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Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
アルビノ少女・一条璃子
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第5話

ご都合主義全開

 私は彼女と別れ、すぐに演劇部の部室に行かずに職員室へ赴いていた。

 理由は演劇部の顧問の先生に入部届けを提出するためである。


「わかった。確かに受け取った。この時間ならたぶん部長は視聴覚室いるだろう」

「部室じゃないんですか?」

「ああ。文化系で部室を活動場所に使ってる部は少ないぞ。吹奏楽とか科学とかな」


 なるほど。確かに吹奏楽の練習は部室棟の部室じゃできなさそうだもんね。


「演劇部は道具作りを部室で、演技の練習を視聴覚室で行ってるんだ。で、部長は役者だから視聴覚室に行けば会えるだろ」

「わかりました。ありがとうございます」


 私は深く礼をして、踵を返し職員室から出た。

 私は直接視聴覚室に向かうことにして歩いていた。その時、私は彼女のこと、文芸部のこと、文芸部に在籍しているあの女のことを考えている。

 なんなのよ。そんなに私と同じ部に入るのが嫌なワケ! あの女がいる文芸部には入るくせに! 何がモデルよ! ちょっとスタイルが良いからってさ。

 私は自分の体を見下ろした。小柄だ。目線が低い。自分でも不安になるくらい細い手足。

 少食だからな~。弁当、あんなに食べれないよ。そういえば彼女の弁当……最近かなり少ないけど大丈夫かな? 意地張って私のもらわなかったけど。

 私は首を横に振って彼女のことを無理やり意識の外に追い出す。

 そして私が視聴覚室に向かう道中にすれ違った上級生の二人が走りながら話しているのを聞いた。


「マジかよ! 一年が上級生と部室棟の前でケンカなんて! 上級生にケンカ売るなんて恐い者しらずだな!」

「ああ! しかも一年は女子らしいぜ! しかも相手はあの寺島グループだ!」


 はっ? 何だって?

 私は意識から追い出したばかりの彼女を思い出していた。

 まさかストレスが爆発してケンカ売ったんじゃ…………さすがにないか。

 彼女はあれで頭が良いからね。


「だけど、友達を助けに入ってケンカに発展した可能性はあるね」


 まあ。理由は何であれ彼女が簡単にケンカに負けるとは思えない。下手したら男子といえど中学生程度では彼女なら瞬殺だ。

 ところで、彼女のことが気になるかと言われたら、かなり気になる。私は視聴覚室に行くかさっきの上級生について行くか迷っている。

 しかし、迷っている間に上級生の姿は見えなくなっていた。


「まあ、いっか」


 私は視聴覚室に向かい再び歩き始めた。

 二階に上り、しばらく歩くと視聴覚室と書かれた札を見てそのまま扉を開けた。

 そこには数人の生徒が横に並び、それに向かい合うように一人の生徒がいた。


「さて今年の──どちらさん?」


 数人に向かい合う生徒が私に気づいて声を掛けた。


「あの……今日入部した一年の一条璃子といいます」

「新入生か。俺は演劇部の部長の塚原だ。よろしく」

「よろしくお願いします!」


 私は頭を下げた。


「ははは! そんなにかしこまるな」


 部長はなかなかカッコいい顔立ちをしている。体も中学生にしては大きいのではないだろうか。ただ野性味溢れているというか……なんというか悪役が似合いそうだ。


「君今、俺のこと悪役っぽいと思っただろ?」


 心を読まれた?

