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不思議な露天商  作者: 樋口 涼
薄茶色の宝物

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猫の家

「真奈美…さん?」

「うん、みーこと私を繋げてくれた人」


みーこは捨てられた猫だった。

ドロドロに汚れた状態で、みーみーと鳴いている所を真奈美が保護し、縁あって恵の家に来た。


「旦那さんと保護活動してる人で、犬の方も繋がりあるみたいだし、子供の事も相談に乗ってくれるかも」


そう、恵は言う。


「優しい人だよ」


知らない人に会う事が、少し苦手な香澄だったが、きゃろんに対する悩みの相談が出来るなら…と会う事を決めた。


「二週間後、真奈美さんの家にお邪魔できるよ」


帰宅した恵から電話でそう告げられた。

緊張はするけれど、本当にきゃろんの子供を望むなら、不安だの恐怖だの言っていられない。

香澄は大きく深呼吸をし「わかった」と答えた。


当日、きゃろんの事は心配になるので、時間がかかるかも知れないと彼氏にお留守番を頼んだ。


「いいよ、いいよ大丈夫」


彼氏の卓也は破顔し、きゃろんを抱きしめて香澄を見送った。

尻尾を振りながら卓也の顔を舐めるきゃろんに、彼氏に懐いてくれて嬉しい反面、自分と離れる事を少しでも惜しんでくれたらと思いながら、家を出た。


真奈美さん宅だと恵に連れて来られた目の前の家は、普通よりも少し大きな家で、チャイムを押す手が震える。


ピンポーン


透き通った音の後に、家人の声がインターフォンから聞こえた。

香澄がそれに応じると、中からスッキリとした紺のワンピースに、ネックレス姿の女性が出て来た。

歳を召しながらも綺麗な姿勢、凛としたまとめ髪の美しい女性に、香澄は暫し見惚れた。


「どうぞ」


優し気な笑顔で迎え入れてくれた女性。

真奈美だった。


「お邪魔します」


恵と揃ってお辞儀をする。

それに同じように返してくれる彼女の仕草に、気品の良さを感じ、誘導されるがまま香澄は歩いた。

2人は靴を脱がずに、外の庭に案内された。


「今日は天気が良いので外でお茶にしましょう」


手入れされた庭は美しく花が咲き誇り、テラスでは昼下がりの暖かな空気がテーブルや椅子を包んでいた。

微笑む彼女の後ろに見える二階の大きな窓からは、何匹もの猫がこちらの様子を伺っていた。

テラスに上がると、ガラスのドアから室内が見え、そこにも数匹猫達が居るのが分かった。


「初めてのお客様は…ここか室内の応接間でお願いしているの」


香澄の猫を追いかける視線に気が付いたのか、真奈美が声をかける。


「あ、はい」


香澄は緊張のあまり声が上ずった。


「さぁ。そちらへどうぞ」


にこやかに席を進める真奈美に、2人はおずおずと席に着いた。

それを見た真奈美は、自分も席に着く。

真奈美の青い雫型のネックレスが、太陽の光を受けてキラリと輝いた。

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