心の在り方
「理想の彼女を手に入れた」そう思っていたのに…。と、男は目の前の露店主を睨みつけた。
しかし、手は出せない。
目の前に居る…相手は顔が見えず、性別こそ分からないが自分よりも背が高く、顔や体形を隠すあの布の下は…男だろう。と見当をつける。
自分がこんな所に来た、理由は分からない。
それでも、彼女に渡さないと…俺を大事で大好きな彼女に答える為に。
アニメの彼女の絵が、動きが脳裏に過る。
仕方ない…。
「代価を払えば良いんだろ」
男はポケットにあった小さな代価を一つ差し出した。
「それをいただいても無理です」
店主は毅然とした態度で断った。
「あなたと話をしても無駄だと思います…なので、私は和麻さんの方を…」
「俺のは拒否して!ジジイのを受けるのか!!」
男は叫んだ。
カロンは少し何かを考える様に、男を眺めた。
「では、一緒に行きますか?」
「は?」
「一緒に行きましょうか。…どうせ一緒の場所ですし」
カロンが手に鈴を持ち、店の外へ出て来た。
そこで、ふっとガラス管の代価の一つが消えた。
和麻から一つ代価を受け取ると、カロンは手に持つ鈴を掲げた。
ちりんっ
一度鳴らす。
目の前の川に船頭が乗った船がスーッと音も立てず着いた。
滑るように船へ近づくカロンに、和麻と男は付いて行った。
「いいのか、カロン」
「これも…仕方ない事だ…」
船頭がちらっと後ろに視線をやる。
「…ま、そうだな」
「また…骨折り損になりそうだが…な…」
カロンは船に乗り、代価を船頭に渡す。
「さあ、あなた方も」
カロンの言葉に和麻が代価を取り出し、船頭に渡す。
男は代価を渡したくなかった。
自分には一つしかない代価を、得体の知れない奴に渡したくは…。
「ご自由に…」
「待て…」
出発しようとする三人を、男は止める。
老人の持つ代価をちらっと見る。
「他人の代価では払えませんよ」
見透かしたかのようにカロンが声を掛けた。
図星だった。
待つか…行くか…。
悩んだ男は、一緒に行く事にした。
「こんなクエスト…すぐに終わらせてやる」
そう呟いて、船頭に小さな代価を渡した。
音もなくゆっくりと船は動く、いつもなら手を振る露天商の店主達は、微動だにせず、カロンと和麻を眺め見守った。




