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不思議な露天商  作者: 樋口 涼
白い蝶

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探していたモノ

カロンの…目の前に居る彼女は、病室に居た頃から成長した体をしていた。

全体的に細いが、ベッドの上に居た頃より背は伸びている。


「お前の母は…強い人だったのだな」


母親と似たヘーゼルの目が、笑う。


「えぇ、だから長く苦しんだの…だから…」

「お前の代価はすり減りもしていない」

「…本当に?」

「あぁ、何もできなかったとお前は思うだろうが…」


彼女を薄く包む光の正体を、カロンは分かった気がした。


「お前の存在が母親の救いだったのだ」

「そ…それなら…良いけど…」


困ったように彼女が微笑んだ。

救いは死んでしまった。

病院で子を看る事から解放はされたが、母親の行く末がアリスの心配になる。


「どうか…お母さんには良い道を、進んで欲しいわ…」

「…やはり、…お前は客だったのだな」

「え?」


カロンは頬から手を離し、すっと露店の間を歩いた。

彼女はそれに付いて行く。


「待って、どうしたの?」


露天商の並ぶ明るい街並みが、目の前に再び戻ってきた。

ランプの光を浴びてキラキラと光る川の上には、船頭が船をタイルの道の横に着けていた。


「アリス様。お探しのモノが見つかりました」


カロンが軽く会釈し手を差し出した。


「本当に?」


そう言って彼女は露天商の店主の手を取る。

そのまま、船へ誘導されゆっくりと乗った。

カロンと彼女の手が離れる際に、何かがカロンの手の中に残った。


「あぁ…必ず…渡そう」


カロンの手の中のモノを見て、彼女は納得したように微笑んだ。

そして、船に座る。


その動作を確認したかの様なタイミングで、船は水面を揺らしながら流れた。

露店に並ぶランプが揺れる水面を照らし、金の髪が光を反射するのと同様に、波形を描きながら進む。

美しく水面が煌めくのを静かな沈黙で見守り、露天商の店主達が彼女へ手を振る。


彼女の白いワンピースが揺らめくのが遠のき、船が見えなくなった頃、露天商が並ぶ街にぎやかさが戻った。


カロンは手に残った預かりモノを優しく手で囲み、自分の店に戻ると縦に隙間の空いたガラスの籠の中に入れる。

ガラスの周りを白い布で拭くと、中に居るモノの纏う空気が更に澄んだように思えた。


「さぁ…もうすぐ来るだろう…」

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