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Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
天才少年・伊集院風麿
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第12話

 私達は全員、校門の前で喋っていた。

 別れを惜しむとかではなく、部長が教室に忘れ物をしたとか。


「伊集院君てこの前の中間テストで一位だったよね?」


 璃子が伊集院に聞く。

 そういえば合計点が満点の奴がいたな。


「うん。よくわかったね」

「伊集院て名字珍しいからね」


 璃子……あんたは演劇部に顔出さなくていいのか?

 校庭を見ると丁度部長が走って向かっていた。


「みんな~ごめんね~」


 部長……こうして見ると本当に小学生にしか見えないな~。走ってる姿が可愛い。

 部長は私達の元に来た。


「待たせちゃいましたね」

「いえ、大して待ってませんよ」


 月見は部長に言う。

 そして私達の目の前で予想も出来ない事が起こった。

 あろうことか九人の目の前でひったくりが起こった。部長は何も抵抗が出来ないまま鞄を強奪された。この光景に私含めてみんな唖然。私達はひったくり犯の背中をただ見つめていた。

 私は我に帰り大声で言う。


「待て!」


 私はすぐさま走り出した。私が走り出すと他のみんなも我に帰ったのか一斉に走り出す。


「私の鞄が盗まれました!」


 私は部長に合わせて走り言う。


「部長。鞄の中には何が入ってるんですか?!」


 部長は早くも疲れたのか息を切らしながら言う。


「え~と教科書と筆箱と弁当箱と体育着です」


 それはヤバい。


「部長と璃子はここで待っててください!」


 そして私は四月の事件を思い出した。


「月見も残れ」

「え? うん。わかった」


 私は残りの伊集院、シオン、寺スに言う。


「全速力で追いかけるぞ!」

「任せてください」


 シオンが代表して答え、私達は全速力でひったくり犯を追いかけた。




 そうこうしている内にひったくり犯は人が多い商店街に入って行った。


「高田さん。あの人はたぶん路地裏に入るよ」


 伊集院の言葉に私が返す。


「なんで?」

「この時間は人が多いからね。駅から出て来る人もたくさんいる」

「電車に乗る可能性もあるだろ」

「あの人の足の速さでそれはありえない。大体この時間に電車は来ないし、闇雲に入っても追い詰められるだけだよ」


 ごもっともだ。さっきからコイツの言葉はどこか自信があるな。いや、確信か。


「で? どこの路地に入るんだ? この程度予想出来るんだろ?」


 私の予想が正しければコイツは想像以上に特別な人間だ。

 伊集院は私を遊ぶよう見て言う。


「寿司屋のところの路地だよ。今から二分後に出て来る。僕の足なら余裕で先回りできるよ」


 駅に一番近い路地だな。


「シオンと私はあいつを追いかける。伊集院と寺スはその路地に先回りしろ」


 私の指示に金髪が反発する。


「こんな得体の知れない奴の言うことを聞くんすか?!」


 私は金髪を睨み付ける。


「安心しろ。大丈夫だ」


 コイツが嘘をついてなければその通りになるから。

 伊集院は私達から離れ近くの路地に入って行く。

 金髪はそれを見て私に言う。


「わかったっす」


 金髪に続き他の二人も伊集院を追いかける。

 ふとシオンを見ると、不安そうに私を見ていた。


「大丈夫ですか?」


 この娘、日本語だからか知らないけど喋り方は暗い。流暢ではあるんだが。けど性格は明るいっぽい。


「大丈夫だ。私達が力を合わせればあんな変態一人余裕で捕まえられる」

「変態て何ですか?」

「ひったくりした人のことだ」


 説明するのも妙な気分になりそうなので私は適当に流した。嘘は付いてない。

 気が付くとひったくり犯は伊集院の言っていた路地に入って行った。


「私達も入るぞ」

「はい!」


 路地裏に入ると向こう側の出入り口に伊集院が酒の瓶を持って待ち構えている。

 私達はひったくり犯を挟み撃ちにすることが出来た。

 ひったくり犯は走りながらも酒の瓶を取った。


「伊集院!」


 私は叫ぶ。伊集院は優しくも不敵に微笑んだ。

 伊集院は持っていた瓶を前に転がした。

 私は伊集院がやろうとしていることがわかった。

 ひったくり犯にはわからなかったようで、瓶を避けるためにスピードを落とした。追いかけている私達のことを忘れて。

 私はひったくり犯に追い付き、後ろ襟首を掴み、膝裏を蹴りひったくり犯を後方に倒した。すかさずひったくり犯の鞄を持っている手を伊集院が、瓶を持っている手をシオンが踏みつけた。ひったくり犯は鈍い悲鳴を上げて両方を手放した。


「お巡りさんこっちです」


 ピアスがタイミング良く警官を連れて来た。

 金髪と大男はそれぞれ瓶と鞄を回収した。

 こうしてひったくり犯は無事捕まえた。


****


 ひったくり事件の翌日。

 私と伊集院は部室で小説を読んでいる。他の部員はまだ来ていない。璃子は演劇部の方に顔を出している。

 私は本を閉じて、伊集院に言う。


「伊集院君、あんたは昨日どうしてあの路地に入るってわかったんだ?」


 伊集院も読んでいる本を閉じてテーブル越しに私と向き合う。


「人の流れとか時間を計算出来れば余裕だよ」

「そういうことか。物理的に計算で予測してるのか?」

「そうだね。昨日のは簡単な計算による予測だけどね。やろうと思えば学校の敷地内の生徒全員の動きは予測出来るよ。普段はやらないけどね。君も簡単になら出来るよね? 君の場合は喧嘩でしか使ってないみたいだけど」

「確かに私もそれっぽいことはしてるな」


 私は椅子の背もたれに寄りかかり、腕を組んで足を組んだ。

 私は今日の昼休みに金石とトレードした情報を思い出す。


「伊集院君は所謂天才らしいな。テレビにも出たことあるとか」

「金石君から聞いたのかい?」

「まあね」

「あまり触れてほしくないかな」


 言われなくても触らないよ。

 それにしても何でこんな奴がこんなしがない田舎町にいるのか。


「あんたくらいの奴なら有名な私立に行けただろ?」

「まあ。僕の親はそこまで英才的じゃないからね。放任主義とかではないんだけど。それにこの学校──この町は面白いよ?」

「同意見だな」


 本当に天才かどうか疑問な程普通の性格だな。ただわかったことは普通の奴に天賦の才能なんて与えるものじゃないということか。ただ下らないだけだ。

 それにコイツは私だけのものである例の小説の作者を見抜いてる。こんなことに頭を使うなんて本当に下らない。


「失礼なこと考えてないかい?」

「あんたに対しては失礼なこと以外の情報はないが?」

「なるほど。確かに良いところは見せてないからね。ちょっと良いところを見せてあげるよ」

「例えば?」


 伊集院はノートを取り出し、そこに上から下へ文芸部員の名前を書く。

 最後の部員の名前を書き終えると私に見せて来た。


「何だこれは?」

「この部室に入って来る部員の順番だよ」


 本当に下らないんだが。


「まあ。見てなよ。後十秒くらいで一人目が入って来るからさ」

「そうか」


 伊集院の言う通りその十秒後、文芸部の部室にその人物が入って来た。

天才少年編終わりです。

凡人には天才書くのが難しいですね。皆さんはどうやって天才キャラ書いてるんでしょうね?

学園ものっぽくないなと思うけど、このジャンルが一番近いんだからしょうがないです。

次回は学園ものっぽいです。たぶん。

次回は『嘘破り少女・中山晴恋』です。

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