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Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
嘘破り少女・中山晴恋
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第18話

 私は一年四組の教室の前にいる。

 さて、ここで私の考えを確認しよう。

 中山がどうやって嘘を見抜くかは知らないが、絶対に嘘を見抜けること。また、相手が私に勝つ事前提で作戦を考えた。嘘突きゲームのルールが中山に絶対勝利のためのものならば、そのルールでゲームの方向性を変えればいい。現在の方向性は嘘を主体としたルールだ。例えば、嘘からギャンブルに方向性を変えるとか。月見の攻略法はおそらくこれだろう。そこで考えた私の方向性は論理。つまり、嘘を突くところ変える。

 私は扉を開けた。

 中山であろう女子が席に座り退屈そうにしている。中山は目元が垂れたおっとり系な外見をしている。肩まで揃えた黒色の髪はミスマッチだが、それが良い意味で印象的だ。


「私は高田鏡華。あんたに嘘突きゲームを申し込む」


 私はカードを裏向きに伏せて言う。


「オーケー。今日はあなたが最後ね。それじゃあスター──」

「待った」


 私は淡々と進める中山の開始の宣言を止めた。


「賭けの対象を変えましょう。通るだろ?」


 月見から聞いた話だと、月見は賭けの対象を変えたらしい。ならば私も賭けの対象を変える。仮にこの提案が通らなければ月見のことを持ち出すまでだ。

 中山は自信に満ちた笑みで答える。


「通るよ」


 なるほど……。あくまであの賭けの対象は人を釣るためのものだから、賭けの対象を変えることに関しては寛容らしい。それに絶対的自信もある。


「それじゃあ私が賭けるものは私を自由にする権利でどうだ?」

「それは自信?」


 私は腕を組む。


「まあな」


 別に自信がないわけではないが、真意は別にある。今更拒否はされないだろうが、出来るだけ拒否されないための保険、作戦の一部、そして相手の力量を直に感じるためだ。

 相手が笑みを崩さず澄ましている辺り、嘘だとバレたんだろう。

 しかし、わかったことが二つある。一つ目は今までの反応と合わせて考えると、中山自身は嘘を吐くことが下手であること。二つ目は、わかることが嘘か本当だけということだ。それだけわかりやすい反応をしていた。もちろん、嘘が得意でその反応自体が嘘である可能性も否定できないが。


「それでだな。あんたに賭けてもらいたいものは、さっきあんたが賭けで手に入れた自作小説だ」


 中山は少しの間黙考する。しかし、すぐに答えを出す。


「いいよ」

「交渉成立だな」


 中山は首を縦に振った。

 中山は月見の小説に興味があるのか?


