運命の導き
香澄がきゃろんに出会ったのは、友人の恵とショッピングセンターに行った帰りだった。
「香澄、家の子のご飯買って行っていい?」
「いいよ」
恵がキャットフードを見ている間、展示された生体達を何気なく見ていた。
ふと、一匹の前で足が止まる。
「お待たせ、香澄…香澄?」
薄い茶色のポメラニアンの子犬が、香澄の目の前でフワフワの尻尾を振っている。
「かわ…いい…」
きゅるんとした目に、黒い鼻がちょこんと笑っている様な口の上に乗っている。
もふっとした毛が、尻尾と同じ様にフワフワと揺れていた。
「香澄?…大丈夫?」
ポメラニアンの前から動かない香澄に、キャットフードを抱えたまま声をかけるが、恵の声は届いていないのか、香澄は動かない。
2人は高校からの付き合いで、社会人になってからも買い物や、頻繁に遊びに行く仲だ。
恵の飼い猫にも優しく、泊まりに来た時は遊んでくれる。
香澄が街中で散歩している犬に会うと、チラチラと見ては撫でたそうにしているのは知って居たが、動物が好きなだけだと思っていた。
「香澄…そんなに犬好きだった…け?」
目の前の子犬に釘付けの、香澄の尋常じゃない様子にびっくりしながら、声をかける。
しかし、集中している香澄は子犬と見つめ合ったままピクリとも動かない。
ツンツンと肘を引っ張ると、香澄がやっと恵の方を向いた。
「…この子…凄い…可愛い…」
前足をガラスに付けて、子犬の方も香澄に近付きたくて仕方ないと言うかの様に、わふわふと動き回る。
「抱っこしてみますか?」
店員が声をかけ、それに香澄が頷いた。
ケースから連れ出され、香澄の前に来た子犬は店員の腕から飛び出さんばかりに、尻尾を振ってフワフワと動いている。
「小さくて…軽い…」
香澄は抱っこさせてもらった子犬に向き合う。
「…これちょっと置いて来るね」
あまりにも夢中になっている香澄をみて、「長くなりそうだな」と、キャットフードを自身の車に置きに行く事を決めた。
戻ってくると、子犬は香澄の膝の上でスヤスヤと寝息を立てていた。
「…恵…」
香澄がへにゃっとした顔を向ける。
恵には香澄の考えが手に取るように分かった。
「…犬飼うのって…結構大変だよ?」




