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不思議な露天商  作者: 樋口 涼
薄茶色の宝物

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58/91

運命の導き

香澄がきゃろんに出会ったのは、友人の恵とショッピングセンターに行った帰りだった。


「香澄、家の子のご飯買って行っていい?」

「いいよ」


恵がキャットフードを見ている間、展示された生体達を何気なく見ていた。

ふと、一匹の前で足が止まる。


「お待たせ、香澄…香澄?」


薄い茶色のポメラニアンの子犬が、香澄の目の前でフワフワの尻尾を振っている。


「かわ…いい…」


きゅるんとした目に、黒い鼻がちょこんと笑っている様な口の上に乗っている。

もふっとした毛が、尻尾と同じ様にフワフワと揺れていた。


「香澄?…大丈夫?」


ポメラニアンの前から動かない香澄に、キャットフードを抱えたまま声をかけるが、恵の声は届いていないのか、香澄は動かない。

2人は高校からの付き合いで、社会人になってからも買い物や、頻繁に遊びに行く仲だ。


恵の飼い猫にも優しく、泊まりに来た時は遊んでくれる。

香澄が街中で散歩している犬に会うと、チラチラと見ては撫でたそうにしているのは知って居たが、動物が好きなだけだと思っていた。


「香澄…そんなに犬好きだった…け?」


目の前の子犬に釘付けの、香澄の尋常じゃない様子にびっくりしながら、声をかける。

しかし、集中している香澄は子犬と見つめ合ったままピクリとも動かない。

ツンツンと肘を引っ張ると、香澄がやっと恵の方を向いた。


「…この子…凄い…可愛い…」


前足をガラスに付けて、子犬の方も香澄に近付きたくて仕方ないと言うかの様に、わふわふと動き回る。


「抱っこしてみますか?」


店員が声をかけ、それに香澄が頷いた。

ケースから連れ出され、香澄の前に来た子犬は店員の腕から飛び出さんばかりに、尻尾を振ってフワフワと動いている。


「小さくて…軽い…」


香澄は抱っこさせてもらった子犬に向き合う。


「…これちょっと置いて来るね」


あまりにも夢中になっている香澄をみて、「長くなりそうだな」と、キャットフードを自身の車に置きに行く事を決めた。

戻ってくると、子犬は香澄の膝の上でスヤスヤと寝息を立てていた。


「…恵…」


香澄がへにゃっとした顔を向ける。

恵には香澄の考えが手に取るように分かった。


「…犬飼うのって…結構大変だよ?」

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