「それじゃ今から始めね。スタート」

「その前にいいか?」

「何?」


 私が再び止めに入ったためか中山の言葉に棘がある気がした。私には関係ないが。


「これは私の嘘をあんたが見破るゲームでいいのか?」

「そうよ」

「そうか」


 別にルールなどわかってるのでそういう意味では確認する必要などない。これは作戦の一部だ。この確認を中山が返答するという事実に意味がある。


「私さっきまでトランプをやってたんだが……後一枚で上がれそうなんだが負けそうだったんだ。それでここに来たんだ。さて……このカードはジョーカーである」


 中山は焦っているのが見て取れる。


「終了だ」


 私は嘘を言っていない。内容は多少ぼかしたがな。

 後は中山が私の考えに至るか……。それとも、コイツの嘘を見破る能力が私の嘘を暴力的にねじ伏せるか見物だ。


****


 私の前では滝沢さんと伊集院君が向かい合うようにテーブル越しに座っている。そして私はシャッフルし終えたトランプをテーブルの真ん中に置いた。

 私は滝沢さんに審判役を申し付けられた。

 ここで滝沢さんに指示された私の役割は仕込み役。つまり、滝沢さんのイカサマの片棒を担ぐわけだ。


『シャッフルした後にこのカードを山札の一番上にバレないように入れるだけ。後は審判の役割をきちんと果たせばいいよ』


 滝沢さんは事前に持ち出したカードを私に見せて言っていた。それ以上のことは何も聞かされていない。

 ここにいる文芸部室にいる全員には説明したが改変嘘突きゲームのルールを確認しておく。




・お互いは一番上のカードを引き相手に見せないようにどんなカードか見て伏せる、お互いは順番に質問を一回ずつ行い、それを四回まですることができるターン制。

・お互いは相手のどんな質問にも答えなければならない。しかし、質問の答えには嘘を吐いていいし正直に答えても良い。

・勝利条件は相手のカードを先に当てること。




 だけど、どうやって後攻を取るのかな? 先攻からカードを配れと言われたけど……。

 その時口を開いた人物がいた。


「これって後攻の方が不利ですよね」


 シオンの言葉に部長が言う。


「そうですね~。四つ目の質問の時に先攻から答えることが出来るんですから」


 その言葉に寺スの人達が言う。


「それ以前にこのゲーム勝つのが難しいな」

「ああ。質問には最低限答えるだけで良い……。正直に答えるだけなら四つはベストな数だが」

「しかし、プレイヤーは質問の真偽を見抜かなければならない。このゲーム……仮に嘘を絶対に見抜ける奴がいたとしても難しいよな?」

「ああ。仮に真偽がわかっても真実がわからなければ意味がないからな。黒か赤かという質問とかならともかく」


 その点に関しては、滝沢さんは後攻さえ取れればカードがわかるから勝てる。だけど伊集院君はこれをまともに相手しなければならない。


「伊集院君は先攻後攻どっちがいい?」


 伊集院君は滝沢さんがイカサマしてるのは疑っているのかな? 一緒に出て行った私を怪しいと思っても不思議じゃないけど……。


「先攻を貰うよ」


 伊集院君は答えた。伊集院君は山札の一番上のカードを引き、それを一瞥してから伏せた。

 この時点で滝沢さんはカードを当てることができる。


「じゃあ私は後攻ね」


 滝沢さんも山札の一番上のカードを引き、それを見てから伏せた。

 いよいよ始まるのか。

 私自身は滝沢さんは嫌いだし、伊集院君に思い入れもない。だけど、私自身はこの二人という好カードの対戦を楽しみにしている。

 滝沢月見。モデルという顔を持ち、鏡華ちゃん曰わく魔女と呼ぶほどの策士である女子。私をいじめていた黒幕。

 伊集院風麿。美少年で天才的頭脳の持ち主。まるでマンガに出てくる主人公のような完璧超人。


「それでは質問タイムスタート!」


 私は声高らかに言った。

 伊集院君は涼しい風が吹いたような顔で沈黙する。だけど私には怪しい風が吹いた気がした。

 そして伊集院君は口を開く。


「第一の質問……。協力者は一条さんかな?」


 え? 何? 今の質問?

 同じことを思ったのだろう。見物していた他の文芸部員も動揺している。

 私は滝沢さんを見る。別段驚いている様子はない。最も私にはそれが滝沢さんの想定内なのかただのポーカーフェイスなのかはわからないけど。

 滝沢さんは少しの沈黙を破り言う。


「違うよ」


 滝沢さんは一言それだけ答えた。その答えは嘘だ。

 次は滝沢さんの質問する番だけど……。


「あなたは鏡華のこと嫌い?」


 滝沢さんもゲームとは関係のない質問をした。もしかして滝沢さんは最初からこのつもりだった?

 伊集院君はちょっと困った顔をしている。微妙に顔が赤い。


「嫌いじゃないよ」

「無難な答えだね」


 確かに無難な答えだけどさ! もしかして伊集院君、ただ鏡華ちゃんが好きなだけなんじゃ……?

 ここで第二の質問に入る。

 さすがの伊集院君でもこれ以上カードに関する質問を削ったら難しいんじゃないかな?