 私は慌てて否定した。


「いえ。思ってませんよ」

「ははは! よく言われるんだ。それより悪いけど今日は帰ってくれないか?」

「え? な、何でですか?」


 私は急に言われて焦った。


「いや。一年には来週にある程度集まったらまとめて話すからさ。一年の次の集合は一週間後だ」


 私は分けもわからないままとりあえず従った。


「わかりました。それでは失礼します」


 私は再び頭を下げて視聴覚室を後にした。

 私は再び来た道──廊下を走り部室棟を目指した。

 一階に下りると職員室に入ってく泣いている三人の男、堂々とした佇まいの彼女と私の大嫌いな女──滝沢月見がいた。

 なんだ。助けた友達は滝沢か。

 私は、彼女はしばらく出てこれない事と滝沢に会いたくないという理由から帰ることにした。

 私は上履きから靴に履き替えて学校を出た。外は夕方だが夕焼けというわけでもない空で、私は帰路についた。


****


 帰り道の途中、私と彼女がいつも待ち合わせる公園で幼稚園児くらいの女の子が泣いていた。私は公園に入り、女の子に近づいて目線を合わせる。


「どうしたの?」


 女の子は少し警戒していたようだが、少しの間泣くのを止めて私の顔をジッと見る。私を安全な人と判断したのかポツポツと女の子が話し出す。


「あのね。いちごがどっかいっちゃったの」


 いちご……。

 そういえば予知夢で見た影に捕まった女の子もいちごだった。


「いちごって何かな?」

「わたしのおともだち。くまさんなの」


 ヌイグルミか。ということはこの女の子が夢で隣りいた女の子か。しかし、いくら幼児とはいえ理由なくなくなるわけないよね。


「あなたはいつヌイグルをなくしたの?」

「ヌイグルミじゃなくていちご! なくしたんじゃなくていなくなったの!」


 女の子が怒る。

 怒る理由がかわいい。


「ごめんね。いちごさんはいついなくなったの?」

「わたしがみずをのんでるときにイスにおいてたらいなくなってたの」


 それって盗まれたんじゃないのか? でもこの娘が忘れてるだけかも。


「わかった。お姉ちゃんと一緒にいちごさんを探そうか?」

「ほんとに?」

「うん。とりあえず草の茂みを探そうか」

「うん!」


 たぶんあれから三十分くらい探した。

 草の茂み、木の枝、遊具の見えない部分、トイレなどいろい

ろな場所を探したがそれらしいものは見つからなかった。この公園はそこそこ広いがかなり広いわけではない。建物の裏などでない限り公園を見渡せるくらいの広さしかない。

 これは本当に盗まれたかな? もしかして夢で見た影にあたる何かに取られているのかな?

 私は諦めかけ、女の子は再び泣きそうになった時に公園の出入り口に女がいた。帽子とマスク、トレンチコートという怪しい格好だった。

 怪しい女はくまのヌイグルミを持ち言う。


「あなた達が探してるヌイグルミはこれかしら?」


 これに女の子が答える。


「そう! いちごちゃんをみつけてくれてありがとうございます」


 女の子がぺこりと頭を下げる。

 この状況……予知夢の状況と同じじゃん! だけどまだ女の子のあの台詞が出てない。もしかしてそんな台詞は言わない? だとしたらかなり抽象的な予知夢だ。

 怪しい女は私を一瞥し走り去って行った。


「あ……いちごちゃん」


 女の子は呆然として怪しい女を見送る。

 あの夢の通りならここは私だけで追いかけるんだよね?

 女の子は泣きそうになっている。

 当然か。

 私は女の子に目線を合わせて言う。


「あなたはここにいて。お姉ちゃんがあの人から返してもらってくるから。だから泣かないで? ね?」

「わかった」


 私は公園を出て怪しい女を追いかけた。

 足が速いわけでも体力があるわけでもない私が全速力で追いかける。怪しい女との距離は縮まらない。しかし離されるわけでもない。ただ時折、怪しい女は追いかける私をチラチラ見ている。

 どうしよう。なし崩し的に引き受けちゃったけど……やるしかないか。

 私は足が棒のようになっていてペースがかなり落ちていたが走るのを止めなかった。

 そんな時ブレザーのポケットに入れていた携帯電話が鳴った。私は追いかけるの止めずに画面に表示された名前を見る。

 鏡華ちゃん。

 携帯には彼女の名前が表示されていた。つまり職員室からの拘束が解けたらしい。私は彼女の電話に応じた。


「もしもし? ハアハア」


 私は疲れて息が荒くなっている。


『あっ! 出た~』


 彼女はうざい喋り方で応じた。


「ハアハア。何?」

『さっき職員室に入る前に見えたから~。まだ学校にいるかな~て思って……どうしたの~? 息切れしてるよ~』


 正直に言う? けど心配かけたくないし……。

 電話で話しながらでも怪しい女との距離は離されない。


「ハアハア。ちょっと──」


 事情があって泥棒を追いかけてるんだけど、と私は正直に言う。しかし、トラックが数台すれ違い様に通り過ぎる。トラックの走る音は私の声を消し、彼女の声を消す。数秒の間、私と彼女の間に無音の世界が訪れる。

 トラックが走り去り私は彼女の声を聞くことができた。


『──い! 今どこにいるの!』


 私は彼女の声で自分の今の状況に気づいた。私自身そんなに走ったわけでもないのに知らない場所にいた。

 私は立ち止まり、周りを見渡す。怪しい女も見失い、私はヤバいと感じ、息も乱れたまま彼女に説明しようと試みる。

 私は目の前にあるトンネルを見て、そこに刻まれている名前を言う。


「ハアハア。えっと……朝山ト──」


 私は脇腹に何かの衝撃を受けた。


「──が!」


 私は衝撃とともに吹っ飛び地面を転がる。携帯は手から離れ地面に落ちる。私は痛みを感じる脇腹に手を当て悶える。痛みに涙が流れる。

 携帯から彼女の声が聞こえるが自分自身の嗚咽と痛みで意識に入らない。

 私は攻撃してきた者を確かめた。そこには怪しい女が金属バットを持って立っている。怪しい女は私の携帯に金属バットを振り下ろし壊す。壊す。

 怪しい女はロープを取り出し私に近づく。


「ここら辺なら邪魔は入らない。お前は生け贄だ」


 怪しい女はマスクと帽子を取り私に美しい笑みを浮かべる。まるで私を敬うような。そんな笑み。

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