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Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
嘘破り少女・中山晴恋
19/86

第17話

 あっという間に放課後だ。

 ヤバい。月見の使った攻略法どころか、私自身が使う攻略法すら全然わからない!

 帰りのホームルームを終え、私と璃子は文芸部部室へ最初に到着した。


「鏡華ちゃんがこういうゲームで頭を抱えるなんて珍しいね」

「何かトリックがあればどうとでもなりそうだが、今のところそのトリックすらわからん。下手したら嘘を見抜く才能が本当にあるのかもな」


 その時、扉が勢い良く開く。


「トランプやりましょう?!」


 部長の舌ったらずな声が部室に響く。


「どうしたんですか部長? ここは文芸部ですよ」

「知ってます! 私は今日、友達から大富豪というゲームを教えてもらったのです! 璃子ちゃんも今日来たのですね。やりましょう?」


 部長は勝手にカードを配っていく。


「ルールはどうするんですか?」


 大富豪にはローカルルールというものが存在する。ジョーカー上がりの有無とか、ジョーカーを使った革命の有無とか。


「ルールはですね~──」


 まとめると。




 特殊カードはジョーカー、八、ジャック、二。

 特殊カード上がりはなし。付随して特殊カードを混ぜての上がりや革命などはなし。しかし、上がらなければ二枚以上出しや階段はあり。またスペードの三上がりはあり。階段革命はなし。

 ジャックは強制バック。八は強制切り。

 地位は大富豪、富豪、平民、貧民、大貧民である。平民以外はそれぞれ一人づつ。大富豪と大貧民は二枚、富豪と貧民は一枚をそれぞれトレード。貧民勢は上から強いカード、富豪勢は自由にカードを選びトレード。

 大貧民が基本的にシャッフルする。




「それじゃ大富豪スタートです!」


****


 最終的に部員全員が大富豪に参加している。

 やっぱり中山の攻略法など思い浮かんで来ないまま四時が過ぎた。

 それはさておき、このままだと大富豪で負けそうだ。今の私は貧民だ。大富豪は月見、富豪は寺スの大男、大貧民は伊集院だ。

 現在の手札は一枚だが、私の順番になったら必ず負けるという爆弾だ。

 勝つ方法が思いつかない!

 二つの意味で。

 結局、月見は攻略法を教えてくれなかった。それどころか自作した小説を賭けに使ったとか言い出す始末だ。その月見は大富豪をやっている間、ほとんど璃子を見ていた。璃子は無視を決めていたが。

 やめようか? でも月見は小説を賭けたらしいから回収しとかないといけないが攻略法が。

 私は手札をジッと見つめる。

 …………そうか! これで嘘を吐けばいい。これなら勝てるかもしれん!

 私は立ち上がる。

 みんなの視線が私に集まる。


「どうしました姉御?」

「みんなすまん。ちょっと抜けるぞ。部長。ちょっとの間これ借りますよ?」


 私は絵の面を見せないように指で挟みそれを誇示する。


「いいですけど……何に使うんですか?」

「ちょっと勝ちに行って来ます」


 部長は意味がわからないといった顔だが納得しているようだ。

 私は部室を後にし駆け出した。


****


 鏡華ちゃんは勝ち気な笑みを浮かべて部室から出て行ってから、しばらくすると私は滝沢さんに部室の外に連れ出された。

 そこは本校舎の一階と二階を繋ぐ踊場。


「一条さん……ちょっとあなたに協力してもらいたい事があるの。協力するかしないかはあなた次第」

「何?」


 とりあえず用件だけは聞こうと思う。協力はしないだろうけど。

 そもそも私はこの人が嫌いである。理由は割愛するが元々は滝沢がいじめて、私がいじめられるという関係だったからだ。そこに鏡華ちゃんともう一人の嫌いな人が割って入ったのだ。とりあえずこの話は置いておこう。

 滝沢さんが真面目な顔で言う。


「あなた……伊集院をどう思う?」


 私は背筋がゾクッとした。この感覚は滝沢が小学生の時に見せていたものだ。

 この人……伊集院君を潰すつもり?


「頭が良いかな?」

「それだけ?」


 それだっけって……そう言われても……。


「一条さん泣きそうにならないで。能力の評価ではなく、人としての評価のことだよ。悪い人とか、気持ち悪いとか」


 どうやら滝沢さんは伊集院君に対して相当心情が悪いらしい。

 私の知る限りこの人がここまで嫌悪感を露わにしているのを見るのは初めてだ。関係が悪かった時の私や鏡華ちゃんに対してでさえここまで嫌悪感は見せていなかった。

 そういえば鏡華ちゃんも珍しく伊集院君は苦手だと言ってたことを思い出した。

 私は私なりに伊集院君に対してどのように思っているか言う。


「鏡華ちゃんに似てる気がする……」


 滝沢さんはため息を吐いた。そして呆れたように言う。


「本当にあなたは微妙なところで勘が鋭いよね」


 誉められてるのか貶されるのかはわからないけど、間違ってないらしい。


「それじゃあ……なんで似てるか考えたことは──ないよね」


 断定された。確かに考えたことないけど普通考える?


「間違いなく似せてるんだけどね」


 似せてる? 似てる理由は似せてるから? それじゃあ──


「似せてる理由は?」

「わからないから聞くんだよ。嘘突きゲームでね」

「嘘突きゲームって……中山さんがやってるやつだよね?」

「そうだね。そのために昼休みにゲームしたわけだし。鏡華もいないし調度いい」


 全然それっぽくないけど伊集院君は天才らしいし、鏡華ちゃんと組んだ方が良い気がする。


「なんで私なの?」

「鏡華と組んだら伊集院に絶対勝てないから」


 あまりに素っ気ない返事だった。


「えっと──」

「私も鏡華も完全に伊集院より格下だし、伊集院は鏡華に似せてはいるけどその能力は鏡華の上位互換のようなもの。それなら鏡華を第三者視点で見れる人と組んだ方が勝率は上がる。ただそれだけだよ」


 滝沢さんは私が疑問を口にする前に答えた。


「でも鏡華ちゃんが言うには嘘突きゲームは中山さんが負けない前提のゲームみたいに言ってたよ」

「そうだね。私も中山さんと会話してわかったよ。あれは嘘を見破る天才ね。だからこのゲームのルールはこのまま使えない」


 つまり、滝沢さん曰わくあのゲームのルールは中山さんだけしか勝つことのできない仕組みのものらしい。


「ルールを変えるってこと?」

「そうだね。少し複雑なルールにするよ。トランプを使ったね」


 そして滝沢さんは私に言う。

 改変嘘突きゲームのルールと伊集院君を潰すための布石を……。

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