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不思議な露天商  作者: 樋口 涼
カロンの息抜き

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変化の無い時間

カロンは店の前で足を止め、二つのカップを台に置いた。


「まだ客は来ないだろう…」


来た時に戻ればいい。と、そう思った。

カップは台の端に寄せておき、中に戻った時に片付ければ良いと。


「どうせ、アーチの下さえ見ておけば、来た事が分かる」


無垢な魂と街を歩きはしたが、彼女の探しモノの為だったので、息抜きにもなって居なかった。

探しモノも…結局は彼女自身が持っていたしな。と、カロンはあの時消えた代価を惜しんだ。


「まだ、足りない」


店の台の上にあるガラス管は満タンには程遠く…代価は一個しか入っていない。

その明りが、微かに二つの珈琲カップを照らしている。


「かと言って…」


代価を持たないカロンが街を徘徊した所で、代価は増えも減りもしない。

見たい所も無い。

木は店内からも成長は見られるし、それも無垢な魂が来た時からさほど変わり映えはしていない。


カロンはゆっくりとタイルの道を歩いた。

代わり映えのしない、露天商が並んだ街。


ランプや蝋燭に明るく照らされた川や、代わり映えのしない青と紫の空。


「変わられても…困るが…な…」


月夜の日は、皆が外出して居なくなる。

それ以外で空が変化した所は見た事が無い。


「暗闇と夜の混じる…」


今の川には船頭が居ない。

水面も揺れ一つない。

なので、どちらが空でどちらが川か分からなくなるくらいに、クッキリと鏡の様に映し出されている。


「水に落ちていたとしたら…終わりだな」


カロンは少し笑う。

先程の影も、残っていたはずの僅かな存在さえ、消え失せたのだろう。


「全部、無くなれ…か」


本当は何がなくなって欲しかったのだろう…。

カロンは考えてみたが、分からない。


ため息を付く、歩いたこの時間も、息抜きにもならない…無駄な時間だった気さえし始める。


「店内に居た方が良かったか…」


いつもの長椅子で、眠りはしないが目を瞑って遠い景色を見ている方が有意義だった気が、なんとなくするが、カロンにとってはどちらも大差なかった。

街には目新しい刺激も無いし、店内では眠れもしない。


いつもの空の下。

いつもの露天商の店主達。

いつもの客人。


何の変りも無い。

水かさが少しだけ…ほんの少しだけ増えた。


ただそれだけ。

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