第15話②
私は一時間目が終わると同時にすぐに教室から出た。その後を璃子が走って追いかけて来る。
「どこ行くの?」
「決まってるだろ。件の女子の教室だ」
璃子が私の隣りで歩き始める。
「さっきの話はどうなったの?」
「さっき?」
「中山さんが嘘を吐くタイミングって言ったことだよ」
「ああ。あれね」
そんなことをしている間に私達は四組の教室の前に来た。
「鏡華ちゃんも挑戦するの?」
「まさか。ただどんな奴かと思ってな。ふむ。ここでも教室の中からの声が聞こえるな」
私は廊下と教室を挟む壁に背中を預けた。
「じゃあさっきの話の続きをしようか」
「うん」
さてどこから話すか。とりあえず中山とやらの目的の推測を話すか。そのためにはまず、これを理解させないと。
「仮の話。嘘を絶対に見抜く奴がいるだろ? とりあえず簡単に中山と同じゲームをやろう。例えば……璃子、ちょっと適当に嘘言ってろ。それに私が答えるから」
璃子は唸りながら考え込む。
「いや。そんな考え込まなくてもいいぞ? テキトーに」
私は璃子に言った。
「じゃあ……私の今日の弁当は唐揚げ」
本当にテキトーだな。
「その話は本当だ」
私は答えた。璃子もこれで何かを察したらしい。
「なるほど。嘘とわかってて本当と指摘して嘘を吐くということ?」
「その通りだ」
「これが中山さんが吐く嘘というのはわかったけど…………どうして嘘を吐くの?」
なぜじゃなくてどうしてを聞くか。
「賭けの対象おかしいと思わないか? 挑戦者はパンで、さらに難しいはずの中山が自分自身というのは中山にリスキー過ぎる」
「確かに釣り合ってないね」
「そう。釣り合ってない。だけど私はこの設定が他に意図があるとみた」
私は璃子が質問があるかと思い黙ると璃子は話を続けるよう促した。
「つまり、挑戦者側を挑戦しやすくした。それも対象は男子に絞ってる可能性が高い。男子からしたらパン一個ならリスクが低いから挑戦しやすいうえに、中山が自分自身を賭けることにより男子への動機付けにもなる」
「だったら男子限定にすればいいんじゃない?」
「それじゃ女子の反感を買うだろ」
「あっ。そうか」
「だから多分一人目は女子のはず、それも中山の協力者……所謂サクラってやつだな」
「サクラ?」
どうやら璃子はサクラの意味がわからないらしい。
「言っとくが木じゃないぞ? そういう協力者をサクラって言うんだよ」
「し、知ってるよ!」
力強く否定する璃子。嘘だろうな。
「最初の一人目の役割は色々あるが女子の反感を買わないためと宣伝が主だな。まあ、こんなサクラなんて問題じゃないな」
「じゃあ何が問題なの?」
ん? ゲームが面白いことになってるな。
壁の向こうの教室で行われてるゲームは今、中二病の男子が痛い設定を中山に語っているところだ。長くなりそうだな。
私は教室に耳を傾けつつ璃子に答える。
「璃子が知りたがってる嘘を吐くタイミングとその目的」
「ちょっと言ってることがわからないよ」
「結論から言うと中山は誰かに負けることを目的としてこのゲームを行っている」
息を飲んだ。という表現が正しいかのようなリアクションを璃子はした。
「わざと負ける。え? 誰に? 理由は?」
「理由は大体察しがつくが、誰かは知ら──は?」
私は話の途中で声を出して驚いてしまった。
「どうしたの? 鏡華ちゃん」
「いや。そんな馬鹿な事……」
あの内容で嘘はそこだと? 確かにそこは嘘だがどう考えても嘘は痛い話のところだろ!
あれだけが嘘だなんて……私の推測が間違ってるのか? あんな意味不明なのが肯定されるとなると見方が変わるぞ。
「ごめん璃子……私の推測間違ってるかもしれん」
「ええ?! ここに来て?」
すると出入り口から右目に眼帯を付けた男子が出て来た。
コイツか?
「おい。そこの眼帯の男子」
私は眼帯の男子を呼び止め、さらに言う。
「あんたフェニックス=カオスか?」
璃子が何言ってんだコイツと言いたげだ。
「俺の名前を知っているとは……さすがはルーラーとホワイトプリンセスだな」
私のほしい答えに意味不明なオマケを付けて返答して来た。
これは重症だ。
「あんた協力者?」
私はただそれだけ言った。
コイツ……動揺の色すらない。
「言ってることがわからん。じゃあな」
原山は私に背を向け手を振りながら歩いて行った。
なるほど。面白い!
「気が変わった。私も挑戦する」
「ええ! いきなりどうしたの?」
私は壁から背を離し、自分のクラスに向かって歩き出す。
「とりあえず教室に戻るぞ。休み時間が終わる」
「待ってよ!」
璃子が私の後をついて来る。
現状じゃあいつには勝てない。もうちょっと情報が必要だな。




