第35話
シオン視点のメンバー考察が主です。
なんか吹っ切れました(笑)
私は一旦家に帰り制服から私服に着替えた。
濃いピンクのプリーツスカート、薄いピンクのTシャツ、眼鏡もピンク縁の眼鏡にかけ変えた。
鏡の中の自分が腕を組んで眉をひそめている。
ポニーテール微妙か? 下ろしてもいいけど暑いしな……。
その時、突然携帯電話の着信音が鳴った。私は携帯のディスプレイを見る。
姫都?
私が時計を確認すると待ち合わせ5分前だった。携帯を耳元に持って行く。
「やあ、姫都」
『こんにちは鏡華ちゃん! 昼山駅に着いたよ。どこにいるの?』
家だよ。
私は急いで靴を履きながら対応する。
「まだ着いてない。駅前にある大きな木の前にいろ」
『わかった!』
私は一方的に電話を切ると、家から出て走って駅を目指した。
****
時間はもうすぐ午後1時になろうとしていました。
「シオン」
私──シオン=オルコールは声の主である月見の方を向きました。
月見は紫を基調とした浴衣を着ています。
月見だけではありません。璃子は赤、晴恋は淡いピンク、私は青色を基調とした浴衣を着ています。風麿と大樹も地味な男物の浴衣を着ています。
「なんですか?」
私が聞き返すと、月見は赤みががった髪を耳にかけつつ言います。
「綿菓子少しくれない?」
「どうぞ」
「ありがと」
月見は私が持っている綿菓子を指差しました。私は持っている綿菓子を差し出します。月見はそれをひとつまみして、口に持って行きます。
「そういえば高田さんは今日浴衣なのかい?」
風麿は誰に言うわけでもなく言います。
「鏡華ちゃんは浴衣持ってないよ。確か」
璃子が風麿の疑問に答えました。
「「それは残念」」
男子二人が綺麗にハモりました。
「「本当に残念」」
こちらも月見はタッチパネルのケータイであるスマフオをいじりながら、晴恋は本当に残念そうな顔でハモりました。
高田鏡華。私は今年の春に転校して来たのでもちろん鏡華の噂なんて知りませんでした。転校した当日クラスメイトが放った言葉は、鏡華の逆鱗には触れるな、でしたからね。そして私は興味本位で鏡華の正体と噂の真相を確かめるべく、自分でも下らないと思いつつも自身が持つ超能力『サイコメトリー』と『透視』を使って調べました。実体こそ違えどほとんど事実でした。
相手が小学生といえど──むしろ小学生同士だからこそ支配というのは難しいです。なぜなら子供が子供を支配するには大人以上に圧倒的なカリスマ性と能力を要するからです。子供は純粋だからこそ、単純な能力を見て、単純な魅力──カリスマ性を見て、尊敬し畏怖します。
それがこの間のテレビ番組。他者を寄せ付けない圧倒的な強さ、アイドルの姫路姫都に向けたであろう他人を魅了する勝ち気な微笑み。妙に納得してしまいました。
それはそれとして私も鏡華の浴衣は楽しみにしていたんですけどね。
「そうだ晴恋。鏡華と合流したらしばらく鏡華に注意しててくれないかな?」
晴恋は月見の言葉に疑問を呈します。
「え? なんで?」
「別に悪いことしようとしてるわけじゃないよ。ちょっと確認したいことがあってね」
その時、怪訝な表情の璃子が二人の話に割り込みます。
「滝沢さん、一体何を企んでるの?」
璃子は晴恋を睨み付けます。月見もそんな璃子に余裕の笑みで応えます。
「一条さんには関係ないよ」
「そういうわけにはいかない。あなたが鏡華ちゃんに前したことを考えると黙って見過せない」
月見は肩をすくめてから言う。
「私ね。この際はっきり言うけど一条さんの事嫌いなんだよ。あの女程じゃないけど」
「奇遇だね私もあなた嫌いだよ。それに私もあの女はあなた以上に嫌い」
滝沢月見。モデルとしても、策士としても才能が私達と一線を画しています。特に策士としての才能は鏡華を出し抜く程です。
