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「どうしてそこまで街を直したい。罪悪感でか?それとも直れば意気揚々と帰れるからか」
頭を抱えながら、カロンが聞いた。
それに対し、直は首を横に振る。
「直っても…帰りたくない…」
姉のいない、自分勝手な両親と冷たい義理の母親と…かつての自分の位置に居る妹の居る家。
まだ、顔も分からない、知らない人達が集まるここの方が、直にとっては余程居心地のいい場所だった。
「では、どうして…」
その言葉は直に向けてなのか、はたまた枝を渡したペルセポネへの言葉なのか。
カロンはどうしても何も…無い事を悟っていた。
枝を渡されたと言う事は、直に「願いを叶える」権利が与えられたと言う事だ。
『「預かりモノ」を渡す者になる』
『街を直す』
どちらの願いを優先するかは分からない。
が、一つの願いは…叶う。
いや。一つはもう叶っている。
直されたアーチ。
壊れているとは言え、残ったカロンの元…店。
そして…橋渡しの見返りに成長する「神の木」。
「はぁ…」
ペルセポネの微笑みが見えた気がして、カロンはため息を付いた。
「…この人の…この人に協力したいん…」
額を押さえたままのカロンに、直はおずおずと横に居る客人を、カロンの方に少し押しやった。
「そいつが…どうかしたのか?…」
視線だけを動かし、客人を見る。
「緑の…サルの人」
カロンは客人が握りしめている物を見た。
あの緑のサルだ。
直が拾って返した…。
「縁が…出来たか」
「いや、縁とかじゃなくて…」
必死に何かを弁解する直の姿は、歳よりも幼く見え迷い子として来た時を彷彿とさせた。
「何だ、何かあるのか?」
「この人の…友達がここに来る前に街、直したいねん」
無茶な事を言う。と、カロンは開いた口が塞がらなかった。
「何を無茶な事を…」
「分かってる。けどな…この人がここ来た時、綺麗やったやん…街。思い出の場所に似ててんて。友達と3人で…楽しんでたらしいねんけど」
友達…と言うのは多分、地面に絵を描いていた時に一緒に居たあの2人の事だろうと、カロンは考えた。
「楽しんだなら良いじゃないか」
「ちゃうねん。もう1人いんねん」
「…」
地面に描かれていた絵を思い出す。
カバ、キリン、サル…真ん中にゾウ…。
「綺麗な街にして…4人一緒に…渡りたいねんて…」




