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Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
エスパーガール・シオン=オルコールさらに魔眼・魅了
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第36話

視点移動が多い

 夜6時。カラオケを終え私達は北乃神社に赴いていた。

 北乃神社は広い。社の他にも趣のある建物が敷地内に点在する。

 道に沿って露店が並んでいる。チョコバナナ、綿菓子、焼きそば、食べたい物はたくさんある。というより昼ご飯食べてないからお腹空いていた。

 私は璃子と姫都に挟まれて歩いていると、喧騒とともに耳に話し声が聞こえる。


『おいおいあの嬢ちゃんじゃねーか!』

『マジか?! あの坊主も一緒にいるし……』

『あいつら友達なのかよ』

『あの二人、金魚すくいには来ないから安心だぜ』


 坊主って誰だ?

 その時、晴恋とともに前方を歩いていた伊集院が後ろを振り返り、私を見て言う。


「嬢ちゃん。射的しない?」


 嬢ちゃんとは私のことだろう。そして、おそらく坊主は伊集院だ。


「面白い。いいだろう」


 おそらく今私は悪い笑みを浮かべているだろう。


「璃子と姫都、あの射的屋で欲しいものあるか?」


 私は射的屋を指して言った。


「え? 何?」

「どれどれ?」


 璃子と姫都は射的屋を覗き込む。

 個人的にめぼしいものはない。強いていうならお菓子くらいだ。


「あのクマのぬいぐるみがいいな」


 璃子が少し大きめで触り心地のよさそうなぬいぐるみを指さした。


「じゃあ私はあれで!」


 姫都が白いうさぎのぬいぐるみを指さす。

 二人ともぬいぐるみ……面倒だな。


「高田さん、何を当てるか決めたかい?」

「もちろん。じゃあやるか?」

「いいよ。まあ、僕の勝ちだけど」


 伊集院は不敵に微笑み銃を構える。

 無駄に絵になる奴だ。


「言ってろ」


 私も銃を構える。

 私と伊集院は同時にコルクの弾を撃った。


****


 私と大樹は射的屋で勝負している鏡華と風麿を見ながらおしゃべりしています。

 大樹は腕を組んで私を横目に言います。

「シオンは高田と伊集院──いや、ルーラーとラプラスデーモンどっちが勝つと思う?」


 なんで言い直したんでしょう? 今更ですけど。

 ふむ、と私は呟き喋ります。


「風麿ですね」

「なるほど、俺もそう思う」

「どうしてそう思うのですか?」

「簡単だ。アイツらの予測に関しては、ラプラスデーモンは精度が高く瞬間的な論理的計算だがルーラーは自身の運動神経に頼った直感的計算だからだ」


 ほとんど私と同意見のようですね。だけど──


「ラプラスデーモンとかルーラーとかややこしくなるんで普通に伊集院と高田でお願いします」


 大樹は非常に残念そうな顔で再び喋ります。


「簡単な話、伊集院は極めて広範囲で長期的で高精度の予測、高田は自己的で瞬間的で心理的な予測だということだ」


 なるほど。ちょっとわかりませんね。


「つまりどういうことですか?」

「う~ん。上手く言えないんだが、伊集院の予測は具体的──物理的、分析的な計算をする。例えば、数学や理科みたいに計算するんだ。対して高田は抽象的──心理的で感覚的な計算という感じか? もちろん多少の物理的な計算はしてるんだろうが──」

