18
街と外の境目には、一段と大きな篝火が立って居た。
崩れた街並みを、無残にも浮かび上がらせている。
その中で、いそいそと右往左往する影達。
誰かが率先して皆に指示を与えていた。
緑のサルを持っていた元客人と直だった。
2人を中心に何かが始まっていた。
崩れたアーチ前に居る2人に近付くと、足元に四角と棒の…絵。
「何をしている?」
カロンは直に声をかけた。
「おかえりなさい、カロンさん」
「これは?」
残っていた元客人達が、瓦礫をアーチの横に積んでいく。
それを使える物使えない物に分別していく者がいた。
使えない物はアーチの外へ投げられた。
どうやら、アーチの外へ出すと風がどこかへ運び、消えるかららしい。
「お前達は一体何をしようと言うのだ」
カロンは驚きを隠せなかった。
「街を復活させしようと…しています」
「元には戻せないとは思いますが」と、直は申し訳なさそうに付け加えた。
「どうして…」
戸惑うカロンに、直は作業をしている元客人達の1人を指さした。
「彼が…彼と…多分友人の人でしょうか。3人が一生懸命瓦礫を退けていたので」
緑のサルを持っていた者を中心に、他の者達より動く3人が居た。
「無理だろう」そう、カロンは思った。
それ程、街は壊れていたし、自分はもう船から降りられない。
手伝う事も出来ないのだから…と。
元露天商の店主達も諦めて、篝火を点した先人に続き街を出て行っている。
ここに来るまでも、代価を持たない亡者達の列を見た。
元客人もカロンが船に乗せ送るというのに…。
「誰も居なくなっても…僕がします」
「お前はまだ死んでいない」
「でも、このアーチからは…僕は帰れない」
「…」
崩れたアーチを、2人は眺めた。
街の瓦礫を退かそうが、店を作り直そうが、アーチだけは…無理だ。
「川も…渡れない…」
「はい。なので、少しでも。…償いにはならないでしょうが」
「…」
カロンは直の顔を見た。
「好きにしろ…俺がとやかく言える事ではない…」
そう言って、直から離れた。
数人の元客人が並んでいる所へ船を漕ぎ、着くとすぐさま乗せた。
動き出す船に視線を向けるのは、今回も乗れなかった元客人達だけで、後は忙しなく街を闊歩している。
「好きにしたら良いさ…」
「気が済むまで何でも…」そう、カロンは呟く。
ふと、地面に何かが描かれているのが見えた。
あの、緑のサルの者達3人が座っていた場所に。
四角に棒が付いた…店だろうか。
それが立ち並ぶ下に、きりんとかばと…さる。
そして、その真ん中に象が描かれていた。
何やら文字や記号も書かれていたが、カロンが読む前に川は船を流した。




