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Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
嘘破り少女・中山晴恋
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第16話②

 昼休み。

 私は部室で璃子と昼御飯を食べていた。


「運動部でもないのに相変わらずすごい量だね」

「璃子の食べる量が少ないんだろ」

「確かに私の食べる量は普通と比べて少ないかもしれないけど鏡華ちゃんの食べる量は普通と比べて多いよ」


 普通の量ってどのくらいだ?


「それよりいいの? 中山さんを偵察しなくて」

「問題ない。それより私が違うかもしれないと言った最初の推測を話してやろう」

「うん」


 私は空の弁当箱に蓋をして、売店で買ったあんぱんにかぶり付く。噛んでから飲み込み話しを続ける。


「つまり、あれは特定の人物を釣るためのものだな。大方、好きな男子を釣り上げてそいつにわざと負けるとかだな。正直、Mっぽいやり方だな」

「Mって何?」

「アルファベットの十三番目だ」


 私は適当に誤魔化す。璃子はなんとなく不服ぽい顔をしている。


「まあ。こんなの推測しても中山の攻略には何も役に立たん」

「特定の人物って誰かな~?」

「誰かは知らんがある程度の人物像ならわかるぞ」

「どんな人?」

「あのゲームを攻略しても自然な人物だ」


 璃子はこの話をしてから弁当に手を付けていない。お腹がいっぱいになったらしい。璃子は弁当箱をこっちに押し付け、顎に手を当て考える。


「頭の良い人?」

「そうだな。成績優秀者か有名な奴だな」


 あるいは馬鹿な奴だな。


「だが一時間目の後の休み時間の偵察で違うかなと思ったんだ」

「鏡華ちゃんがフェニックスって呼んだ男子のことで?」


 私はあんぱんを食べ終えた後に璃子の弁当に手を付けた。

 なんで璃子の弁当はこんな庶民的なんだ? 一応大手会社の社長の孫娘だろ?


「ああ。あの可笑しな奴のおかげでな」


 しかし……璃子の弁当はいつも私の好きなおかずが入ってるな。わざわざ弁当を私に合わせなくても……。


「売名──は言い過ぎか。もしかしたら誰かに名誉とかを与えようとしているのかもしれん」


 ただ理由がわからない。


「名誉というと……中山さんの連勝を止めたとか?」

「察しがいいけど……甘いな。例えば、ある普通の女子が『私は大物歌手、苦手科目は国語』と言ったらどこが嘘だと思う?」


 これはさっきの原山とかいう奴が言った嘘と同じ作りの嘘だ。


「大物歌手かな~?」

「正解は苦手科目は国語のところだ」

「あっ、そうか……そういう方法なんだね」


 璃子は合点が言ったのか納得したような顔をしている。


「そうだ。さっきのフェニックスっていう男子──本当の名前は原山っていうらしいが、奴の痛い設定を中山は嘘と指摘しなかった。それで私は──」

「そういえば鏡華ちゃんも二カ月くらい前に気持ち悪いキャラ作りしてたよね」

「………………」


 私は璃子から顔を逸らす。

 あれから璃子はこのネタで私をからかう。あれは完全に私の黒歴史だ。


「話すのやめるぞ」

「ごめんなさい」


 璃子は恐ろしいほど白い手を合わせた。

 本当にコイツは私の蘊蓄が好きだな。


「わかったよ。つまり、さっきの中山と原山のゲームはそういうゲームだったんだ」

「なんで中山さんはその痛い設定の男子の嘘を指摘しなかったのが問題ということか」

「まあ。原山が本気でそう思い込んでれば本当という判定になる可能性はあるけど……難しいと思うんだ」


 私は璃子の弁当箱を空にし、璃子の前に置いた。


「ごちそうさまでした」


 璃子はまるで自分ですべて食べたかのように振る舞い手を合わせる。さっきとは別の意味で。

 私もそれに倣う。


「ごちそうさま」

「おそまつさまでした」


 私と璃子はそれぞれ弁当箱を布に包んだ。


「さて行くか」


 私達は文芸部部室を後にした。




 四組の前に来ると調度教室の中から中山と月見の声がする。

 月見? アイツも挑戦するのか?

 それはつまり、月見は中山の驚異的な嘘を見抜く能力をかいくぐる作戦なり攻略があることに気づいたということだ。

 奴は頭が切れる。奴ほど策士という言葉が似合う女もいない。生きてきた中で私は奴の策略に苦しんで来た。羅刹女の私に対して魔女と呼ばれていたとか。今でこそ仲が良いが小学生の時はお互い嫌いだったからな。滝沢月見はそういう女だ。そして私より璃子の方が因縁がある。

 話が脱線したな。


「どうしたの?」


 璃子が聞いてくる。


「いや? 何でもない」


 奴ら、場所を変えるのか?

 その時、扉から月見と中山が出て来た。


「私はあなたに勝つ気でやるけど……あなたもそのつもりだよね?」

「もちろんです!」


 二人は会話してる最中に月見は私に視線を向ける。その顔は自信に満ち溢れた月見にとって魅力的な顔の一つだ。

 璃子を見ると、璃子が鋭い視線を月見に向けている。月見は涼しい顔でそれを受け止めて無視した。

 私達は二人の背中を見送った後、私達は自分達の教室に戻った。




 教室に戻った後、すぐに璃子が私に聞いた。


「滝沢は攻略法を思いついたのかな?」

「月見のことだから思いついたんだろうな」


 月見は勝ち目のない勝負はしない。しかし、勝ちの目があると確信した勝負はする。

 私は月見が場所を変えた理由を考える。おそらくこの理由こそが攻略法の鍵だと思うから。

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