「つまり風麿は論理的で鏡華は直感的ということですね」

「あ……うん、そうだな」


 大樹の説明曖昧過ぎです。聞けば聞くほどわかりません。

 その時、鏡華と風麿の射的対決が終わったようです。

 鏡華が大量のお菓子を持ってガックリと肩を落としています。


「負けた」


 鏡華はボソッと呟きました。しっかりと璃子と姫都はぬいぐるみを持っています。おそらく戦利品の数とかで負けたのでしょう。


「いや~、高田さん。これでしばらくオヤツには困らないね」

「そうだな。シオンと原山にもお菓子を上げよう」


 鏡華は、私にはチョコレート菓子、大樹にはいろんな種類の入った煎餅をくれました。


「じゃあ花火までまだ時間あるし露店を回ろう! 姫都はチョコレートバナナ食べるか?」

「うん、食べるよ! 私チョコバナナ大好き!」

「奇遇だな。私もだ。ちょっと待ってろ」

「鏡華」


 鏡華は目を輝かせながらチョコレートバナナの店に行ってしまいました。


****


 チョコレートバナナを食べ終えた私──私達はあらゆるゲーム式の露店をターゲットに少ないお金で賞品を巻き上げていた。というより、やることが特になかったのでそんな形になった。もちろん荷物が邪魔になるので元が取れそうなお菓子だけを巻き上げた。

 去年の話だ。私は無差別に露店から賞品を巻き上げた結果、荷物になることを学習した。

 一通り露店を回った私達は花火の時間まで適当にぶらつくことにした。

 人が行き交う道で、私は璃子達から一歩引いて考え事をしていた。

 現実逃避だよな。昼間にあんな話があったのに……。それにしても政府絡みねぇ……。裏を取るために悪神童に会っとくべきか? それ以前に一応悪神童のことも北乃先輩に話しとくべきか? あの残虐で邪気を無邪気に振り撒く思考の持ち主。

 悪神童。私が出会った中でもぶっちぎりで思考が歪んだ幼女。邪気的な思考だから頭が良いのか、頭が良いから邪気的な思考なのか……正にコロンブスのタマゴだ。

 つまり『悪意』で歪んだ者ってあんなのも含むんだろうな。


「鏡華ちゃん!」


 隣にはいつの間にか璃子が私の顔を覗き込んでいた。

 赤い目と白過ぎる白い肌と毛は神秘的だ。

 アフリカの方ではなんでもアルビノ狩りというのが流行っているらしい。その実態は人身売買だ。おそらくアルビノのその神秘的な毒気にやられた奴が起こした結果だろう。

 神秘的な人間というのはその毒気で制する支配者か、その毒気で中毒者になった奴の玩具になるかのどちらかだろう。

 果たして私はこの娘に支配されてるのか、それともこの娘を玩具扱いしてるのか。

 どっちでもいいか。私は友達を守るだけだ。私は無力でもなんでもないんだからな。それにしても……本当に私は特別なものが好きだな。


「璃子……あんたって超能力者?」


 自然に出た言葉だった。

 璃子は驚いた顔をする。


「そんなわけないか」


 私は自己完結する。

 まったく何言ってんだか。


「そ、そうだよ! そんなわけないじゃん」


 璃子が慌てて私に同意した。

 なんか嘘っぽい同意だな。


「よう」


 後ろから不意に私と璃子は声をかけられた。

 聞き覚えのある声だった。


「なんですか? 中山先輩」


 私はそう言った。振り返るとヘラヘラした中山先輩が手をひらひらさせて歩いて来ていた。


「こんにちは。中山先輩」


 璃子も中山先輩の方へ向きお辞儀をした。

 そういえば二人とも演劇部だったな。


「中山先輩と鏡華ちゃんは知り合いなんですか?」


 璃子の問いに中山先輩が答える。


「まあね。ちょっと個人的な付き合いがあるんだ」

「え? 鏡華ちゃんと中山先輩付き合ってるの?!」


 何。その不本意な誤解。

 私は璃子の誤解を解くために話の輪に入る。


「違う。ちょっとした利害関係だ。そもそもこんな腹黒そうな奴タイプじゃない」

「冷たいな鏡華ちゃん。俺との仲だろ?」

「名前で呼ばないでください。あんたなんてお金もらってもお断りです」

「ちょっとお兄ちゃん!」


 私と中山先輩が言い争う中、晴恋が怒声とともに間に割って入った。


「私の友達にふざけたちょっかい出さないで」


 晴恋が中山先輩を睨み付けている。


「晴恋、俺はふざけてないぞ。本当に俺と鏡華ちゃんは秘密の関係なんだ」


 だから名前で呼ぶな。後、微妙に言い訳しにくいこと言うな。しかも晴恋の前で。

 晴恋は目の色を変えていつになく真面目な表情だ。


「本当なの?」


 その言葉は私に言ってるのか? それとも中山先輩に言ってるのか? どっちにしても晴恋が真偽を図りかねている?

