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不思議な露天商  作者: 樋口 涼
カロンの息抜き

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街の外

カロンはゆっくりと街を歩き、アーチの下まで来た。

足元には影があった残滓すら残っていない。

タイルの隙間に少しでもあれば、新しい事が分かったかも知れないのに。と、カロンは残念に思う。


色々な色の宝石が散りばめられた、黄金に輝くアーチ。

カロンはこの下を通って、外へ出た事が一度も無かった。


「この機会に一度くらいは出ても良いかも知れない」


そう思いつつ、アーチの下から街の外を眺める。

外に向かうに連れて、空は夜の色だ。

紫色の…美しい色。


反対に川を流れると、暗闇が訪れる…。

街でその二つの空が、丁度交じり合っている。

どちらもカロンにとっては壮麗で、尊い存在だ。


その二つ以外の色の空は、ここには無い。

月夜の空でさえ、夜側に月が上り薄っすらとした光が夜を照らす。

…青と紫の空に、月光で周りが少し白み掛かるだけ…。


そして今は…月夜の日ではない。


足元のタイルの道は、街の外には続いていない。

アーチから少し先に行くと、砂地に変わる。

おそらく外には何も居ないだろう。


露天商の店主も客人も、影さえも居ない。

ただひたすら続く砂の道。

誰も…通らない。


植物が生えている事もまずないだろう。

命があるモノは…存在しない。


「空虚だな…」


アーチの下で寄りかかりながら、カロンは遠くを見た。

街には吹いていない風が、砂を巻き上げている。

乾燥して居る為か、その場に立てば優にカロンを覆いつくす量の砂が動いていた。


赤茶色の砂と黄土色の砂が、縞を描いては動き、また新たな縞を描く。

それを眺めていると、時間だけが過ぎていく。


街の外は夜が砂と風のダンスを見守り。

街の中はランプと声に照らされている。


「…ある意味良い気分転換だな」


ぼうっと、アーチにもたれたまま外を眺め、飽きれば内を眺め…を繰り返した。

ずっと同じ場所に居るカロンを、誰も気にしない。

カロンが居ない店の事も、誰も見ない。


船頭はまだ戻ってなかった。

戻って来ていたら…どう言うだろう。

自分が店から出したクセに「用が済んだら店に戻れ」と言うだろうか。

それとも…他愛のない話でも、続けるのだろうか…。


思いを巡らせながら…。

カロンは一歩も街の外へは出なかった。

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