命の先に
「まずはお互いに自己紹介をしましょうか」
そう言って真奈美がにこやかに話す。
その柔らかな雰囲気に、香澄も緊張が解けていった。
そして、紅茶とお菓子が半分になった頃、本題を話始める。
「それで…香澄さんは、きゃろんちゃんの子供が欲しい…と…」
「はい」
「将来の病気と避妊手術で迷う気持ちは分かるわ。後戻り出来ないものね…」
「それでも…」と真奈美は続ける。
「家族が決める事だとは思うの。それを前提に聞いてね。子犬は一匹では生まれない…複数生まれる事が基本だと言う事。子供を産ませて…次の子を繋げたとして、その子達をどうするか。色々考える事が多いと思うの」
真奈美がゆっくりと話す。
「多頭飼いになると生活費も医療費も、倍以上になるわ。家の広さ、散歩の大変さ…。無理なら引き取り手を探す…とかね」
「はい…」
「この家の子達は…捨てられた子達や、捨てられた子達が産んだ子なの」
真奈美は家の中の猫達に視線を向けた。
香澄と恵も猫達を見た。
皆綺麗な毛並みをして、しっかりとした体躯をしている様に見えたが、中には足が一本無い子や、目が片方無い子が居た。
「中には…病気を持つ子もいるの…そうなった時、面倒を見切れる?」
まっすぐに真奈美は香澄を見た。
「…正直、私の収入で面倒を見れるのは二匹までです。結婚を前提にお付き合いしている方がいますが…」
自分が見れるのが前提でしか考えていないと、香澄は言う。
「そうね。その方が良いわ」
「多産なのも分かっています…引き取り手の事も」
香澄は6匹生まれた時の想定をしていた。
五人の引き取り手を、家族や友人にも打診し「生まれたら」を考えていた。
「それなら、何を悩んでいるの?」
「…きゃろんの相手…です」
香澄はネットで相手を探してはみた。
しかし、ほぼ全ての「雄犬の飼い主」の条件が合わなかった。
「見る人見る人が…出産費用は雌犬の飼い主側が持つのが条件で…その上で生まれた子は半分貰うだとか、好きなモノを選ばせろとかで…」
「出産費用全額負担が嫌なの?」
「いいえ、それは良いんです。でも…」
香澄は「きゃろんが繁殖の為だけに利用されている」様で嫌だと思う。
きゃろんの子供が欲しいけれど、相手に「産むだけの」とされたくない。と…。
「ブリーダーから買うより安いから繁殖、なんて考えるなら止めた方が良いと言おうと思っていたのだけど…そうじゃないのね?」
「はい」
「…分かったわ。信用のある人と…って事ね」
香澄は頷いた。
「受けるかどうかは本人次第だけど。紹介してあげる」
真奈美は微笑んだ。




