川辺のひと時
「これはどうだ?」
カロンの言葉に少女は首を横に振る。
「これは?なかなかに良いと思うが」
どこが何で、何がどこか、分からない物を手に乗せて、カロンは少女へ見せた。
「何よこれ。何だか分からないわ」
眉間に皺を寄せ、困ったようにそれを見る。
大方の露店を回ったが、万事こうだった。
自身の店に来る前に回っていたのだから、まあ…そうだろうと思う。
「ここって…疲れないのね」
立ち止まり、露店の街並みを見渡しながら、少女は言った。
「こんなに歩いても疲れないなんて…」
悲しみを含んだ声が、客人達の喧騒すら突き抜けて、カロンに響く。
店から出て、彼女を見て初めて気が付いた。
足の細さ。
歩いてこなかった人間の、筋肉の無い、骨が浮かび上がった足。
ワンピース型のパジャマの、ラインの内側に浮かぶ体も、か細く発達していない。
鎖骨もクッキリと見えた。
「でも…頭がこんがらがって来たわ。ちょっと休憩しましょ」
眩しいランプの光で、眩暈もしそうだと笑う。
しかし、カフェや飲食の店などはない。
椅子やソファなどタイル張りの道には、置かれていなかった。
来て。と少女は客人達が居ない露店の隙間、その前にある川の淵に手招きする。
「ちょっと汚れるかも知れないけど…こんなに綺麗なタイルだもの、大丈夫よね」
そう言って、川に足を投げ出し、タイルの道に座った。
額を掻きながら、カロンもその横へ胡坐をかいて座る。
船頭が居たら、大いに笑っただろう。
「ここは…綺麗ね」
少女はつま先を川に…水に触れさせた。
波紋が広がり、光を反射させ…キラキラと足を照らす。
「私、ずっとね。こんな所に来たかった。痛みもないし…苦しくも無い。でも…変ね。さっきまでは楽しかったのに、今…なんだか、悲しい」
カロンは黙る。
「私…病気だったの。…分かるよね…こんな体だもの」
少女は裾を上げる。
骨の浮き出た膝や…細い脹脛。
「本当はもっと早く来たかった。お母さんに…楽になって欲しかった」




