表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
中二病少年・原山大樹
26/86

第23話

「いよいよ私達の番か……」


 ゲームの都合上、私は眼鏡を外している。ポニーテールはいつも通りだ。

 ゲームスタート三分前。私の戦うグループの五チームがそれぞれの拠点──この場合は宝ボールが置いてある付近で待機していた。しかし見える場所に他のチームはいない。初期装備として一人に通常ボールが二つ支給されている。

 さて……。

 私はチームメンバー達の前に立ち言う。


「みんな! このゲームは最初の十分が勝負だ!」


 メンバー達の間に緊張感が漂う。私はメンバー達の顔を見渡した。

 そこには運動能力の高い奴から低い奴までいる。


「序盤で誰もアウトしなければ私達の優勝は約束されたようなものだ。それに限って私はあんた達と別行動を取るが、その時はシオンの指示に従ってくれ」


 メンバー全員がリーダーである私に従っている。なぜか総意でリーダーになっただけだけど。


「とりあえず序盤は宝ボールをキーパーに全部任せて他の奴はただ生き残れ。わかったか?」


 おおーーーー! とメンバー全員が私の言葉に答えた。


「そろそろ始まるぞ」


 するとゲームスタートのチャイムが鳴り響いた。




 私はゲームスタートしてすぐにチームから離れ、隠れながら行動をしていた。ボールは一つしか持っていない。

 勿論これは月見の作戦を予想したうえでの私の作戦だ。

 私以外のチームメンバーは宝ボールの傍で守らせる体を取らせる。そして私は一人別行動を取る。

 私が別行動を取っている方が自チームの宝ボールは安全だと考えた。理由は簡単だ。私は単独で一チームの壊滅は出来る自信がある。そしておそらく月見やそれ以外の奴も私の単独攻撃を警戒しているはずだ。だからこそ月見や他チームは私の単独攻撃のために宝ボールを防衛する必要がある。自信過剰気味だが私自身は過大評価だと思わない。伊達に悪い意味で有名じゃない。

 私だって美少女だとか、かわいいだとかで有名になりたい。

 それは置いといて、問題はどのチームを単独攻撃するかだ。勿論決まっている。月見のチームだ。単純明快、月見のチーム以外は脅威ではないからだ。

 私の見解だとすべてのチームは運動能力が平均化するように組まれている。その基準はおそらく現在の体育の成績。つまり、それぞれのチームの運動能力の合計はほぼ同じだが決定的に頭の良さに優劣が存在する。もちろん規格外の運動能力を持つ奴がいるチームもいるだろうが、これはチーム戦だ。短距離走やテニスのように、単純に個人の能力だけで決まるわけではない。連携や作戦によっては弱小チームが優勝に踊り出ることもあり得る。今はそういう状況だ。規格外の私に連携や作戦で対抗する月見という。

 問題は月見の頭脳がいろいろな意味で規格外ということだ。


「さてどうしようか……」


 この学校の施設の位置関係を確認しよう。

 大体東西に若干長い長方形の土地。その中心に同じ大きさの校舎が二つあり、渡り廊下でつながっていて、その南北に校門がある。校舎の東に校庭、西に部室棟と体育館がある。

 それぞれのチームの宝ボールは南北の校門付近、校庭の真ん中、校舎をつなぐ渡り廊下の付近、体育館の裏の五カ所だ。私のチームは南校門付近、月見チームは体育館裏だ。

 月見チームの宝ボールへ行くルートは二つだ。土地の外周を行くルート、部室棟と体育館の間を通るルートだ。いろいろ考えた結果、私は部室棟と体育館の間を通るルートを行くことにした。外周を行くルートだと自チームを巻き込む可能性があるからだ。


