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Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
アルビノ少女・一条璃子
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第4話

滝沢 月見 : たきざわ つきみ



細かい事は気にしない

 私は璃子と別れ入部届けを提出する前に文芸部に寄ることにした。

 この学校はマンモス校で生徒はかなりの数だ。つまり生徒の数が多いということは学校も大きいということだ。この学校は大きく三つの建物に分かれている。教室や実技室、職員室などがある本校舎。武道場などのある体育館。そして体育会系は更衣室として、文化部は部室として主に使っている部室棟。若干の例外はあるが私が通う学校はこんな感じだ。とても市立とは思えない程広い。

 肝心の文芸部は部室棟にある。私は部室棟の前で五人の生徒──その内二人は女子とそいつらに絡まれている女子を見つけた。というより絡まれてる女子は私の友達だ。

 絡んでるのは上級生かな?


「てめえ、人にぶつかっといて謝る気もねえのか?」


 今しゃべってる男子は制服のボタンを全開にし、髪を金色に染めたマンガみたいな不良だ。

「私ぶつかってないし」


 友達の方は澄ました感じで言い返してる。むしろ迷惑そうだ。

 友達の名前は滝沢月見。年の割りにそれなりの長身でほっそりとしたモデル体型で長い髪は少し赤み掛かってる。確か何かのファッション雑誌のモデルで、私が入部する予定の文芸部員だ。

 正直どちらが悪いかわからないから助けに行けない。

 私はしばらく様子を見ることにした。


「さっきからムカつく女だな」

「お互い様だよ」


 言い返すね。つくづく事件を起こす娘だ。それにしても強気というか。一週間で早くも絡まれるなんて。


「てめえ、年上に舐めた口聞いてると痛い目見るぞ」


 金髪が切れかかっている。それでも月見は怖がることなく言い返す。


「どんな感じに?」

「こんな感じだよ! やれ」


 ことの成り行きをニヤニヤ見ていた体のでかい男子が金髪の一声で月見のお腹目掛けて殴りかかろうとしていた。

 さすがの月見もこの事態に固く目を瞑った。私はヤバいと思い男子が殴りかかる前に駆け出し、月見と男子の間に割り込み鞄で男子のパンチを受け止めた。けっこうギリギリだった。


「肩がぶつかったくらいでいきなり殴りかかるなんて非道いですね。先輩方」

「鏡華!」


 私は月見とともに五人から少し距離を取る。

 私の言葉に金髪が返した。


「誰お前?」

「誰でもいいでしょう? それよりこの娘が先輩方に何かしたのでしょうか?」


 金髪は舌打ちし、肩を抑えながら言う。


「そいつはなー! 俺の肩にぶつかってきたんだよ! 痛っ! 骨折れたかもしれねえ」


 金髪の話を聞き他の四人がゲラゲラ笑う。

 さっきからこの金髪は凄んでるが、正直全然恐くない。

 月見が涼しい顔をしてるわけだ。月見も災難だな。こんな奴らに絡まれて。モデルだから滅多な事件を起すわけにも行かないし。


「そこの眼鏡のブス」


 私のことか?


「今のことは目を瞑ってやるからそいつを置いてどっか行けよ」


 四人がさらに下品に笑った。


「そうですか? それではお言葉に甘えて」


 私は眼鏡を外し地面に置く。


「これで見逃してもらえるなんて良かったね」

「そうだね!」


 私は月見の方を向き、月見と薄い笑みを浮かべた。


「てめえ! ざけんのもいい加減にしろよ!」


 金髪は私の眼鏡を踏み潰そうとし、私は素早くかがみこんで踏み潰される前に眼鏡を回収した。

 私は眼鏡をかけ直し、金髪に言う。


「眼鏡を踏もうとするなんて非道いじゃないですか。というか本当に骨折れたんですか?」

「そうだよ! これは慰謝料もんだよ! 有り金全部置いてけよ!」


 一々叫ぶなよ。元気じゃないか。


「針金なんて持ってませんよ。月見は持ってる?」

「持ってない」

「針金じゃなくて有り金だ!」


 知ってるよ。わざと間違えたんだよ。


「お金置いてってもいいですけど……情けない男」

「んだと?」

「だってそうでしょう? 女の子がぶつかったくらいで折れるとかか弱過ぎだろ」

「ちょっと鏡華、いくら事実でも本人の前で言うのやめなよ」


 月見も私の挑発にノリノリで参加する。

 私は口を手で抑える。


「いけない。これは言っちゃ駄目か」


 金髪が黙って私達の会話を聞いている。


「先輩が年下の女の子の肩にぶつかって骨が折れるなんて恥ずかしいですよね。でもそんな小枝以下の男にぶつかったのは私の友達……悪いのは私の友達ですね。ごめんなさい先輩」


