第22話
全校生徒は暑い中列を作り、球技大会が始まるにあたって、体育委員の話を聞いている。全員半袖のためか太陽光が直接肌を焼き汗だくだ。
私は列をから外れ、木陰で休んでいる璃子を見た。璃子は体育着の上にジャージを着ている。璃子はジャージで色素の欠落した肌を守っている。体質の問題で仕方ないとはいえ、この状況で木陰とは羨ましい限りだ。
「以上! 球技大会『ドッジバトル』のルール説明でした!」
いつの間にか球技大会のルール説明が終わっていた。私は事前に配布されたルールの書かれたプリントを見た。
・一チーム十五人程でその中でキーパーを一人決める
・ボールは通常ボールが複数と宝となるボールが各チームに一つある
・勝利条件は①宝ボールを制限時間までに回収されないこと ②宝ボールが回収されていないチームが複数ある場合、他チームから宝ボールを多く回収していること
敗北条件は①宝ボールを他チームに回収された場合 ②キーパーを除くチームメンバーが全員アウトの場合 ③制限時間を切った時に全チームが残っている場合
・チームの陣地には小さい内の円と大きい外の円が二重となっており、宝ボールを小さい円の中に置く。①大きい円の内側ではキーパーはボールに当たってもアウトにならないが、内側から別のチームにボールを当ててもアウトに出来ず、宝ボールを持つことが出来ない。 ②小さい円の内側に宝ボールがある時は宝ボールを回収できない。また小さい円の内側に他チームは入れない。よって他チームは通常ボールを宝ボールに当てて小さい円の外側に出し、宝ボールを回収する
・セーフの場合①首より上にボールが当たった場合 ②体にボールが当たりそのボールが地面に当たる前に自分もしくは自チームの他者がそのボールをキャッチした場合
・時間は五十分
・それぞれのグループで優勝したチームのメンバーは体育の成績が五になる
この程度のルール説明でなぜ十五分も使ったのか意味がわからない。
このゲームのルールを簡単にまとめると、ドッジボールとドロケーを混ぜたようなルールだ。
「それでは最初は二年生の前半グループから始めます。それ以外の生徒達は校舎に入ってください」
ゲームは一年生、二年生、三年生をそれぞれ半分に分けた六グループ、されにそれを五チームで分けて行われる。ちなみに私のチームは二番目だ。
私が混雑を避けるため遅れて校舎に入ると、下駄箱のスペースで今回私のチームの一人であるシオンがいた。
「こんにちは鏡華! 今日の『ドッジバトル』楽しみですね!」
「そうだな。楽しみだ」
私達のチームのゲームは二番だ。つまり二年生の前半グループが終わってすぐだ。
「本当に楽しみだ……。月見のいるチームとゲームなんてどんなエグい作戦使ってくるか……」
私は頭を抱えた。小学生の時の運動会は確かリレーで私のクラスの女子を一人仲間にして、その女子にバトンを遠くまで投げさせるとかやったな。おかげで負けた。
「けど今回は私も黙ってやられてたまるか! シオン! あの作戦は覚えてるな?!」
「もちろんです。私も鏡華とは一度一緒に戦いたかったです。忘れるわけありません」
「嬉しいこと言ってくれるな」
私はシオンの胸に目が行った。とても同じ中一とは思えない。
「鏡華はスケベですね」
シオンは腕で大きな胸を隠すような格好で言った。
「私達女同士だろう」
「ジャパニーズジョークです」
それのどこがジャパニーズジョークジョークかはわからん。ていうか腕で胸が潰れてる。
「鏡華、早く二階に行きましょ? 一度どんな感じにやるか見ときましょう」
「そうだな」
私達は二階の教室に向かい、他のチームメンバーと合流した。
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私はチームメンバーと合流するため、教室に向かっていた。
クラスの列から外れ、一人木陰にいた私は疎外感を覚えていたが、これから行われる球技大会は楽しみだ。しかし、問題は──
「あの予知夢だよね」
私は一人呟いた。
久々に見た自分自身に関する予知夢。短くてあっけない予知夢。だけど強大な恐怖を与えた予知夢。
「どうしたホワイトプリンセス? 廊下で独り言言って」
私は体をビクッとさせ後ろを向いた。そこには同じチームメンバーの原山大樹君がポケットに手を突っ込んでいた。
「原山君、そのホワイトプリンセスってやめてくれないかな?」
「じゃあ何プリンセスがいいんだ? デーモンプリンセスか?」
デーモンプリンセス……? 悪魔姫? 鬼姫?
「いいよもう……」
鏡華ちゃん曰わくこの人は痛い人らしい。中二病の設定系とかいう重症らしい。けど悪い人ではないとも言ってた。
「そんなことより大丈夫なのか? お前日射に弱いんだろ?」
「一応ジャージは着るよ。幸い黒だから光通りにくいし」
「そうか」
それだけ言うと、原山君はたぶん教室に向かって歩き出した。私も原山君に並ぶ形でついて行く。
「友達のお前から見てルーラーとムーンウィッチだとどっちが勝つと思う?」
「えっと……」
原山君がちょっとカッコいい単語を言い私は困った。
ルーラーとムーンウィッチて誰だろ?
「悪い。高田鏡華と滝沢月見のことだ」
ムーンウィッチ……月の魔女。月見の名前の月と魔女でムーンウィッチ? これはわかるけど──
「なんで鏡華ちゃんがルーラー?」
「謎のカリスマ性があるだろ」
カリスマ……。確かに小学生の時は学校を支配してたけど……。それはカリスマというより恐怖で支配してたはず。
「まあ。そんなことはどうでもいい。どっちが勝つ?」
「他の三チームの可能性は?」
「ねえだろ」
原山君ははっきりと言った。それは置いといて、原山君の興味はわからなくもない。
「滝沢さんじゃないかな?」
「なぜそう思う?」
原山君が好奇の目を私に向けて言った。
「直接本人同士だけの戦いだったら鏡華ちゃんだよ。それにルールのあるゲームやスポーツだったら鏡華ちゃんはほとんど負けないよ。鏡華ちゃんはイメージが先行してるからよく誤解されるけど頭もいいしね。だけど──」
「だけど?」
「滝沢さんは鏡華ちゃん以上に頭が良い。それにこれは個人戦じゃなくてチーム戦のうえに複数チームが混在する乱戦。下手すると既に鏡華ちゃんのチームに裏切り者がいる可能性もある」
原山君は顎に手を当て考える素振りをしてから言う。
「策謀の月見と攻略の鏡華か……。なかなかの好カードだな」
「そうだね」
「ルーラーとムーンウィッチのバトルが始まる前に、俺達も作戦会議しようぜ。俺達の相手にあの伊集院がいるんだからな」
私は黙って頷いた。




