表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不思議な露天商  作者: 樋口 涼
不思議な露天商

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/91

22

アーチが元の姿に戻った。


「これで…俺の船頭としての客人が新たに来るだろう…」


そして…。と…愁いを帯びた声で続けた。


「お前も…戻れる…」


まだ、直の体に代価の在処は見えない。

彼は生きている。

あのアーチを潜れば、現世に帰れるのだ。


「あちらに戻っても、そう時間は経っていまい」


1年に一度来る「月夜」が来なかったから正しくは分からないが。と前置きをしながら、ほんの数年…2,3年の事だとカロンは言う。


「そっか…」


直が気のない返事を返し、街を見回す。


「俺…ここに居ちゃダメかな…」

「何を言う」

「…戻っても…アレやし…こんな風に壊したんも…俺やし…」


街の事を気にしている風だったが、本音はそうでない事がカロンにも伝わっていた。

生きた人間がここへ留まる事は出来ない訳じゃない。

ただ、ここの物を食べてしまえばいい。

しかし、この状況でそれを差し出す者も、代価も無い直にとっては無理な話だった。


「ここの物を喰わず、長期間居ればお前は死ぬ前に消える」

「それでも…良いや」

「お前の…姉の美香は…」


それを望んでいない。そう言いかけたが、言葉を飲み込んだ。

カロンに美香の本当の気持ちは分からない。

目の前に居る直の気持ちすらも…知らない。

何が誰にとって幸せなのか、言い切れる位置に居ない事だけは、知って居た。


「…好きに…しろ」


漂う船を土で均された川辺に着け、座った。

2人の会話が終わるのを、待って居た様に客人が1人直へ駆け寄って来た。

何やらアーチを指さし、地面に何かを描いている。


「何だ?」


カロンは船上からそれを眺めた。


「あ、あぁ…なるほど…んー」


直は通じているのか理解しながらも、困った顔をした。

少し焦っている風の客人と会話をしている直の、腰辺りに何かがゆらゆらしていた。


「…おい」


カロンは会話の終了を待たずに声をかけた。


「それ…」

「あぁ。これ?なんかさっき貰った」

「誰に?」

「…多分。ペルセポネ…様…?」


驚愕したカロンが勢いよく、立ち上がった所為で船が大きく揺れ、水が客人にまで跳ねた。


「ああああ、もう!」


カロンは頭を抱えた。


「何ぃ…」


直が引き気味に体を横にずらした。

その動きに客人も習い、距離を取る。


「お前の持っているそれが…神の木だ」


カロンが直の腰に刺さっている木の枝を指さす。


「んぁ?神の…木?」

「あぁ、願いを叶える…俺のと一緒の…」


直は雑に刺していた木を手に取る。

普通の木にしては、綺麗だと確かに思っていたが…神の木とは考えても居なかった。


「じゃあ。これで…街、直せる…?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