 私は金髪に頭を下げる。私は頭を上げ月見に慌てた感じに言う。


「ほら! 月見も謝って」

「すみませんでした先輩」


 月見も深々と頭を下げる。

 いつの間にか現れたギャラリー達は私達のやり取りを見て笑い声を上げている。

 私が金髪の顔を見ると、その顔は怒りに歪んでいる。


「てめえら許さねえ!」


 金髪は私達を殴ろうと走って距離を詰めて来る。私は月見に危害がないように後ろに下がらせて鞄を渡した。そんなことをしていると金髪が殴れる距離まで来ていた。

 大した事ないな。

 金髪が殴ろうと腕を振り上げる。私は金髪が殴りかかる前にさらに距離を詰め、右手で金髪の腹を殴った。


「おぐっ!」


 金髪は腹を抱え崩れ落ちた。


「あんた達もかかって来たらどうだ?」


 私は腰に手を当て余裕の笑みで四人を挑発する。


「よくも寺島を!」


 体の大きい男が私に向かって走って来る。私は左に避けて大男の足を掛ける。走っていたせいで大男は盛大に転んだ。起き上がろうとした大男の背中を私は思いっきり踏みつけた。


「あんたも来るか?」


 私は残ったピアスの男に言う。ピアスはビビったようだが、まるで勇気を振り絞るように叫び、私に向かって来る。


「勇気のある奴は嫌いじゃない」


 私は大男から足を退けピアスの膝を蹴る。そのまま痛そうにして立ち止まっている男の腹を蹴る。ピアスがよろけて後退している視界の端に再び起き上がろうとする大男が写り、私は膝を着いてしゃがみこみ、大男の頭を掴み自分の体重に任せ勢い良く押し付けた。


「先輩。骨を折ったことを許してくれるなら見逃して上げますけど?」

 私は腹を抱えて立ち上がる金髪に言った。


「誰が許すか!」


 金髪は近くに放置されていた椅子を持ち上げる。

 これママにバレたらやばいな。

 金髪が私に椅子を垂直に振り下ろす。私は半歩分下がり体を横に向けて、座る部分を回避し、四本の椅子の足の間をすり抜ける。私は地面に叩き付けられた椅子の座る部分の裏側を力を入れて押し込むように蹴り、金髪は背もたれの部分を腹で受けた。

 金髪が手を放し地面に落ちた椅子を再び蹴り、腹を抱える金髪の向こう脛に背もたれの部分が当たる。金髪は脛を抱えて苦しそうにしゃがみこむ。

 私は後ろからの足音に気がつき振り返ると、ピアスと大男が同時に走って近づいて来る。


「先輩達もなかなか意地を張る。腹パン一発で沈む軟弱男よりマシか」


 私は大男より少し前にいるピアスの襟首を掴み、すぐ横の大男に向けて力任せにピアスの軌道を変えた。大男は驚いた後ピアスの体当たりを喰らい、よろけたところで膝の裏を蹴り、膝カックンの要領で転ばせた。

 ピアスがよろけて体勢を立て直す前に左胸目掛けて横向きに殴る。ピアスが大男の上に倒れ込んだ。

 もういっか。

 私は月見の元へ歩いて行った。


「ありがと。鏡華」


 月見は鞄を私に渡して言う。


「最近のあんたには正直ドン引きしてたけど久しぶりに本当のあんたを見れてラッキーだったわ」


 私は月見に呆れつつ、璃子の予想より早くボロが出て悔しくて。私はそれを表情に出さずに月見に言う。


「私は天然記念物か」

「あはは」

 ただ言われたままなのもムカつくので一応言い訳をする。

「あのねぇ。私はあんたが絡まれてたから助けただけなんだよ? わかってるのか?」

「本当にありがとうね鏡華。あの時は本当にヤバかったからね」


 私は溜め息を付いて、腰に手を当てて言う。


「まったく……。そうだ。月見、あんた──」


 確か文芸部だよね、と言おうとした時に野太い男の声に遮られた。


「お前達か? これをやったのは?」


 月見は私の後ろにいるであろう男を緊張した顔で注視している。

 私の記憶上、今の声は学年主任の声。

 私は恐る恐る後ろを向いた。


「うわ!」


 私は思わず驚いた声を上げてしまった。そこには恐い顔をしたオッサン──学年主任が腕を組んで立っている。

 私は瞬時にか弱い乙女を演出した。


「違いますよ~! あれはあの人達がいきなりケンカを始めて~──」

「とりあえずお前達も職員室に連いて来い」

「私もですか?!」


 月見は疑問の声を上げた。しかし学年主任の有無を言わさない無言のプレッシャーを月見に与えて黙らせた。

 いつの間にか一緒に絡んできた女子二人はいなくなっていた。私達と絡んできた男達は黙って学年主任に従った。

 後にこのケンカは「新入生の上級生暴虐事件」として学校中に広まることになる。

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