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不思議な露天商  作者: 樋口 涼
不思議な露天商

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姉が飛び出しても追いかけない。探さない両親…。

時間が経つにつれて募る姉への心配に、直が家を飛び出して初めて、両親は2人を探しに出た。

母親は直だけを…だったが。


「後から母方の祖父母に聞いたら、警察に届け出たのは僕達が居なくなった事を知った祖父母達でした。それに学校への連絡も…」


姉の交友関係を全くと言って良い程、知らない両親。

祖父母達は愕然とした。

しかし、発見の知らせを聞いて、病室に訪れた祖父母は更に愕然とする。


「他人が亡くなっているのかと思ったそうです」


亡くなった娘に対して、何もしていなかった。

顔を拭く事や死を嘆く事もしない。


「祖父母が来た時には、父はすでに帰宅していました」


そう言うと、直は失笑する。


「笑えない話です。娘が死んだのに」


父は母方の祖父母を避けた。

自分の娘ではなく、配偶者であり…孫の父親である自分が責められる事を危惧して…。


病室に来た祖父母が、姉…美香の死に気が付いたのは、病室に来た看護師がカーテンを開けたからだった。

それまではカーテンに囲まれ、美香の遺体は独りぼっちにされていた。


「退院した僕は、姉の死で何もする気になれませんでした。ここの記憶も夢だったんだと思っていたんです。そして、三人での生活は僕には辛いモノでした。」


母親は、直だけに愛情を注ぐ大義名分が出来たとばかりに振る舞い、父親は子供の死を後悔し続ける「可哀想な俺」を演じた。

生前の姉への虐待には、無関心だった癖に。

そして父方の祖父母に姉の死が知らされると、いつしか姉の死が母親の所為にされ始めた。


「離婚の話が早急に出ました。父は娘が死んだ後だからと世間体を気にしていましたが、娘殺しの母親と縁を結んで居るのはたまったもんじゃない。との祖父母の意見に、押される様にして…」


直は話しながら、手持無沙汰なのか、またはこみ上げる感情を押さえようとしているのか、足元の瓦礫を一つ拾うと、手の中を転がし始めた。

カロンはその石が「大人の中で転がされ続ける彼」に見えた。


「そうなると次は僕の行き先です。父方の祖父母は『男である孫を、娘殺しの母親の所へ置いておけない。』と、主張しました。病院での光景を知って居る母方の祖父母も、それで納得しました。が、それを許さないのは母でした」


母親は直を渡すまいと、連れて家を出たり、刃物で脅し…無理心中を図る事もあった。


「母は…警察に行きました。その間に僕は父に連れ出され…」


取り調べを受けた母親が帰宅した時、家には書置き一つ。

そしてそれを見た彼女は…。


「母は首を吊りました…」

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