 晴恋の嘘破りは人間相手の嘘はほぼ確実に見抜く。中山先輩の言葉は一応嘘ではないからありえない状況に晴恋が戸惑っている可能性もあるが。

 とりあえず晴恋の疑問に私が答える。


「ある意味本当だ」


 晴恋の前で嘘言ったって仕方ないため本当のことを答える。


「ふ~ん。もしかしてあの隠し事って晴恋のお兄さん関係?」


 月見が右手で私の左肩を乗せ、左手で私の手首を掴み、体をベターとくっつける。


「月見ベタベタしないでくれ。暑い」

「答えたら離れてあげる」


 月見は小悪魔な笑みで私を見る。

 ここで私にある考えが過ぎる。

 もしかして、晴恋の嘘破りは中山先輩に対して100パーセントの的中率じゃないのか? だったらいっそのこと中山先輩に丸投げするか。そうすれば私の言葉での真偽はわからなくなる。


「中山先輩がよく知ってるよ」


 月見が視線を私から中山先輩に向ける。しかし、月見は何も言わずに私から離れた。そして誰にも聞こえないような声で私に向けて呟く。


「優しい嘘。だけど残酷な優しさ」


 そして月見は傍観していたシオン達の方へ歩いて行った。

 月見のその言葉は小さいけれど私の耳に大きく響いた。

 それはまるで私の隠し事は全部知っていると言わんばかりだった。

 まさか全部気付かれてる? 気付かれようがない。いや、月見の場合気付かれてないという確証が持てない。……とりあえず──


「私と中山先輩の関係は北乃先輩とともにちょっとした協力関係を結んでるだけだ」


 仕方ないので自分で言った。

 間違ってはいない。ただ肝心の部分はあやふやにした。

 私はさらに続ける。


「中山先輩もそういうふざけたこと言わないでください。下手なこと言ったら協力しませんから」


 私は身を翻して月見が向かった場所と同じ、シオン達の元へ歩いた。


「ちょっと待ってよ鏡華ちゃん! 中山先輩、失礼します」

「じゃあねお兄ちゃん。ついて来ないでね」


 後ろから璃子と晴恋の追いかける足音が聞こえた。


****


「よう北乃。巫女服似合うな」

「あなたか。当然よ。私は神社の娘、似合わなかったらそれは神社の娘と言えないんじゃないかしら」

「意味わからん。それより今さっき高田鏡華と会って来たぞ」

「へえ。あの娘、去年露店を荒らしまくってったからね。今年も来ると思ったわ。それで? あの娘は他の人達に喋ってた?」

「いや喋ってないな。だけど──」

「だけど?」

「滝沢月見と俺の妹の晴恋、詳しい内容はわからんとは思うけど何か感づいてる。最も晴恋は滝沢月見に協力してるといった感じだが」

「ふ~ん。一条璃子と伊集院風麿は?」

「おそらく二人とも気付いてないな」

「そう……。案外一条璃子は役に立たないわね」

「そうかもね。だけど一応俺の後輩だから悪く言わないで」

「悪かったわ。原山大樹は?」

「あれは気付いてないな」

「即答ね。不死鳥の転生者といっても所詮は人間か……」

「後いたのはあの大人気アイドルの姫路姫都だな」

「あ~、やっぱあの娘友達になってたのね」

「だけど気付いてる様子はないな。あの高田鏡華に向けてた熱烈な視線から信頼はしてるようだが」

「当たり前よ。日が浅いんだから」

「後、シオン=オルコールも気付いてないな」

「でしょうね。あの娘も日が浅いうえにただの外国人だしね」

「で? 総評は?」

「滝沢月見がおそらく一番最初のあの娘の協力者になるわね」

「案外寺スかもしれないぜ?」

「ダークホース過ぎでしょそれ」

「違いない」

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