一条璃子。一条財閥のお嬢様でアルビノ。私と同じで超能力である予知夢を使えます。
「ちょっと、月見も璃子も何ケンカしてるんですか」
私はさり気なく困っている晴恋の手に一瞬触れた。
中山晴恋。嘘を見抜くことが上手いです。その一点に関しては右に出るものがいません。
お互い嫌ってるのは事実なんですね。さらにお互いそれ以上に嫌いな女の人がいるのも。
私のサイコメトリーは手──正確には手の平に触れたものの思念及び残留思念を読み取ることができます。一番思念が読み取れるものは人の手の平。この能力は基本的に意識的に封じているんですけどね。自分自身が他人に感化されて危ないですし。これは幼少の頃から透視とともに持っている超能力です。
風麿と大樹もさすがに止めに入る。
「祭りの日にケンカするのは良くないよ」
「そうだ。見てて気分が良いものじゃない」
伊集院風麿。驚異的な演算能力と記憶力で未来を予測する程の天才。鏡華も同じことができるけど、その予測範囲と精度は風麿のそれに遠く及びません。
原山大樹。能力は高水準ですがある意味これといった特徴がありません。しかし、内面は自身を不死鳥の転生者と思い込んでいますし、見せびらかしませんが誰よりも膨大な知識を持っています。
私見ですが鏡華以外も変わり種が多いと思います。そういう意味ではただ運動能力が高くて、ちょっと頭が良いだけの鏡華はこのメンバーの中では誰よりも普通ですね。それでもこのメンバーであの番組を攻略できるのは鏡華くらいのものでしょうけど。
「だ、そうだよ。一条さん」
「ごめんなさい」
璃子はしぶしぶ月見に謝る。
この二人は本当に鏡華のことが好きですね。
「みんな~!」
タイミング良く私達の耳に私達を呼ぶ鏡華の声を聞きました。
「待たせたな」
鏡華が本当にあのアイドルの姫路姫都を引き連れて近づいて来ます。
姫路姫都は黒のキュロットスカートと半袖でフリルの白いシャツです。
「こんにちは姫路さん。私は滝沢月見です」
月見が真っ先に挨拶する。先程の余裕な笑みから一転、満開の笑顔です。
「こんにちは! 私、姫路姫都です!」
姫都は快活な笑顔で元気良くお辞儀した。
その後、私含め他の面々が自己紹介しました。
「鏡華ちゃんの友達って個性的だね」
姫都の言葉にあえて誰も否定しない。
よく考えると何でしょう? この一味は……。モデルとか財閥令嬢とかアイドルとか。それ以外の人も顔は無駄に良いですし。
「とりあえず夜までカラオケでも行かない? 夜もあるのにこれ以上は祭りに飽きるよ」
月見の意見に風麿が応える。
「そうだね。さすがに飽きたね」
風麿の賛同を皮切りに賛同者が増えていきます。
「私達まだ回ってないから──」
「却下」
月見は鏡華が何か言う前に言葉を下しました。
鏡華はムッとしてさらに言います。
「じゃあ私と──」
「益々却下」
月見がさらに言葉を下しました。
鏡華は不機嫌を顔に出しています。
「月見、あんた──」
「わ、私はカラオケでいいよ!」
雰囲気を察してか姫都が二人を止めに入ります。
「姫路さんもカラオケでいいって言ってるしカラオケでいいでしょ?」
「まあ、姫都がいいならいいが……」
鏡華はあきらめた顔をして言います。
「あそこの唐揚げ、夜まで残ってるといいが」
「本当にあなたは唐揚げ好きだよね」
月見が呆れたように言って、鏡華をジッと見ています。
「ふ~ん」
「なんだ?」
月見は鏡華のすぐ目の前まで近づきました。鏡華は少し見上げる形で月見と目を合わせて言います。
「本当になんだ?」
「なんでポニテ?」
月見はそう言うと、鏡華の頭の後ろに手を回し髪を縛っているゴムに指をかけました。そしてゴムは髪を流れるようにして、まとまった髪を解放しました。鏡華の長くて黒い髪は勢いが付いてせせらぎのように揺れました。月見の手が鏡華の髪をなでおろします。月見の手が小川に浮かぶ葉のように流れます。
