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不思議な露天商  作者: 樋口 涼
青い雫のネックレス

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誠とクロ

何度目かのデートの時に、真奈美は自分の事を話した。

親に反抗すること無く、真奈美の様に家を飛び出した事も無い誠は、真奈美の行動を心底羨ましいと感じた。


「自分にもそんな勇気があれば…」


二人は同じように親から人生を決められた同士だった。

お互いの、親への底知れぬ恐怖や服従を共感し、そこから抜け出せない事を悔やんだ。

その時、誠は真奈美に自分の話もしたが、真奈美には届かなかった。


真奈美の中にあるのはクロの事だけ。

一度、真奈美が居ないのを知りながら彼女の家を訪ねた。

クロの事を知りたかったからだ。

真奈美の両親は自分の親戚で、自身の親に媚び諂う人間達だと知っていたので、普通に家に入れた。

が、彼女の部屋には入れなかった。


部屋に居るだろうクロに、会う事はできないなと諦めて帰ろうとした時、窓が開き自分の目の前に黒猫が現れた。


「君が…クロ?」


黒猫はにゃーんと鳴いた。


「出て来れるんだね」


誠はクロを撫でた。

黒猫は仰向けになり腹を差し出す。


「警戒心が無い子なのかい?」


誠は微笑みながら撫でる。

彼も猫が好きだった。

いや、猫だけでなく全ての動物が好きだった。

両親に飼う事を反対され、断念していただけで、道で出会う野良猫達に触れたい、散歩中に振り向いてくれる犬達を撫でたい。と、ずっと思っていた。


「いい子だね。クロ。君は良い子だ」


頭を撫でられる黒猫の、青いキラキラとした瞳が眩しい。


「君のご主人も、青の似合う人だよね」


ポケットからネックレスケースを取り出す。

入っているのは青い雫型の石が付いたネックレスだった。

彼女に似合うと思って、衝動的に買ったネックレス。

初めて自分の給料を生活費以外で使った。

だけど…。

雫のネックレスが彼女の涙に見えて、渡しそびれている。


すり寄る猫の首輪にちりんとなる鈴。


「君に…あげるよ」


首輪にネックレスのチェーン部分を通し、首に絡まない様に巻く。


「君の目とお揃いで似合うよ」


誠の撫でる手に、頭を摺り寄せゴロゴロと喉を鳴らす。

誠が帰路に着こうとすると、黒猫は窓の近くに伸びている木を器用に上り、窓の隙間にスルリと入って行った。


「またね…クロ」


誠が声をかけると、それに答える様にクロは窓辺で尻尾を振った。

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