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第18話 【鼓動】


 蒼い、蒼い闇。


 どこまでも続く、果てのない闇の迷宮ラビリンス


 走っても、走っても、辿り着かない迷路……。


 私は懸命に走っていた。

 息が上がり、心臓がもう限界だと悲鳴を上げても、ただひたすら走っていた。


 振り帰れば、立ち止まれば、その闇に飲み込まれてもう二度とは逃げ出せない。

 まるでそう、黄泉平坂よもつひらさかを逃げまどう伊邪那岐命いざなぎのみことのように――。


 追っているのは誰?


 追われているのはなぜ?




「藍、おいで」


 懐かしい声に振り返る。


「先生!」


 柏木浩介。大好きな大好きな、優しい、お父さんのような人。


「さあ、迎えに来たよ。一緒にに帰ろう」


 懐かしい、優しい笑顔が私を呼んでいる。


「お前が必要になったんだ」


 ――えっ?


「藍。おまえが必要なんだ」


 行けない。先生、私、行けない。


 声が出ない。


「お前は、その為に、生まれて来たのだから」


 大切な人がいるの!


 叫んでいるのに。


「お前が来なければ、『彼女』は、死んでしまう」


 嫌!


 叫んでいるのに。


「シンデシマウ」




「いやあぁっ!!」 


「藍!?」


 ここは、何処? 


「藍!」 


 あなたは、誰? 


「大丈夫か?」


 心配そうな瞳が覗き込む。


「あ…芝崎さ……。ごめ…大…丈夫。怖い夢を見て……」 


 涙が溢れ出す。


「藍?」


 身体の震えが、止まらない。


「うっあっ……っ……」


 後から、後から溢れ出す涙が止まらない。


 


 優しい腕が、ふわりと私を包み込む。 


「大丈夫。大丈夫だ」


 まるで、呪文のように繰り返す言葉。


「何も、怖いことなんかない」


 ギュッと抱きしめてくれる、暖かい胸から聞こえる、心臓の鼓動。


「大丈夫」


 怖いのは、連れ戻される事じゃない。


 死ぬ事でもない。 


 本当に怖いのは 


 あなたに知られること。


 


 私が何なのか、芝崎さん。ななたに知られることが一番怖い……。





 

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