「おいおい、何少女マンガみたいなことしてるんだ?」
「悪いけど私は女だよ。その服着てるなら髪は下ろしといた方がいいよ。そっちの方がかわいいから」
二人を見ている私達含めたギャラリーの顔が赤いのは決して暑さの所為だけではないでしょう。釘付けになる者、目をそらす者。それだけ二人が甘美で完美、細かい動作が妖艶でした。仮に月見が男ならギャラリーは興奮でもっと大変だったと思います。
鏡華は照れて笑みを月見に投げます。
「まあ、私もポニーテールか下ろすか迷ってたから別にいいけど」
鏡華……あなたは本当に中学一年生ですか? なんですか? その艶美な笑み。
私は鏡華の笑みに釘付けです。ツッコミの人も仕事しないので止まりません。というよりツッコミの人は本人達でした。
鏡華も月見も年相応の容姿なのに双美です。
月見は名残惜しそうに鏡華の髪から手を離します。鏡華は肩にかかった髪を後ろに払いました。とてもさっきまでケンカに発展しそうだった人達とは思えません。
「みんなどうしたの? 何?! このギャラリー?!」
月見が周りを見て驚きます。
「いや……なんていうか」
大樹が口ごもりながら言いました。
「二人ともすごかったよ」
姫都が本人達からすれば意味のわからないであろう言葉を言いました。もちろん二人とも疑問付を浮かべます。
「それより月見と姫都、あんた達写真撮られてたけどいいのか?」
鏡華が周りを威圧するように言います。同一人物とは思えません。
撮られてたのは鏡華と月見だと思いますけどね。
「大丈夫だよ。たぶん撮られてたのは君達だから。少なくとも姫路さんは撮られてないよ」
風麿が鏡華になだめるように言いました。
「まあ、モデルの私程度ならいいよ。姫路さんが撮られるよりマシでしょ」
月見の言葉に怪訝な表情をしながらも落ち着いています。
「じゃあ早くカラオケ行こうか」
鏡華は気を取り直してみんなに言います。
「そうだね早く行こう。そろそろ行かないと姫路さんが見つかって大変な目に会うよ」
風麿の言葉でみんな一斉に動き出した。
****
場所はカラオケ。
私は月見に呼び出され、部屋から出て通路で並んで壁に寄っかかっている。
「話ってなんだ?」
私は腕を組み先に口を開いた。
「ストレートに言うけど……鏡華、あなた何か私達に隠しごとしてない?」
私はギョッとする。
月見は私の思考に潜り込むように私を見る。
なんでバレてるんだ? いや、鎌を掛けてるだけか? 挙動不審だったか私……?
私は耳を澄ます。月見の携帯がどこかに繋がってないか確認する。
繋がってないか。
私は再び口を開く。
「別に私だって隠し事の1つ2つあるぞ」
私は一応、晴恋の嘘破り対策に曖昧に返事をする。
晴恋は音声か映像があれば嘘か本当かわかってしまう。つまり、私はこの会話が録音されてることを前提で会話している。
普段なら別にそんなの警戒しないが先程北乃先輩とあの話をしたばかりだ。身構える。
「個人的に興味あるな~。鏡華の隠し事」
「趣味悪いな」
「確かに趣味悪いね」
月見が自分には関係ないといった感じで苦笑する。
「そもそもいきなりなんだ。月見はひとの隠し事を暴くのが趣味なのか?」
「別にそんな趣味はないけどぉ……」
月見は唇に指を押し当て刹那黙考する。
「じゃあこれだけは答えて?」
「質問による」
月見はニッコリと問い掛ける。
「その隠し事は私にバレたくないの? それともバレるのが嫌なの?」
「バレるのが嫌なんだ」
「ふ~ん。ありがとう鏡華。もう終わりだよ」
大して答えた記憶ないんだが……。
「もういいのか?」
「もう十分だよ。さあ、歌おうよ。デュエットしようよ」
月見が私の手を引っ張りリードする。
「そうだな」
私に様々な疑問を残し、月見は不敵に、そして嬉しそうに笑みを浮かべた。




