求めたモノ
笑った和麻は一つの光の玉になり、飛んで行った。
「和麻!」
和麻の母親は追いかけようとするが、カロンが止める。
光が逝った先に、人影が一つあった。
カロンはそれが誰か知っている。
頭を深々と下げ、その人影が消えるのを待った。
そして、顔を上げた。
「和麻は…」
「あの方の元へ向かったのです」
「…こちらに来られるでしょうか…」
和麻の母親は不安げに聞く。
「代価を全て使ってしまったので…どうでしょう」
「私のをあの子に…」
母親は代価を差し出すが、カロンは首を振る。
「他人の物では…」
言いかけてふと、和麻の代価が一つ残っている事に気が付いた。
自分が街へ帰る為に受け取っていた、帰りの代価。
「…では、交換いたしましょう」
カロンは母親の代価を受け取った。
そして母親は和麻の代価を受け取り、願う。
「あの子に公平な裁きがあります様に…」
出来るならば、また、ここへ…と。
蓮の葉と砂利道を繋ぐ橋が、その思いに応えるかの様に輝き、和麻の代価は光の玉が飛んだ方向へ去って行った。
それを見送ると、カロンは来た道を戻って行った。
「おい!待てよ!俺はどうする!彼女は!?俺のを届けるんじゃ無いのか!?」
男がカロンの後ろを走って来た。
「おい!無視するな!こんな所に置いて行くな!」
顔は青白く、冷や汗をかいていた。
「まって…待ってくれ!」
男の目には、そこは薄暗く、尖った岩で覆い尽くされた場所に見えていた。
時折、何か奇妙な音が聞こえるのが恐怖と不安を掻き立て、歩いた時に岩で擦った腕や足が痛んだ。
カロンは黙って船頭の船に乗った。
「置いて行くな!!」
必死に男は縋り付くが、船はゆっくりと動き出す。
「待って…!」
船は男を拒否するかの様に、男の手を滑らせた。
ゆっくりと流れ出す船の、ランタンが消えると、川の中に何かが蠢き、男の体を覆った。
「待って…助け…」
ちゃぽんっ。
水の音が響き、その後、川は水面を乱す事も無く、船を流した。
船が街へ着いた時、露天商の台の上の男の「想い」は無くなっていた。
「大方、川にでも溶けたんだろう…」
船頭がニヤリと笑う。
「疲れた…」
カロンは母親から受け取った代価を、船頭に渡すと店へ戻って行った。
「せっかく二つあったのに…」
台の上のガラス管を指先で撫でた。
船頭は船賃の報酬として得られるが、預かりモノの橋渡しでは、代価は得られない。
カロンは大きくため息をついた。




