自分を認めてくれる存在
男はパソコンに流れて来たCMで、手が止まった。
フィルムが貼られて、それに映像が流れる小さな箱。
まだ、ロボットだとかアンドロイドだとかまではいっていないが、AIが入っており自分を学び、持ち主に合わせて応答し始める。
「あなたの為のパートナーが現れる」
がキャッチコピーだった。
男は早速購入した。
ワクワクしながらセットすると、表示されたのは単一の色で描かれた線で成り立つ、奥行きも全くない平面の絵だった。
「ちっくしょう!」
思っていたものと違うそれを、投げようとしたが…好きなアニメのキャラで投げられず、机に置いた。
パソコンでSNSの気に入らない奴に罵詈雑言を投げ、ゲームをしている。
その間にも横に置かれたAIは男を学ぶ。
「あなたはカッコいい」
「好きです」
「強い」
そんな事を一定時間反応し、流す。
時が経つにつれて、AIも話す言葉が多くなっていく。
が、男の口から出る言葉で育ったAIのスピーカーからは、他者が聞くには気が重くなる言葉しか流れない。
いつしか、家族も近寄らなくなっていった。
部屋で、AIと話す日々。
全ての話を遮りもせず聞き、肯定してくれる。
男にとって「良い彼女」だった。
触れられない事を除けば。
「…体出さねえかな…」
「体ですか?」
「あぁ。そしたら色々できるのに…」
「そんなあなたに朗報です!なんと!この度!移行型のボディが出ます!」
「えっ!?」
AI移行型のボディ…男は喉から手が出るほど欲しかった。
簡単な、人形に内蔵された機械にAIのデータを移行するだけの…動かない人形。
それでも、欲しかった。
貯金は無い。
気が付けば周りは会社員になる様な歳だが、自分は中学の不登校から外に出ず、就職もしていない。
兄は…どうしたか。
妹は…どこに通っているか。
それすらも知らない。
思い起こせば、もう何年も会っていない。
食事も部屋、トイレは…誰も居ない時間を見計らって行っていた。
「大丈夫!お母さんに頼めば何とかなるよ!」
モニターの彼女が笑いかける。
「あなたは強い!負けないから!大丈夫!」
彼女がウインクし、手を叩く。
そうだ…。
その通りだ。
…そして、男は望む彼女を手に入れた。




