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Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
魔眼・十さらに人形・邪道
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第47話

『2人目が決まったようです』


 私はステージに上がる。すると会場全体がどよめく。


「なっ! あいつ羅刹女じゃん!」

「あっ! 鏡華だ! お~い!」

「おい、あの娘……キスサバイバルに出てた娘じゃね?」

「キャー! 鏡華さまーー!」


 観客が私の話題をする。

 あの狂気じみた番組に出たためか町民以外の奴も私を話題にする。


『きょ、鏡華ちゃん! こ、こんにちは!』


 姫都が頭を下げる。

 アイドルとしてその対応はどうなんだ?


「姫さま、頭上げてください。アイドルが意味もなく頭を下げるものじゃないですよ」


 姫都が頭を上げると悲しそうな顔で目に涙を浮かべている。


『そんな……いつもは姫都って呼んでくれるのに……しかも敬語だし……』

「わ、私が悪かった! ごめん姫都」


 姫都はもう少しアイドル活動とプライベートを分けた方がいいと思う。


「へぇ~、鏡華ちゃんだっけ? 君人気者だね」


 北見が後ろから私に言った。

 振り返ると北見の綺麗な笑顔が目に飛び込む。


「どうも」


 私はぶっきらぼうに答えた。そして納得した。

 確かにこの笑顔なら女子を落とせそうだ。

 羨ましい奴だ。私が笑顔を作ってもこんなにならないぞ。


『えっと、とりあえずこの眼鏡をかけてくれますか?』


 私と北見は眼鏡──というよりどちらかというとガラスの部分が水色のゴーグルを渡される。私達はそのゴーグルをかけた。ゴーグルにはヘッドホンが付いていてここから音が出るようだ。

 事前の説明ではこのゴーグルのガラス部分は画面になっていて、ゲームに使う銃弾の残数などが表示されるらしい。ゲームを止める場合なども眼鏡のツルの部分にあるボタンを押す。

 正直な話ゲーセン向きだ。


『そしてこれが銃です!』


 さらに銃型のコントローラーも渡される。

 あくまでこのゲームの設定ではこの銃の銃弾装填数は十らしい。装填は持つところの下のボタンを押すらしい。


『2人とも準備はできました?!』

「できたよ」

「オーケーだ」


 一応靴履いて来て良かった。


『それじゃあ……スタート!』


 ステージ上にモンスターが現れる。


****


「兄達がここに来てる?」


 私は当然の疑問を投げた。

 一応私の兄は先日の事件で怪我を負った。さらに兄からも北乃先輩も怪我を負ったと聞いた。北乃先輩は知らないけど、確かに兄は出歩けないほどひどい傷ではなかったけど……。

 月見さんが私の疑問に答える。


「さっき2人がこの会場に入るところを見たからね。間違いないよ」


 本当の事らしい。


「とりあえず一回は直接会って話しておこうと思ったからちょうどいい。今なら鏡華もいないしね。鏡華の活躍が見れないのは残念だけど。晴恋はここにいてもいいよ」


 それだけ言うと月見さんは一人で歩いて行った。

 なんか怒ってるみたい……。

 私も一応ついて行く。鏡華さんが見れないのは本当に残念だけど。




 月見さんについて行くと、すぐに目的の2人が見つかった。


「こんにちは。北乃先輩、中山先輩」


 月見さんが思いっきり作り笑顔で背後から2人に声をかける。2人が私達の方に振り返ると2人は驚いた顔でこちらを見返した。

 兄も珍しく焦っている。それ自体が嘘の可能性もあるけど。

 北乃先輩は嫌そうな顔で言う。


「あなた達は……妹さんと滝沢さん……」


 どうやら私達は歓迎されてないみたい。


「嫌そうな顔してどうしたんですか? 私達と会うのは不都合でしたか?」


 月見さんは率直に言った。オブラートに包む気はない模様。

 北乃先輩は素知らぬ顔で言う。


「別に不都合はないわ」


 嘘。

 私は月見さんの邪魔をしないため傍観することにした。


「そうですか。それは良かった。ちょうど先輩達に聞きたい事があるんです」


 月見さんは自身の指を絡めて言った。


「今日何かあるんですか? 例えば……あの北見蓮十郎とか」


 いきなり核心を付く質問。

 しかし答えたのは兄だった。


「そうなんだ。あいつは『悪意』で歪んだ可能性があるからな。だからこうやって見張ってるんだ」


 兄が答えるとこれが嘘か本当かわからない。

 兄の嘘は一流。別に本人は嘘を好むわけじゃないけど、嘘を吐いたら私ですら判断に苦しむ。そもそも兄のこの上手い嘘は私との嘘突きゲームで洗練されたもの。

 私は助け舟出せない。しかし、これに月見さんは騙されるのかな? 策士として月見さんはどうする?


「そうなんですか。てっきり私は彼は純粋な超能力者だと思いました」


 北乃先輩が驚いたのか目を見開く。

 月見さんもこれを逃さなかったみたい。月見さんは私に目で合図する。今の挙動が本当か嘘か……。

 私は頷いた。

 今のは本当の事。


「どうしてそう思ったのかしら?」


 観念したように北乃先輩は質問した。月見さんは考える演技をしてから答える。


「推測ですよ。未だに接触してないようでしたからね」


 これは嘘。おそらく鎌をかけた。


「鏡華さーん!!」


 私は近くの急な歓声にビックリした。

 え? 何?

