愛用品
シップ薬をよく使う。主に腰、喉に貼る。喉の方が頻度が高いかもしれない。
帰宅してシャワーを浴びる前、下着と一緒にシップを準備する。シャワーを浴び、下着を身に着け、シップを貼る。冬は風邪をひきやすい。症状が喉にくるのでシップを貼るわけだ。
朝起きて着替えをする。シップを剥がす。テーブルの上に置かれた使用済みのシップ、それは何だか悲しい物体だ。一日仕事をして、更衣室で剥がし忘れた腰のシップに気づいた時の、何と憎らしい事か!下着がほんのりシップ臭い。「こいつ貼ってるな」同僚に思われた可能性が高い。やはり朝、出勤前に剥がすのを忘れてはならない。
「ポイント貯まってますね、使いますか」ドラッグストアのレジでよく聞かれる。しょっちゅうシップを買っているとポイントがあっという間に貯まってしまう。安価なもの、しかし最安値ではないもの、がお気に入りだ。最安値のものは臭いがキツい。粘着力もイマイチなのだった。
もうすぐ無くなってしまう、少ない残りに気づいた時の焦燥感といったらない。それが繁忙期と重なるとさらなる焦燥を生む。慌てて新しいシップを買ってきたと思ったら、実はまだもう一袋あった、そんなことがままある。どうせ使うのだから在庫はいくらあっても良いのだが。
ある繁忙期の一日。
ようやく訪れた休みに、溜まった家事を一気にやろうとしていた。まずは洗濯。洗濯機を回した後、慌てて着替え、今まで着ていた下着を洗濯機に放り込んだ。その間に食器を洗い、部屋の掃除をし、灯油を買って来る。
お次は買い物にコインランドリー。洗ったものを洗濯バックに入れようとしたら、一番上に異様な物体を発見した。水をたっぷり含んだシップである。やってしまった!シップを洗濯したことがあるだろうか。クラゲみたいにブヨブヨになり、クルンと丸くなる。あれだけ水で洗われても未だ少しシップ臭がする。洗い物全体に臭いがついた可能性すらある。まあいい。この場合、私は不問に付す。
ショッピングモールで買い物をする前に敷地内にあるコインランドリーへ。持ってきた洗い物を乾燥機に放り入れる。中にはナイロン製のもの、ジーンズなどがある。ナイロンは乾燥に耐えられるだろうか。以前、乾燥機の前で終わるのを待っていると、カツーン!カツーン!と音が鳴り響いた。ジーンズの金属部が金属製の槽と衝突を繰り返している。一定の条件が揃うとこの現象が起こるらしい。ランドリー内にいたご婦人が辺りを見回す。音はだんだん高くなっていくように思われた。「異物を乾燥機に入れないでください!」注意書きがイヤでも目に付く。私は20分ほど一人脂汗を掻く羽目になったわけだ。まったく、乾燥中は買い物をしているに限る。それでなくても連日の残業で気が急いているのだから。
買い物をして、乾燥の終わった洗い物をバッグに放り込んで、アパートに向かった。就寝まで12時間を切ってしまった。
帰宅して下着を取り換え部屋着になる。バッグの中の下着はホカホカだ。バッグからTシャツを取り出すと、ヌルリと異様な感触があった。見れば襟首のところにベッタリとシップ薬が張り付いている、融合しているといってもいい。何という事だ!私は今回の洗濯で二枚のシップを洗濯してしまったのだ。一枚はさっき取り除いたが、もう一枚あったとは。それを乾燥機にかけてしまっていた。ナイロンやジーンズを心配したり、時間を気にしていたのがバカらしくなるほどの失態。
融合したシップを剥がす。ベリべリ音がした。未だ少し水分を含んでおりシップ臭も残っている。洗われても乾燥されても原型を留めているのは驚くばかりだ。よほど強靭であるらしい。Tシャツとの融合には驚いた。熱で粘着成分が溶け出したのか。他の衣類に臭いは移っていなかったが、流石にTシャツは臭う。再び洗濯機に放り込む。このまま次の休みまで放っておかれるだろう。
・・・過ぎ去った忙しき日々。ずいぶん遠い昔に感じられる。あれからまだ一月も経ってないのに。
買い物から帰ってきて新しいTシャツを着ようとしたら、畳まれた中から使用前のシップが出てきた。「やあ」挨拶でもするようにヒョッコリと。「忙しき日々」の混乱に乗じて紛れ込んでしまったのだろう。ヒョッコリ出てきたシップ君が戦友のように思われた。よくやった、我々は互いを称えあった。
新しいTシャツに着替える。シップ君は捨てた。長期間外気に触れていたシップは、効果が薄そうに思えたので。




