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不思議な露天商  作者: 樋口 涼
青い雫のネックレス

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クロと真奈美

クロと真奈美が出会ったのは、雨の日の公園だった。

真奈美は就職活動中の大学生で、実家暮らし。

一人っ子の所為か、幼い頃からアレはダメこれもダメと事ある毎に口を出してくる過干渉な両親にうんざりしていた。

今日も面接に行くのに、会社の業種や場所、帰宅時間の遅さに文句を言われ「じゃあどこの会社なら良いのよ!」と両親と言い合いになった。


面接は上手くいったと思っていた。

相手の印象も良いし、福利厚生も充実した良い会社だった。

給料も申し分なく、綺麗な社宅も完備している。

独り立ちするには好条件だった。


駅から家へ向かう道に、小さな公園があった。

いつもは家族連れや子供でいっぱいで、うるさくて嫌いだった。

けれどその日、雨だから人は居なかった。


傘に当たる雨の音に紛れて、小さな鳴き声が耳に入ってきた。

真奈美はその時、何気なしに公園へ入り声の主を探した。

本当に無意識的に気が向いたとしか言えない、その行動は本人さえも意図していない行動で、普段の真奈美ならそのまま家に帰っていたはずなのに、この時だけは体が勝手に動いた様な感じだった。


「本当に…運命ってあるのね」


ボロボロに汚れた黒猫を見つけ、クロと名付け保護した後、彼女は何度もその言葉を言った。

好条件だった会社の内定を、親が勝手に辞退し、無職で家を飛び出した先でもクロと一緒に過ごした。


小さかったクロのぽあぽあしていた毛が美しく艶のある黒い毛になり、体もしっかりとしてきた。


「あぁ、あんな小さかったのに」


撫でながら、休日の昼下がりを一緒に添い寝するのが、真奈美の唯一の幸せだった。


好条件だった会社に入れなかったが、とにかく入れる会社に入り、古く安いアパートに住んだ。

綺麗な所やオートロックのマンションは、ペット可を条件にすると自分の給料だけでは住んでいられないから、諦めた。

大家さんは優しい老婆で、古いから気にしなくても良いと快くクロを迎えてくれた。

運が良かったと思っていた。


幸せだった。

両親に居場所がばれるまでは。

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