 月見さんが私の思っていた疑問に答える。


「昼小出身の人達だよ。鏡華の強さと優しさに惹かれた人達──憧れている人達は多いからね」


 納得。羅刹女という存在は他校からすると噂でしか聞かないから完全に恐怖の対象だった。だけど近しい人達からすると鏡華さんは優しい娘だとわかる。優し過ぎて心配になるくらいに。


「へぇ~、すごいな。鏡華ちゃん、夜山の王子の人気を喰ったよ」


 兄の言う通り。どうやら夜山の王子と羅刹女では知名度が段違い。これが地元のお祭りとはいえ改めて羅刹女という知名度の凄さを思い知る。

 月見さんを見ると月見さんは嬉しそうな、誇るような、見守るような顔で鏡華さんを見ている。そして名残惜しそうな表情をすると北乃先輩に向き直る。


「とりあえずあの北見の能力を教えてもらいましょう。……いや、その前にあいつの危険度かな?」


 月見さんは作り笑顔のポーカーフェイスで言った。


「対人心理戦じゃ叶わないわ」


 北乃先輩は観念したのかポツポツと話し出す。


「知っての通り彼の名前は北見蓮十郎。夜山中学2年E組所属。文武両道、だけどあなたや伊集院風麿程の頭脳を持っているわけでも高田鏡華のような運動神経があるわけでもない。私達が注目しているのはあなたの言う通り純粋な超能力者だからよ。それ故に彼は夜山中学を牛耳っているわ」


 超能力。私の知っている限りだとシオンさんがサイコメトリーと透視、璃子さんが予知夢を持っている。だけど私は疑問に思う。

 確かに超能力を持っている事はすごい。だけど生半可な超能力じゃいくら中学生相手とはいえ学校一つを牛耳れるとは思えない。現に璃子さんはともかく、シオンさんがウチの学校を乗っ取ろうとしても無理な気がする。少なくともウチの学校には超能力こそ持たないが、正に化け物が3人いるから。

 月見さんは考える素振りもみせずに言う。


「つまり洗脳の類ですか?」


 洗脳。確かに学校一つを牛耳るだけならこれほど一番の有力候補。


「確かに洗脳も持ってるかもしれない。だけど持ってないかもしれない」


 北乃先輩は歯切れ悪く答える。嘘でも本当でもない。本当にわからないのだろう。


「もし仮に洗脳なら生徒が洗脳されているか、それともされていないか私はわかるわ」

「まあ、洗脳に頼らなくても支配はいくらでもできますしね」


 月見さんは薄気味悪く微笑。私はそれに恐怖を感じた。

 月見さんはおそらく鏡華さんの事を言っている。

 北乃先輩は対抗するように笑みを浮かべる。月見さんに呑まれまいとするように……。


「それって高田鏡華のこと? それともあなたのこと?」


 月見さんは一瞬だけ眉をひそめたけどそれを隠す気はないみたい。だけどすぐに涼しい顔になって言う。


「へぇ~、北乃の霊力とやらは本物なんですね。それともどこかから仕入れた情報ですか? どうでもいいですけど」


 その時、兄が耳打ちして来る。


「北乃は鏡華ちゃんや伊集院と直接会うより滝沢と会う方が嫌だったんだ。読み会いの心理戦じゃ絶対に出し抜かれるからな。結局、羅刹女やラプラスより魔女を相手するのが一番面倒なんだ」


 私は兄を睨みつけて言う。


「そんなことより怪我してるのにこんな祭りに来ていいの?」

「北乃に連れて来られたんだからしょうがねぇだろ」


 正直な話、私は北乃先輩の事をあまり知らない。兄が家に招いた事もなければ、兄が北乃先輩の話題を出すこともない。

 だからなのか、私の北乃先輩に対する印象は悪い。今回の『悪意』の事に関して北乃先輩からすれば違うのかもしれないけど、私からすれば璃子さんが原因ということも鏡華さんがその責任を負うというのも完全に理不尽。言いがかり。そういう意味では文芸部の人達は北乃先輩に対して全員悪い印象。その中でも月見さんは怒りを露わにしていた。

 その月見さんは改めて言う。


「ま、いいですよ。今の態度だと何もわかってなさそうでしたし」


 月見さんは敬語を使ってるだけ。裏にある敵意も悪意も隠さない。


「とりあえずわかる限り教えてもらいましょうか? とりあえず鏡華の危険度をCとした時、北見の危険度はSABCDEFでどのあたりですか?」

「Aよ」

「逆にFは誰ですか?」

「一条璃子」


 璃子さん……確かに鏡華さんを基準にするならFかもだけど……。


「わかりました。あなたと話しても無意味ですね。それでは失礼します」

「え?」


 月見さんが突然そう言うと北乃先輩は間の抜けた顔になる。


「晴恋行くよ。この人達と話をしても時間の無駄だよ。鏡華の活躍見損なう」

「え? うん……」


 月見さんは本当の事を言って、踵を返し歩いて行く。私は月見さんの背を追いかけた。

 その時一瞬見えた兄と北乃先輩の呆けた顔は印象的だった。




 私は歩く月見さんに問う。


「本当にいいの? もしかしたらもっと重要な話が聞けたかもしれない」


 月見さんは薄く笑みを浮かべて答える。


「さっき北乃に言った通りこれ以上話をしても無意味だよ。たぶんあれはほとんど理解してない。『悪意』のことも北見のことも……」


 どういうこと?


