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Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
人気アイドル・姫路姫都
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第31話

 最終的に本戦第一回目で残ったのは私含めて八人だ。

 正に地獄絵図だった。

 私以外の残った人達ですら血だらけ痣だらけだ。リタイアした人達は本当に悲惨だった。


『今日はほとんどが第一回戦で脱落しちゃったね~! 姫は誰か気に入った人はいるかい?』


 姫こと姫路姫都がマイクを持って答える。


『えっと……みんな生き残ってほしいな!』


 確かにみんな生き残ってほしいな。


『気に入ってる人だよ~?』


 姫路姫都が私を見る。一瞬目が合うと目を逸らす。


『高田さんかな?』


 アイドルも大変だな。


『確かに高田選手はカッコ可愛いね!』


 他の人達に向けられた嫉妬の視線が痛かった。


『姫が誰を気に入ってようと優勝した人がキスできるんだ! 選手の皆さん! 頑張りましょう!』


 煽るな~。


『さて、第二回戦は熱湯相撲だ! フィールドから熱湯に落とすという単純なゲームだ! キリもいいし、今回は一対一での戦いだ! 勝った四人が第三回戦に進めるぞ!』


 ということは後は全部一対一のゲームか?


『順番はドッジストーンランで早かった順で二人づつ戦ってもらう! 最初は……高田選手と福川選手だ!』


 私と福川とやらはフィールドへの橋を渡る。私達が渡り終えると橋が外される。

 私と福川は対面する。

 福川は中肉中背な男だった。見た目は普通だ。負けないだろ。


『二人とも準備はいいか?! のこった!』

「でやぁー!」


 司会の掛け声とともに男が突進して来る。私はそれを小さな動きで避けつつ、男の服を掴み引っ張る。男は熱湯に落ちそうになり、こらえている。私はそれを後ろから押した。

 私の戦いは開始十秒もしない内に終わった。


****


 熱湯に落ちた男の人はすぐに救出された。

 鏡華ちゃんは第一回戦とは違い余裕の表情で、橋を渡ってフィールドから出た。

 鏡華ちゃんは私を見て微笑んだ。

 私は羅刹女と呼ばれる彼女の真髄を見た気がした。


****


『さあて! 第二回戦を勝ち抜き残ったのはこの四人だ!』


 四人が横に並ぶ。

 残ったのは身長が2メートルくらいの男、比較的背が低い男、髪がボサボサの男だ。名前はそれぞれ真庭、犬山、神木だったかな? そして、私が残った。


『皆さん! 前に置いてある木刀をお取りください! 早いもの勝ちですよ!』


 私達の目の前には色々な長さの木刀が並んでいた。私はすぐに50cmくらいの長さの木刀を取った。真庭は太くて自身と同じくらいの木刀、犬山は30cmくらい、神木は120cmくらいの木刀を取っていた。


『ルールの説明をするぞ! 簡単だ! 細い足場から相手を落とした方の勝ち! 簡単だろ?!』


 ほとんど無法じゃないか。


『最初は犬山選手と神木選手の戦いだ! 両者フィールドへ!』


 二人は階段を上り、肩幅くらいの板の上へ移動した。

 高さは二階くらいといったところか? 下にクッションがあるのが良心かもしれん。

 二人は木刀を構える。

 ん? 神木って奴の構え……剣道の中段の構えか?


『それではスタート!』


 司会の声とともに神木が一気に踏み込む。木刀を振り上げ犬山の顔目掛けて振り下ろす。所謂面ってやつだ。しかし、犬山が神木の踏み込む足を蹴った。神木はバランスを崩し板から落ちた。

 呆気なかった。

 なんだ……? 今の犬山の動き。まるで──


「次は俺達の番だぞ」


 私が思考してる時に真庭が私を見下ろして言った。


「そうみたいだな」


 考える間もなく、私と真庭はフィールドに上がる。お互い構えると真庭が言う。


「小僧、避けるのは自信があるみたいだが、ここではその自慢の回避は通用しないぞ」

「だからなんだ」


 私が姫路姫都をちらりと見ると目が合った。ちら見のつもりがお互い目をそらせなかった。

 可愛いな。まるで子犬と見つめ合ってるような可愛さだ。ヤバい。あんなこと言われたからか? 私、相当あの娘の事が気に入ってるぞ。


「小僧、俺の姫に何色目使ってんだ!」


 真庭が怒りを含んだ大声を上げた。

 姫路姫都はビクッとして真庭を怯えた顔で見る。私は思考を勝負に引き戻された。


「悪いが……今日から姫都は私のものだ」


 私は負けじと言い返した。

 璃子といい、月見といい、部長といい、シオンといい、晴恋といい、アイツといい。…………もしかして私ってけっこう可愛い女の子が好きなのか?