「行くか」


 私は体育館の入り口付近にある木の陰から出て、走り出す。途中、渡り廊下付近のチームに気付かれるが構わないだろう。

 体育館の角を曲がり、体育館と部室棟の間で月見チームの三人と遭遇した。私は足を止めた。


「ヤバ……」


 おそらく三人とも体育成績上位者だ。野球部が二人、バスケ部が一人だ。喧嘩ならともかくこれは突破が難しい。三人ともボールを二つ持っている。

 後ろから足音が聞こえ、後ろを振り向くと月見チームの三人がいた。女子が二人、サッカー部が一人。女子の一人は晴恋だ。こちらもボールを二つづつ持っている。

 今の状況を簡単に言うとはさみ打ちだ。綺麗なはさみ打ちだ。

 前方の奴らが投げたボールは近いと避けられない。単純に速さとコントロールがあるからだ。だからこそ突破が難しい。仮にコイツらを突破しても二回目のはさみ打ちがある。


「悪いがまだアウトになるわけにはいかないんだ」

「みんな投げろ!」


 野球部の一人が指示を出すと六人が一斉に私に向けて投げ始めた。


「くっ」


 私は一瞬だけ後ろをを見て、すぐに前方を向く。

 前方──運動部側の方にボールを投げた。狙うはコイツらが投げたボールの一つ。ボールがぶつかり合い、軌道が逸れる。私は体を横に向け、腰を落とし両腕を伸ばし、運動部側のボールと後方──晴恋側のボールを一つづつ腕に当ててバレーボールのレシーブのような要領で上空に上げた。すぐに晴恋側に体を向け、横にステップして運動部側の残りの一つのボールを避け、晴恋側の投げられたボールを一つ取る。晴恋側の残り一つのボールが私の前でバウンドする。私はすかさずそのボールを足で止めた。

 後ろから足を踏み込む足音を聞き、私は一瞬だけ後ろを見て持っているボールを後ろに投げた。ボールがぶつかり合う。同時に足で止めたボールを足で空中に上げ、そのボールを手で弾き二つ目のボールにぶつけた。運動部側の三つ目のボールは足を上げて避ける。

 そして私は晴恋側に向かって走り出す。途中で避けたボールを拾う。晴恋が慌て私に向かってボールを投げた。私はそれを難なく避けたが、もう一人の女子がボールを投げた。私は持っているボールでボールをぶつけると、先程上空に上げたボールの一つが私の目の前に落ちて来たためそれを地面に付く前にキャッチし、投げようとしているサッカー部にボールを当てた。再びもう一つ上げたボールをキャッチし、晴恋達を通り抜けはさみ打ちから脱出した。


「何これ?」

「鏡華さんすごい……」

「これが噂の羅刹女かよ!」


 後ろから声が聞こえた。


「今のはマジでやばかった。四:四だったらアウトだったな」


 私は部室棟と体育館の通路から抜け、北校門に向かった。そしてある考えが頭に過ぎる。

 本当にあの布陣は突破されないための布陣か? 綺麗にはさみ打ちが決まっていたのにあの晴恋側が弱いという采配に裏があるとすれば……。これは誘導されたルートという可能性がある。それに他チームで争っている気配がないのも気になる。まさか待ち伏せ?

 私が北校門の広い通路に出た瞬間、横からボールが飛んで来た。走っているため避けることが出来なく、私は持っているボールを投げて弾いた。

 私はそこで立ち止まる。待ち伏せされていた。それも月見チームだけでなく、私のチーム以外のチームが私を囲むように円を組む形で。後ろからも先程振り切った運動部が通路を塞ぐ。ざっと見た限り四十人以上いるんだが……。


「これはどういうことだ?」


 私の誰に向けたわけでもない問いに月見が答える。


「見ての通り、みんなであなたを仕留めようと密約したの」


 やってくれたな月見。これはいくらなんでも生き延びることは不可能だ。……ていうか一人の女子にここまでするか?

 正攻法では無理だ。こうなったら他の奴らの同情を誘う。


「か弱い乙女に寄ってたかって攻撃とはあんた達最低だな」

「か弱い乙女なんてどこにいるの? 鏡華、自分のこと言ってる? あなたは屈強な鬼女よ?」


 駄目だ。同情は引けそうもない。仕方ない最終手段だ。

 私は手を目に当て、声を震わせて言う。


「みんなひどいよ! ただの遊びでこんなこと……」


 私は泣いている振りを使った。

 周りではさすがに可哀想という声が上がる。月見もこの流れに焦りを感じている様子だ。

 このまま押し切れるか?

 その時、男子からある言葉がボソッと聞こえた。


「キモッ」


 私は切れた。


「今のはムカついたぞ! あんた達まとめてかかってこい! 全員始末してやる!」


 私は月見を指差して言った。

 宣言して気付いた。これは私を挑発する月見の罠だと……。

 月見は一瞬だけ困ったような表情をしたが、すぐに余裕の笑みを浮かべた。


「一斉砲火!」


 月見が言うと周りの奴らが一斉に私に向けてボールを投げ始めた。


「もう最悪!」


 私は叫んだ。




 その後、約五分の攻防の末に私はアウトになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