしかしてヤバい人?

 少女は私の耳に唇を近づけて言う。


「ねえ? 私、このフリマにある物を探しに来たの。もし一緒に探してくれたら、そのアプリについて詳しく教えて上げるよ」


 耳がくすぐったくなった。

 だけど今はこのアプリについてできるだけ知りたい。少女も嘘を吐いてない。

 私は少女の提案に乗ることにした。


「ある物って?」

「ノート。名前はたぶん『王女攻略本』か『聖女攻略本』とかそんなのだと思う」


 はっきりしない。何かのゲームの攻略法を書いたノート?


「ゲームの攻略本?」

「う~ん……そんなところ」


 嘘。嘘だけどあえて付き合う。

 聖女や王女……まさか本物を攻略するわけじゃないからたぶん鏡華さんの異名の羅刹女みたいなものだと思うけど……。けど私の知っている限りでは聖女や王女といった異名の人は聞いた事がない。

 なんにしても『悪意』につい知ってるみたいだから油断禁物。


「それじゃ行きましょう」


 少女は私の前を歩き始めた。私も小走りして少女に並んで歩き始めた。


「目隠ししてるのに歩けるの?」


 私は疑問に思って聞いてみた。

 もしかして目が見えない?


「慣れてしまえば楽。あ! 別に盲目とかじゃないからね。ただ私の場合見えてると精神的に疲れるだけ」


 目が疲れるじゃなくて、精神的に疲れる。

 妙な言い回しだと思った。


「そうだ。そういえば名前聞いてなかったね。あなたの名前は?」

「中山晴恋。晴れに恋と書いてはるこ」


 少女はこっちを見て嬉しそうに微笑みかけて言う。


「あなたも恋と書いて″こ″て読むんだ。私の名前は黒木妖恋。妖怪──は嫌だな。妖艶の妖に恋でようこね。よろしくね」


 私は曇りの無い笑みに見惚れて慌てて言う。


「こ、こちらこそよろしく!」


 私は声を荒げてしまった。

誤解がないように言うと件の人形愛好家ではありません

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