『おっと! 両者から姫は俺のもの宣言! これは白熱したバトルが見れそうだ! それではスタート!』


 私は木刀を真庭の顔に向けて投げた。


「おっと! 馬鹿め! 自分から武器を捨てるとはな!」


 真庭が木刀で投げた木刀を弾いた。

 馬鹿はあんただ。

 私は走り、真庭の腹へ目掛けて飛び蹴りをした。真庭は一瞬の出来事に反応できず、直撃をくらいバランスを崩して足を踏み外し、板から落ちた。


「悪いな。足を使ってはいけないとは言われてないからな」


 私は見下ろして言った。

 下にクッションがあって良かった。クッションがなかったら躊躇うからな。


『勝者高田選手!』


 私が踵を返し階段を階段へ向かおうとすると、板が揺れた。


『ちょっと?! 犬山選手?!』


 私は犬山がいる方へ向き直り言う。


「なんだ?」


 犬山が木刀を構えて言う。


「悪いがこの競技は僕の得意分野なんだ。高田君は完璧だ。次の競技が何かわからんが、おそらくその競技は僕が負けるだろう。この勝負受けてもらおうか」

「却下だ」


 私はすぐに返答した。

 当然だろう。わざわざ相手の得意分野で勝負するのは馬鹿がすることだ。


『許可しよう』


 司会が言った。


「納得のいく説明をしてもらおうか?」


 私は司会を睨み付けて反論した。


「そうです! 私も反対です!」


 姫都が私の言に味方し、反対する。


『高田選手の言い分も最もだが……さっきから君はあらゆる競技で圧倒している。ほとんど話になっていないレベルだ。これじゃ番組が盛り上がらん』


 私は黙考し、考えをまとめてから口を開く。


「いいだろう。受け入れよう。こっちも受け入れたんだ。その代わりこちらの要求も受け入れてもらうぞ」

「鏡華ちゃん!」


 姫都……。私の本名を呼ぶな。今までの頑張りを無にするつもりか。


『要求は?』

「どんな結果になろうとも、その結果を無効にしないことだ」


 司会は耳に付けたイヤホンの声を聞いている。やがて答える。


『許可しよう』


 姫都が心配した顔で私を見つめる。

 私は犬山に向き直る。


「さあ始めようか」

「木刀は?」

「いらん」


 犬山が木刀を構える。その構えはまるで漫画やアニメで見るナイフ使いみたいだった。

 なるほど……確かにこの細い足場でナイフは強いな。だけどそれは木刀だ。


『それでは特別に第三回戦の競技で対戦だ! スタート!』


 犬山が一歩踏み込み、私の目に向けて木刀を突く。私は片足を引いて避ける。しかし、眼鏡の縁に当たり眼鏡が外れる。そしてそのまま犬山は木刀を振り上げた。私は体をのけぞりそれをかわした。

 よくわからんが構えだけ一丁前だな。

 私は犬山のそのまま振り下ろした木刀を持つ手を掴んで受け止めた。


「はっ? お前!」


 犬山が驚いた声を上げる。

 私はそのまま犬山の腕を引っ張り板から落とした。

 観客、司会、スタッフが沈黙する。


「やったー! 鏡華ちゃん!」


 唯一姫都だけが満面の笑みで喜びの声を上げた。


『もしかして高田選手は女性の方ですか?』


 突然司会からそんな疑問の声が上がる。私は司会の方を向き、腕を組んで答える。


「見ればわかるだろう」

『見てわかりません』

「あっ! 鏡華ちゃん髪が!」


 私は姫都の言葉で気付く。私は頭に手を持ってくと帽子がなくなっていた。私は一瞬血の気が引くが、あの約束を思い出した。


「大丈夫だ姫都。例えどんな結果になっても無効にはならないからな」


 さすがに屁理屈か?

 だが嘘は言ってないし、あの約束をそのまんまの意味で取るなら無効にはならないはずだ。それにこれは生放送だ。この番組を見ている視聴者が証人だ。

 まあ……私の想定した意図とは違うが勝利のために使えるものは最大限に利用させてもらうぞ。

 司会者が耳に付けたイヤホンの音を聞いている。たぶんお偉いさん方の答えを待っているんだろうな。


『女性であるあなたがキスサバイバルに参加した理由はなんですか?』


 そう来るか……。


「さあ? 正直な話、大してファンじゃなかったんだが」


 姫都が俯いて見るからにしょんぼりした。


「個人的に姫都は大好きなんだ」


 今日初めて会ったばかりだが。

 姫都がパアァと笑顔になった。

 そんなに嬉しいか?


****


「個人的に姫都は大好きなんだ」


 私は自分が明らかに笑顔になったとわかった。

 鏡華ちゃんを見るとあっちも私に視線を向けていた。目が合った。

 鏡華ちゃんが微笑──むしろ美笑する。それはまるで私に誇示するような笑み。

 鏡華ちゃん、わかってるのかな? その笑顔は放送されてんだよ?


『え~と……今回は特例として、高田鏡選手の優勝を認めます』

「ヤッターー! 鏡華ちゃんすごーい!」


 私は両手を上げて、喜びに声も上げた。


『姫と高田選手が知り合いなんですか?』


 鏡華ちゃんは困ったように答える。


「姫都とは友達だ。友達は参加してはいけないわけじゃないだろう?」

『まあ、一般人なら構わないでしょう。もういろいろ今更ですし……』


 私は二人のやりとりで我に帰った。

 うわ~。やっちゃったよ~……。

 そして今更気付く、鏡華ちゃんが私のことを姫都と呼んだことに。

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