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Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
天才少年・伊集院風麿
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第11話

 私は金石から渡されたリストを見ている。


「よく考えたら名前のリストだけもらっても仕方ないな」


 私はリストにある名前に目を止めた。


「シオン=オルコール?」


 外国人か?


「私、その娘知ってるよ」


 月見の話では月見のクラスに転入してきた海外育ちの転校生らしい。


「よし。その娘をスカウトしよう」


 というよりもリストにある名前でクラスがわかる奴がほとんどいなかった。

 その時、持ってたリストを何者かに取られた。

 そいつは私の前でリストを見てなるほどと笑みを浮かべて言う。


「僕のクラスの人もいるね」


 月見は私の耳に口を近づけて小声で言う。


「この人誰? さっき、情報屋の傍にいた人だよね?」


 そいつは三日前、私に絡んで来た奴だった。面倒だったからさっきは無視していたが。


「良かったら僕も手伝うよ」

「ノーサンキュー」


 面倒そうだったので私は月見の手を取り、走り出した。

 しかし、そいつは私達と並んで走る。


「何だよあんた?!」

「僕かい? 僕は伊集院風磨だよ。高田さん」

「知るか! なんで私の名前知ってんだ?!」


 走っていると階段に差し掛かり、この前喧嘩した三人の男に出くわした。


「姉御! こんにちは!」

「邪魔だ! どけ!」


 私と月見は三人の脇を通り抜け階段を上った。


「おい! お前、姉御に何か用か?」


 言いながら大男は伊集院の肩を掴んだ。そう思っていた。

 大男の手はギリギリで伊集院の肩を触れなかった。大男も掴んだと思ったのか何が起こったかわからない顔をしている。

 避けてないよな?


「そこの下級生! 待てや!」


 三人組が私達と伊集院に追走してくる。

 再び伊集院は私の隣りに並び言う。


「高田さん。僕に提案があるんだ。僕は今はどの部活にも入ってないんだけどさ。どうかな?」

「あんた。それ、俺今彼女いないんだけど? みたいなナンパに似てるぞ?」

「てめぇ! 何姉御を誑かしてんだ!」


 追走してくる三人組が微妙にうるさい。

 そういえば伊集院風磨とかいう名前がリストにあった気がするな。


「そろそろ例の外国人に出くわすよ。そして君の友達が後ろから追いかけて来る。学年主任に見つかる」


 は? 何言ってんだコイツは?


「月見じゃないですか」


 突然、月見の方から流暢だが外国人特有の引っかかりのある発音の日本語が聞こえた。

 私は月見の方を向くと月見の隣りを並んで走る外国人の女子がいた。

 褐色肌で茶色の瞳、少しウェーブのかかった黒髪の女子。同い年とは思えん発育具合だ。

 月見はシオンに言う。


「シオンなんでここにいるの?」

「部活見学してました」

「じゃあ私の部活に入らない? 文芸部なんだけど」

「文芸部? 面白そうですね」


 月見はシオンとの交渉に成功しそうだ。


「私も入る!」


 私は後ろの方から聞こえた大きな声にびっくりする。

 私、月見、伊集院、シオン、三人組が一斉に後ろに振り向く。

 そこには私達の集団を引き離されながらも追走してくる璃子の姿があった。


「私も文芸部に入るよ! 鏡華ちゃん!」


 璃子。いつからいたんだ?

 璃子は疲れてきたのかだんだんペースが落ちてくる。言っては難だがたぶん璃子以外は本気で走ってない。

 そろそろ階段に差し掛かる。


「なんで走ってるの?!」


 璃子は荒い息を上げて叫ぶ。

 私は月見に言う。


「なんで走ってるんだっけ?」

「鏡華がそこの男子から逃げてたからでしょ?」


 月見は伊集院を指差して言う。


「そうだったな……というわけだ。伊集院君は無理して文芸部に入らなくていいぞ」

「僕が何の部活に入ろうと勝手でしょ?」


 伊集院が澄ました顔で言う。

 ああ言えばこう言う奴だな。


「待って……鏡華ちゃん」


 璃子が今にも泣きそうな声で言う。

 ヤバい。マジで泣きそうだ。

 私は一旦走りながら踵を返した。手を繋いで走ってた月見と逆方向に走ろうとしたため私と月見はお互い引っ張られ、お互い尻餅を着いた。


「いった~い! 鏡華何してんの?!」

「ごめん」


 気付くと目の前に三人組が迫っていた。


「おわっ!」


 金髪が私にぶつかりそうになったが、金髪は起動を無理やりずらし隣りに走っていたピアスとぶつかり、二人は転んだ。

 そしてこの一部始終を見ていた先生がいた。


「またお前らか!」


 どこからか一年の学年主任の声がした。

 かくして私と月見、伊集院、シオン、三人組はその場で廊下は走るなと指導を受けた。

 璃子は学年主任の目には歩いて見えたらしくお咎めなしだった。


****


 私は──いや、私達は今文芸部の部室にいる。

 どうしてこうなった。

 部室には最初の三人に加え、璃子、伊集院、シオン、三人組がいる。

 どうしてこうなったかというと、学年主任に指導を受けた後、私達の間で話し合って今に至る。つまり、理由はいろいろだがあの場にいた全員が部員となったわけだ。


「いっぱい部員が増えましたね~。月見ちゃん、鏡華ちゃん。流石です!」


 部長は嬉しそうだ。


「まさか、テラスも一緒に入部するなんて思いませんでした!」


 テラスってなんだ?


