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不思議な露天商  作者: 樋口 涼
不思議な露天商

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4

カロンと青年と、元店主達と乗らなかった数人の元客人は、瓦礫と半分以上が崩れたアーチが立つ、薄暗い街に取り残された。


手元がやっと見えるくらいの、暗闇に覆われた街で、何も出来ずただただ呆然と立ち尽くしていた。


あの、ランプに照らされて、輝く川も店も何もかも見る影もない。

まるっきり変わり果てた、瓦礫しかない街。


空はもう青と紫ではない。

ただの真っ暗な闇が広がっている。

アーチの向こうに、微かな紺色の空と紫の光が見える気がしたが、アーチの向こうに行く事は出来ないのをカロンは分かっていた。


それを知らない元露店主が、アーチの下を潜ろうとしたが、空の暗闇から手の様な形の何かが伸び、元露店主を叩き潰した。

残った他の者達は瓦礫の裏に潜み、震えた。


カロンはしばらくして、しゃがみ込んだ。

代価の詰まった袋を抱きしめ、船頭の船が流れて行った方を眺めた。


老いた腕が

枯れ木の様な足が

ボロボロの服が

戻らない船が

代価の光が


精神を苛む。


アーチも崩れてしまった。

「預かりモノ」はもう来ない。


渡すための露店も無くなった。

「預かりモノ」はもう無い。


そもそも、誰が預けると言うのだろう。

「預かりモノ」を失くしてしまった者に。


何かがこみ上げてくる気がした。

しかし、何も出せない事は分かっている。

カロンは…泣けない。


「預かりモノ」で育った木も、おそらく折れたか消えただろう。

あれだけ、こなしてきた筈なのに。

願いを叶えるはずの…木。

カロンの…木。


頭を抱えた。

そして、自身の髪の毛すらも消えた事を知った。

微かに残りはしているものの…今までとは変わり果てた、自分の姿。

取っていたはずの時が、止まっていた分が、一気に体へ襲い掛かった様に。


「ははは…はは…」


渇いた笑いがこみ上げて来た。


「どう…なった…?」


青年が気が付いたのだろう、上半身を起こした。

周りを不思議そうに見渡すが、自分がどんなきっかけを作ったのかは理解していない。

その為に何が起こり、どうなったのかも。


カロンは立ち上がり、彼に近付き見下ろした。

怪我も無く、若々しいままの青年を。


カロンは理解していた。

理解したくなくても、解ってしまう。

何が起こったか。

自身にも、街にも…。

そして…、カロンは解っている。

何をするべきかも。

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