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不思議な露天商  作者: 樋口 涼
不思議な露天商

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69/91

5

「お前はもう…戻れない」


カロンは青年に告げた。

キョトンとする彼に、アーチを指さす。


「お前が…した事で、アーチは壊れた。あれはここと現世を繋ぐゲートだ」


今はもう崩れ落ち、アーチの体は成していない。

ただ、丸くなった上が一部残った柱が立って居るだけで、崩れた物体が柱の元で瓦礫の山と化している。

ゲートとも呼べぬ代物。


「そんな…」


四つん這いの姿勢のまま、愕然とアーチだった物を眺める青年の横顔を、カロンは眺めて思い出した。


「お前…直…か」


以前に迷い子としてここへ来た直。

カロンが川に落ちかけた彼を助けた代わりに、姉が川に落ち、現世へ送り返した、あの時の少年。


「…縁か…」


「預かりモノ」を持っている訳でも、送られる者でもない彼が、どうしてここへ来られたのか。

そして何故、カロンの名を知って居たのか。

不思議に思ったが…それならば話が通る。


カロンが触れてしまった事で、繋がりが出来てしまったのだ。

咄嗟の行動が、縁を結ぶ事は多々あるものの、大抵は最期にしかここへは来なかった。

だから、大丈夫だとあの時思ったのに…。


「俺が…この惨事を引き起こしたのも同然…だな」


直から視線を外し、遠くを見る。

やらなければならない事は解っている。

…自分の所為で…自分が元凶ならば…。

余計…しなければならない。

必要なモノがあるだけだ。


街を立て直す事は出来ない。

それでも…ここは通り道。

新たに渡る者が、いつか訪れてしまう。


必要なモノが集まるかどうかだ。と、カロンは思う。

全てが壊れた今、絶望的だったがそれでも。


光を放つ代価。

それだけが確かに手の中にある。


「後は…」


辺りを見渡した先に、見えた自身の店。

その後ろ側に、聳える影が見えた。


見失っていた希望。


其処らに蠢く元露店主達にも、突然の事に動けず残された元客人達にもできない。

カロンだけが、出来る事。


慟哭にくれる直をその場に置いて、カロンは木の元へ急いだ。

店もボロボロだったが、裏に生えている木は小枝が折れているものの、しっかりと残り毅然と立って居た。


そして、振り返った先の…店内に見えた箱。

船頭がいつも土産にくれた獣の革が入っている。


「…あいつに助けられてばかりだな…」


手の中の袋を握りしめた。

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