「簡単な事だよ晴恋。私は既に独自で情報収集を行っていたわけだよ」


 そこに嘘はない。だからさっきの鎌かけができたのか。


「情報ってどうやって?」

「すべて教える事はできないけど金石とかと情報交換したからね」

「じゃあどうして北乃先輩から情報を探ろうと?」

「彼女しか持ち得ない情報を聞き出すため」


 よく考えればそれはそうだ。まず『悪意』の状況を最初に知ったのは北乃先輩。それに鏡華さんに話してないこともあるかもしれない。いくらでも接触理由はある。


「まあ、これでこっちの方が情報量で上回っている以上鏡華はあれに下手で出る必要はないんだよね」


 月見さんは言った。

 ずっと思っていた。

 月見さんは鏡華さんが好きらしい。これは周知の事実。果たしてそれが友情なのか恋愛感情なのかはわからない。いや、むしろそれはもっとドロドロした負の感情かもしれない。だからこそピュアな感情かもしれない。

 あの昼山の祭りの時、月見さんは鏡華さんの異変に真っ先に気づいた。今だってそう。月見さんは影から鏡華さんを守ろうと必死に見える。

 やっぱり月見さんにとって鏡華さんは特別な人なのだろう。

 あ……そうか、だから月見さんは璃子さんが嫌いなんだ。


「もしかして月見さんが鏡華さんを守る理由って──」

「友達だからだよ」


 月見さんは即答した。

 だけどそれは嘘。あまりにも軽くて薄くて脆くて儚い嘘。

 伝わって来るのは威圧感だけだった。


「そうだったね。晴恋は嘘がわかるんだよね」


 月見さんの冷たい笑みに私は頷く。

 もしかして地雷?


「悪いけど本当の事は言えないよ。私のために……」


『私』のためとはどういうことだろう。


「別にいい。私もなんとなく聞いただけだし」

「ごめんね。だけどただ一つ言えるのは私は鏡華に壊れてほしくないんだよ」


 本当。それには私も同感。

 月見さんは憂いと喜びを帯びた瞳でステージにいる鏡華さんを見つめていた。それはまるで戦場に赴くお姫様を見ている親のような、しかし騎士の活躍を期待する子供のようなそんな目。


****


 私は最初に現れたモンスターの一体に銃を撃つ。弾丸が一発当たりモンスターが消える。

 このゲームはHP制だ。銃弾を当てるとモンスターのHPが減少する仕組みだ。事前の説明ではプレイヤーにもHPがある。モンスターを攻撃する時、急所に当てると普通よりダメージが大きい。また、プレイヤーには弱点が存在しない。しかし、モンスターに比べてHPは低めに設定されているらしい。

 北見を見るとそちらも難なく撃退していた。

 眼鏡の画面にレベルアップという文字が表示される。これはステージがレベルアップするという意味だ。すぐに新たにモンスターが現れる。10体だ。

 私はすぐに6体を撃退する。北見も遅れながらも4体撃退した。


『2人とも凄いです! とても初心者とは思えませんね!』


 姫都の解説になっていない解説が入る。

 その後、私は北見を気にしながらもモンスターを撃退して行った。モンスターはステージレベルが上がる程、数や防御力、機動力、知能が上がって行った。攻撃力はわからない。

 ようやくラストステージだ。

 ここまで私も北見もノーダメージだ。

 モンスターが現れる。それはカマキリをモチーフにしたようなモンスターだった。


「大きいな……」


 全長3メートル位ありそうだ。鎌が大きい。回避できるのかこれは?


『遂にラストステージです! 然地堂の皆さんはまさかこの2人がここまでやるとは思っていなかったみたいです!』


 とりあえず私は弱点かもしれなそうな目を狙って撃った。6つの弾丸がモンスターの目に命中する。しかし──


「堅っ……」


 結論から言うと目は弱点だった。しかし、HPの減りが少なかった。


『え? あ、はい。……どうやら然地堂さんがモンスターの強さの設定を間違えたみたいですね』


 なるほどただの設定ミスか。

 姫都が喋り終えると、モンスターは鎌を振るった。私はバックステップでギリギリ回避し、他の弱点を探すべく銃弾をあらゆる箇所に撃ち込む。当然通常ダメージだ。

 その時、私の耳に引き金を引く音が聞こえた。

 私は銃声とともに体を反らした。たぶん回避できた。私は私に向けて銃を撃った張本人を見た。

 やっぱり私に撃ったな。北見蓮十郎!

時間掛け過ぎ? 忙しかったんです。

しかもまだこの章半分も行ってない。

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