 伊集院君は平静に戻り質問する。


「第二の質問。さっき君は中山さんの嘘突きゲームに自作の小説を賭けたらしいけど……高田さんを僕から遠ざけるため?」

「違うよ。鏡華が私の小説のためにあんなゲームするわけないじゃない」


 滝沢さんは嘘か本当か以前にたぶん鏡華ちゃんがゲームに参加した理由わからないんじゃないかな? その事を聞く前からやる気マンマンみたいだったし。


「次は私ね。それは何の真似?」


 ちょっと質問の意味がわからない。しかし、伊集院君には意味が伝わったらしい。


「カッコいいから」


 もしかして滝沢さんは『何で鏡華ちゃんの真似をしているのか?』とい意図で聞いたのかな? だとしたら今の伊集院君の答えは割と具体的な答えじゃないだろうか?


「本当かな~? まあいいよ。次は伊集院君だよ」


 滝沢さんに促されて伊集院君が三回目の質問をする。


「そうだね~。高田さんは誰が好きなのかな?」


 これはもう伊集院君が鏡華ちゃん好きなの確定のような君がする。

 これに滝沢さんは余裕の笑みをこちらに一瞬だけ向けて答える。


「初めて会った時に鏡華が言ってじゃない? 私が好きだって」


 は? 何言ってるのこの女?

 私は滝沢さんに視線を向ける。滝沢さんは私が睨んでいるのに気付いてるんだろうけど無視を決めている。


「確かに言ってたけど僕が言いたいのは──」

「次は私ね」


 滝沢さんは伊集院君の言葉を遮って質問に移った。


「そのカードはハート?」


 滝沢さんは今までの質問とは一転、本来の主旨であるカードの質問をした。


「…………そうだよ」


 これは本当。滝沢さんから事前に見せてもらったから間違いない。


「どうぞ」


 たぶん質問もせずにカードを当てるのは違和感があるからここでこの質問を挟んだみたいだ。

 伊集院君を見ると笑みを浮かべていた。まるで気持ち悪い突風が吹いたような感覚を覚える。嫌な予感なのか。それとも悪い予感なのか。


「君はカズフミかい?」


 誰?

 私は疑問に思いつつ滝沢さんを見ると僅かに動揺している。


「……違う」


 答えた後、すぐに平静を装うけどたぶん遅い。


「さて。そのカードだけど──」


 そうか。滝沢さんのイカサマ云々を抜きにしても伊集院君はダメ元でもここで一応答えとかないと滝沢さんに負ける可能性が高くなる。


「クローバーの三だよね」


 滝沢さんは一瞬目を見開くと悔し気な表情でカードを表に返した。

 この場にいた全員が息を飲み、部室内に沈黙が訪れる。

 そのカードはクローバーの三なのだから。


「僕の勝ちだね滝沢さん」


 一体何が起こってるの? 実質、伊集院君はヒントなしだったんだよ?


「そのようね。どうしてわかったの?」

「さっき僕達は大富豪をやってたんだよ? カードの順番くらいわかるよ」


 今なら滝沢さんが言ってた意味がわかる。それは木の棒を、傘を振り回すみたいに。しかし、実はそれが剣だとわからずに、それはまるでその頭脳の価値がわからないように。


「完全に私の負けだね」


 滝沢さんはお手上げのポーズで言った。

 そして滝沢さんはため息をしてさらに言う。


「折角、シオンと一条さんにも協力をお願いしたのに」


 えっ? シオンさんにもお願いしたの? その前にイカサマ暴露してるけど。


「どういうこと?」

「言葉通りだけど? 滝沢さんにはカードを仕込む役、シオンには先攻に誘導させる役をやってもらったの」


 つまり、シオンさんが言ってた後攻が不利とかの言葉は滝沢さんの作戦の一部だったということか。


「イカサマを仕込むとはさすが姉御の友達だ。恐ろしい女だ」


 うん。滝沢さんは見た目とは裏腹にたちが悪いよ。


「まさかここまでとは想定外」


 策士策に溺れるとはこのこと──いや、むしろこれは天才に策士が溺れたというのが正しいのかも。


「まあ目的は果たせたから結果オーライかな?」


 伊集院君潰れてないけど? 正直、負け惜しみに聞こえる。

 そういえば鏡華ちゃんはどうなったかな?

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