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不思議な露天商  作者: 樋口 涼
カロンの息抜き

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53/91

夜が見せる夢

姉と弟は川を覗き込んでいた。

船頭の船も無く、青と紫の空が映し出され、ランプの瞬く光を静かに受けている川。

丁度、2人の前には夜の色が広がっていた。


時折、後ろを通る客人達に弟の直はビクつくが、姉の美香は川に何か泳いでないか探すのに必死だった。


「あまり身を乗り出すな」


カロンが声をかけた。


「なぁ、ここってなんもいーひんの?」

「居ない」

「なんや、おもんな」

「…その代わり…水面をよく見てみろ」


カロンは指さした。

それに応じる様に2人がじっと水面を見る。


「あ!お母さん!!」


叫び前のめりになる直を美香が掴み止める。


「危ないって。身乗り出すなって言われたやろ」

「お姉ちゃん!お母さんが!」

「聞いてへんな…」


呆れながらも直の指差す方を見る。

2人の母親が映っていた。

その隣には父親も。

両親は必死の形相で、何かを叫びながら走っている様だった。


「なんで、見れんの?」

「…夜の色をした川は『見たいモノ』が視れる」

「見たいもの?」

「あぁ。『見たいモノ』だ」


美香はそれを聞いて「直は両親の様子が見たかったのだ」と思った。

知らない所に居る自分達。

川の中に映る両親の口の動きを、いつもの様に無意識に読んだ。


「お姉ちゃん…帰ろう」

「…」

「お母さん達探してるよ?」

「…探してんのは…あんたの事だけやで」


母親の口は「なお」としか叫んでいなかった。


「お父さんが…」

「お父さんはあんたの事も、私の事も呼んでる!けど!」


父親が姉の名を、母親が自分の名を呼んでいるのだと言いかける直の言葉を遮って、美香は叫んだ。


「お母さんは…私の名前…呼んでない…」


父親の口は「みか、なお」と動いても、母親のは「なお」としか動かない。

美香の目に涙が溢れだした。


「いつも…いつもそうやん…お母さんは…あんただけ…」

「お姉ちゃん…」


直が姉を慰めようと手を伸ばしたが、それを美香は叩いて拒否した。


「触らんといて!あんたに何が分かるん!?」


そう叫んだ目が、見開いた。

叩いた反動で、直が川の方へ態勢を崩し落ちかけていた。


「危ない!!」


美香が手を出した。


「だから…身を乗り出すなと…」


カロンが咄嗟に直を掴んでいた。

弟は水面に落ちず、タイルの道にへたり込んだ。


「…え?」

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