「テラスってなんですか? 部長」


 私の代わりに月見が質問した。

 この質問に部長に代わり大男が答える。


「俺達みんな名字の最初に寺が付くんす。俺は寺井」

「寺島っす」

「寺原だ」


 寺スか。なかなかシャレが効いてるような効いてないような微妙なセンスだ。

 さらに部長が嬉しそうに付け加える。


「三人とも、これでも得点順位が十位以内なんですよ! 頭良いんです! すごいです!」


 意外だった。正直、下位層をたむろしているただの不良かと思ってた。

 私が寺スに言う。


「何で不良になったんだ?」


 私の問いに寺スが答える。


「俺達はいわゆる私立中学受験組だったんす。見ての通り落ちて荒れたわけなんすが、偶然にも同じ境遇の奴らが他に二人いたわけっす」

「で。だったら三人で不良やろうぜ! てなったんだ」

「でも勉強に負けっ放してのも癪だし、生活態度だけ不良やってたんです」

「それで二年になって調子乗ってたら姉御にボッコにされたんす」


 つまり負けず嫌いが微妙な方向に働いたんだな。


「あんたらねえ。私に感謝しろよ? あのまま殴ってたら完全に障害事件だぞ?」

「反省してる」


 どっちにしても月見にやられてただろうなとは思うが。


「このまま簡単に自己紹介へ移りましょう!」


 部長が提案し、シオンを見た。

 シオンはその視線に気付き咳払いをして自己紹介を始める。


「私の名前はシオン=オルコールと言います。一年五組です。月見と同じです。よろしくお願いします」


 一同小さく拍手をする。

 シオンは中学生が英語を和訳したような喋り方であった。

 部長は璃子を見て促す。


「えっと……一条璃子です。一年二組に在籍してます。演劇部と兼任するのでたまにしか来れませんがよろしくお願いします」


 璃子が頭を下げて、周りは拍手をする。


「じゃあ次は──」

「僕ですね」


 伊集院が名乗り出る。

 短い人生だが、いろんな奴と会って来た私の勘が告げる。

 コイツはただ者じゃないと。


「伊集院風麿です。一年四組在籍です。好きな小説ジャンルはファンタジー。嫌いな小説ジャンルは特にありません。今注目してる小説は『天使の涙、悪魔の微笑み』。好きな食べ物はチョコレート。嫌いな食べ物はメロンです」


 私はその紹介内容に冷や汗を流す。好き嫌いが私と同じなのだ。

 私は璃子と月見を見る。璃子は特にこれといった反応はないが、月見は伊集院に対して苦々しい顔を見せている。おそらく私と同じ結論に至ったのだろう。

 そういえばコイツさっき情報屋の金石と一緒にいたな。

 つまり、私の情報がトレードされていたのである。月見と情報屋以外は私が今好きな小説ジャンル公言してないからな。そしてコイツはあの時見られた私とある人物しか知らない小説『天使の涙、悪魔の微笑み』を話題に持ち出して私に直接偶然ではないと示唆している。敢えて注目と言ってるのがミソだな。

 この陰湿なやり方……目的は復讐かなんかか? こんな奴知らないんだが。


「その『天使の涙、悪魔の微笑み』って面白いんですか?!」


 部長がその話題に食いついた。

 私も部長と同じ質問をしようと思っていた。最も、部長は興味、私は探りのためだがな。

 私は月見と目を合わせ合図をする。


「僕も読んだことないので詳しくないんですが、本屋などで売ってなかったので同人誌の類かなんかだと思います」


 半分正解ってとこだな。

 実質あの小説の存在は作者と私しか知らない。さらに読者となると私だけだ。

 しかし、伊集院のプロフィールが私のプロフィール通りかはともかく、今のところコイツは嘘を一つも言ってない。正確には確かめようがないだが。


「作者の正体はわかるんですけどね」

「は?」


 しまった。つい口に出してしまった。

 伊集院は私を見る。


「高田さんは作者の正体知ってるの?」 

「確かにその作品は知ってるけど作者の正体に興味はないな」

「ふ~ん」


 伊集院に質問され咄嗟に答えたが、嘘は言ってないのでイーブンだろ。


「滝沢さんは『天使の涙、悪魔の微笑み』を知ってるかい?」


 伊集院は月見に質問をした。


「私も作品名は知ってるかな」


 伊集院が目を細める。まるで何かを確信したように。

 部長が時計を見て言う。


「もうこんな時間! 今日はもう解散です」


 部員はそれぞれ帰り支度を始めた。

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